若い警察官のひとりごと
言っちゃあなんだが、この平和な港町に警察なんて必要ないんじゃないかと思う。
だけど、ここで成績をあげたら中央州の軍部に推薦される可能性があるっていうから、とりあえず応募してみたんだ。
地元の警察は、普段は万引きの逮捕や不良たちの喧嘩を取り押さえたりしてるから、似たようなもんかなと思ってたけどな。
なんだって?野犬?誘拐?
本当にこの東地区にそんな事件があるのか?
確かに新聞には載ってるけどな。眉唾ものだってうちの母親は言ってたぜ。
だいたい、旅行者がいなくなるっていう噂は誰が言い出したんだ。外国からは滅多に旅行者なんてこないし、国内を旅行する分には自由じゃないか。
そもそも誰が旅行者で誰が地元のやつかなんて、一目でそんなにはわからないと思う…ああ、少し前に西部から来たっていう銀髪の男前か?そうだな、ああいう特徴があるやつなら、いなくなってもすぐわかるかも知れない…
いやいや、あれは女を拐かす方じゃないか?現にほら、宿屋の娘も骨抜きにされてる。
しかし野犬にもしも遭遇して、逆にやられたらどうすればいいのかね。国は責任取ってくれるのかねえ。
ああ、早いところ手柄を立てて中央州の軍部に行きたいよ。
ん?そういえば母親がいってたけど、中央州って25年位前にできたばかりなのに、それまで国に無かった軍をいきなり作ったんだろ?
一体、だれと戦うつもりなのかね?俺?俺は戦わないよ。警察って、こういうほとんどいざこざがない地域を見回るだけだろう?
違うのか?
まあ軍が何してるかも、よくわかんねえけどな。
近所の幼なじみも何人か、おととし中央軍部に取立てられたけどなあ。一度も帰ってきてないんだよ。仕送りだけでさ。余程忙しいらしいけど、きちんと給料が入ってるならいいんじゃないのか。
他にも、学者とか学生とかかき集めてるらしいけどね。
一体なにをしようとしてるんだろうな。お偉いさんの考えることはわかんねえな。
てっとりばやく州の人口でも増やしたいのかね。それこそ誘拐されたっていうやつらは、実は中央州のどこかにいたりしてな!