表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第二部 少女はダークエルフと商売を始める!
67/165

少女とダークエルフはボスに挑む

 低位魔物であるスライムをオーバーキル気味に倒しつつ、一行は大迷宮を進んでいた。


「あんなにたくさんの冒険者が大迷宮に入っていったのに、ぜんぜん会わなかったね」

「それだけ大迷宮が広いんだよ」

「そっか」


 半透明のスライムが飛び出してくる。すぐさまプロクスが爪先で引っ掻いて一撃与え、フランベルジュが上から突き刺す。液体状になったスライムから、エルは増粘剤を採取した。

 イングリットは迷いのない足取りで進む。突き当たった先に、扉があった。


「ここが、第一層の親玉がいる部屋だ」

「親玉って?」

「第一層にでるどんな魔物よりも強力な存在だ」

「へー、そうなんだ」

「ここでは、巨大スライムが出る。図体がでかくて驚くかもしれないが、動きはそこまで速くない。危ないと思ったら、この場所に戻ればいい。深追いすることはないから」

「親切設計なんだね」

「第一層はな。どの層も、親玉を倒さないと下の層に進めない。これが、大迷宮攻略の難しいところだ」

「無理はしないようにしよう」

『命は大事に、ってわけだね』


 ヨヨの言葉に、イングリットは深々と頷いた。


「準備はいいか?」

「うん」

『ぎゃう!(問題なし!)』

『いつでも行ける』

『いーよ』

「やっぱり、息合わないな」


 イングリットは苦笑しつつ、扉を開いた。

 内部は天井が高く、大迷宮のエントランスよりも広い。

 今まで洞窟みたいな場所にいたが、親玉と戦う場所は大理石でできており一面真っ白だった。

 第一層の親玉は、巨大スライム――のはずだった。


「なんだこりゃ!!」


 イングリットは待ち構える親玉を見て、叫んだ。

 スライムであることに間違いはない。問題は、いつも冒険者を待ち構える巨大スライムではないということ。

 一行を待ち構えていたのは、金色のスライムだった。


「な、何、あれ? あんな色のスライム、見たことがない」

『エル、あれは、ユニーク・モンスターだ』

「ユニーク・モンスター?」

『他の魔物とは違う、特異的な存在ってこと。超超珍しい魔物だね』

「そう、なんだ」


 エルは金色のスライムと視線が交わったような気がして、自らの肩を抱く。


「イングリット、大迷宮って、魔物もダンジョンマスターが管理しているの?」

「そうだな」

「ということは、ダンジョンマスターがわたしを見て、珍しいアイテムや魔物を出しているってことになるのかも」

「ああ、そういう考えもできるな」


 エルのこれまでの人生は、とても『幸運』ではなかった。

 幸運値が高いのではなく、ダンジョンマスターが敢えてそうしている確率のほうが高いだろう。


「なあエル、ダンジョンマスターに心当たりは?」

「ない」

「だよな」

『おい、おしゃべりはそこまでだ。来るぞ!』


 金色のスライムは今までのスライムと同じ大きさだったが、明らかに目つきや威圧感が違った。

 ポンポンとその場で跳ねると、弾丸のように飛んでくる。

 目指すのは、エルだ。


 その前に、プロクスがエルの前に飛び出し、小さな翼をはためかせて飛ぶと、金色のスライムにアッパーパンチを入れた。


 ガツン!!


 硬い、金属音が鳴る。攻撃が効いているようには見えなかった。


「なんだ、あいつ。金属みたいに硬いスライムってことかよ」

「嘘みたい。動いているときは、ぷるぷるで柔らかそうなのに」


 弧を描き、飛んでいった金色のスライムであるが、地面に落ちてもダメージはゼロ。

 今度は、プロクス目がけて飛び出してくる。


 イングリットは魔法を付加した火の矢を番え、すぐに放った。

 矢は魔法陣が浮かび、やじりにボッと音を立てて火を点す。

 イングリットはただただ射ったのではない。金色のスライムの動きを想定して射った。

 見事、金色のスライムに当たったが――やはり、弾かれる。


 金色のスライムはイングリット目がけて飛び出してきたが、フランベルジュが回転しつつ飛んで衝突する。

 金色のスライムはやはり、ダメージを受けることなく、ぽんぽんと跳ねながら転がっていた。


「ま、貫通するわけないわな。竜の一撃も弾いたのだから」

「イングリット、あれが、金属製のスライムだったら火属性の攻撃じゃなくて」

「炎だな」


 金の融点ゆうてんは約1000度。普通の火魔法では、物理攻撃のように弾かれてしまう。


 すぐさま、イングリットが指示を出す。


「私が攻撃して隙を作る。その間に、エルかプロクス、フランベルジュの誰かが炎を金色のスライムにぶちこめ! ヨヨは応援よろしく!」

『あ、僕まで指示を出してくれて、ありがとうね。とりあえず、みんな、頑張れー』


 イングリットは魔法を付加エンチャントしていない矢を番い、金色のスライム目がけて射った。 

 矢は額に当たったが、すぐに弾かれる。


 体勢を崩した瞬間に、プロクスが金色のスライム目がけて炎のブレスを吐き出した。

 金色のスライムは棒状と化し、ブレスを避ける。


「クソ、致命傷になる攻撃は避けるか」


 続けてフランベルジュが必殺技を繰り出す。


『炎帝旋風剣!!』


 巻き上がった炎から、金色のスライムは素早く回避していた。

 イングリットは回避した金色のスライムに矢を射る。命中したが、貫通することはない。矢はあっけなく弾かれる。


 今度はエルが、炎の魔石を放った。

 金色のスライムは回避活動を取ったが、イングリットが矢を放ち、炎の魔石の軌道修正をした。


 炎の魔石は金色のスライムに当たり、発火する。


 ドン! という音を立て、爆ぜた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ