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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第三部 少女はダークエルフと共に、魔石工房を作る!
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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房

 ネージュはモゾモゾと動き、ジョゼット・ニコルの拘束から脱出する。そして、堂々たる態度で国王陛下の前にやってきた。


『わたくしはかつてあなたの妻だった、アルフォネですわ』

「な、なんだと、信じられるか!」

『わたくしは、あなたの大変な秘密を知っております』

「デタラメを言いよって」

『デタラメなんかではありませんわ。たとえば、あなたのその髪の毛、偽も――』

「わ、わかった!! 言うな!! お前は、アルフォネに間違いないようだ!!」

『信じていただけましたか』


 ネージュはエルの母親だった。おそらく、モーリッツと同じ精霊化したのだろう。

 彼女の場合は、魔力を移した魔石入りのぬいぐるみが依り代となったようだ。


 どこかで母の姿を求めていたエルだったが、寂しい夜も、心細い朝も、ずっと傍にいたのだ。


『アルネスティーネとエルネスティーネは、わたくしが産んだ国王陛下との子どもです。双子が不吉だという謂われを信じたくなくて、父に無理を言って外へ逃がすよう、お願いしていたのです。そうでしょう、お父様?』


 ネージュ改め、アルフォネが振り向いた先にいたフォースターは、間違いないと言って頷いた。


 そして、アルフォネはエルを見つめる。


『エルネスティーネ、ずっと記憶をなくしていましたの。母だと言えなくて、ごめんなさい』

「あなたが、わたしの、お母さん?」

『ええ、そうですわ』


 アルフォネはエルのもとへやってきて、小さなぬいぐるみの体で抱きしめる。


『ずっとずっと、わたくしは、こうしたかったのです』

「お母様……!」


 エルは座り込んで、アルフォネの体を抱きしめる。

 

『この姿のわたくしが剣をたしなんでいるのは、フーゴの魔石のおかげですわ』

「そっか。そう、だったんだ」


 エルはずっと、アルフォネとフーゴに見守られ、その身を守られていたのだ。

 自然と、涙が溢れてくる。

 会いたいと望んでいた人達に、やっと会えた。


 アルフォネはアルネスティーネにも、声をかけた。


『あなたも、こちらに。よく、顔を見せてくださいな』

「お母様……いいの?」

『もちろんですわ』


 アルネスティーネもやってきて、三人で抱き合う。

 バラバラだった家族が、今、ひとつとなる。

 奇跡の瞬間であった。


 ◇◇◇


 事態は急激に終息を見せた。

 ジェラルド・ノイマーはフォースターの指揮のもと、拘束された。

 すぐに罪状が明らかとなり、正式に罪人としての扱いを受ける。

 暗躍を続けた男だったが、あっけなく罪を認めたという。


 それに関連して、宮廷魔法使いの首席の関与も明らかとなった。

 彼女はジェラルド・ノイマーと繋がり、魔法騎士を私的に使った罪に問われている。


 ジェラルド・ノイマーは処刑が決まった。

 宮廷魔法使いの首席は、命尽きるまで魔法封じの塔で過ごすこととなったという。

 双方、重たい刑が執行された。


 ちなみに、ジョゼット・ニコルは上の命令に従っていただけで、悪事に手を染めているわけではなかった。

 後日、フォースター公爵家を訪問し、「悪かったね」と言って菓子折りを持ってきたのだという。

 これから仲良くしてくれという言葉だけは、エルとイングリットは頷くことはできなかった。


 魔法騎士に拘束されていたキャロルも、解放される。

 周囲の人達は心配していたが、本人は天井の染みを数えて暇を潰していたと笑顔で言うばかりであった。

 改めて、キャロル・レトルラインは大物だと思う、錬金術師達であった。


 王都で蔓延していた黒斑病であったが、エルが作った治療薬のおかげで終息を見せていた。

 危機から救ったエルネスティーネの名は、あっという間に国中に広がった。

 国王陛下がエルの名誉を回復させるために、あえて大々的に報道するよう命じたのだろう。


「黒斑病の魔女から、救世の聖女様って、変わり身の早さはとんでもないな」

「迷惑な話でしかない」


 エルの辛辣な言葉に、イングリットは微笑む。

 同時に、国王陛下の過去の過ちも、隠すことなく報じたようだ。


 王女は双子だった。

 その事実に、国民は驚いたという。

 国王陛下はエルの王位継承権を復活させた。アルネスティーネと同じ、第一位である。もしもふたりが国王にと望んだ場合、共同統治となるらしい。しかしそれも、すぐに返上した。

 エルは国王になるための勉強なんてしていないし、そもそも望んでいない。

 エルの望みはただひとつ。


「わたしの夢は、イングリットと一緒に森の奥地で魔石工房を開くこと」


 イングリットは自由気ままに魔技巧品を作り、プロクスはクッキーを作って工房の片隅で販売する。フランベルジュはのんびり日光浴をして、ネージュはエルの騎士として、また家族として傍に寄り添う。ヨヨはのんびりしながら、工房の面々を見守るのだ。


 それから数ヶ月後に、聖樹を使って建てたエルとイングリットの工房が完成する。

 森の奥地にあった工房だったが、毎日のように客がやってきて、エルの作る魔石やイングリットの作った魔技巧品を求めていたという。


 少女エルヨヨダークエルフイングリット、それから仲間達の工房は、いつもいつでも、明るく楽しく、幸せ溢れる場であった。 

お付き合いいただき、ありがとうございました!

番外編も更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

コミカライズも始まりますので、始まりましたらお知らせします!

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