何度でもバカを見ろ
善人は善人でいることが困難だ。
悪人の方がずっと楽なのに。
タイトル:何度でもバカを見ろ
少年は親を殺された。
好きでも嫌いでもなかったが親が死んだんだ。
多分悲しかったし、おそらく犯人が許せなかった。
無事犯人は捕まった。
状況証拠は揃っているし、犯人であることは確定しているが、犯人には殺した事を悪びれる様子はなかった。
その国の犯罪審判方法として、少年は犯人にどんな罰でも与えられた。
具体的には被害者が火傷をしていれば犯人を火炙りにでき、暴行を受けたならサンドバッグにできる。
目には目を歯には歯をの制度だった。
だから少年は犯人を殺すこともできた。
「ああ、なんて惨めなんだろう」
恨む事が負の連鎖を起こす事を知っていた少年は犯人を死へ追い込む事なんてできなかった。
何故ならば、犯人もまた妻と二人の子を持つ父親だったのだから。
ならば子供も妻も殺せばいい。そうすれば誰も恨まれず事を解決できる、そう考えたが、殺されたのは少年の父だけだった、兄弟は生きている。だから犯人以外殺せない。
仕方ない…恨みっていう枷を受けたくない少年は犯人に罰を与えられなかった。
しかし、どう転んでも渦中ならぬ火中の栗は弾け飛び被害を起こす。メディアは少年を親の恩知らずとして叩き、世間は犯人よりも少年を強く罰した。
眠れない夜が続く。
割られた窓から伸びてくる手はかつて父を殺し少年を破滅に追いやったあの犯人のものだった。
「馬鹿な奴め、俺を殺しておけばいいものを」
美味しいものは悪魔の味って言うだろう?
善人はみんな悪魔のご馳走になるのさ。