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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第三部 少女はダークエルフと共に、魔石工房を作る!
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少女たちは、炎のスライムと戦う!

 炎のスライムは、フランベルジュを呑み込んで姿が見えるようになった。

 ただし、炎を巻き上げた危険なスライムへと進化してしまった。

 大きさは一米突メートルくらい。フランベルジュの報告よりも、小型化している。

 周囲の草花にも、炎が燃え移っていた。早めに決着をつけないと、森が大変なことになる。


『大丈夫ですわ。動きは遅いままです。冷静になって戦えば、勝てるはずです!』


 ネージュが勇ましく叫んだ瞬間、炎のスライムは素早く動き始める。


『な、なんでですの~~~!?』

『ぎゃうぎゃうぎゃううう?(フランベルジュの機動力を得てしまったのかも?)』

「おい、プロクス!! のんびり解析している場合じゃないぞ!!」


 イングリットはプロクスを抱き上げ、突っ込んでくる炎のスライムを回避した。

 ネージュが剣を振り上げ、炎のスライムに斬りかかった。

 しかし――剣に手応えはなく、炎が燃え移りそうだったので素早く引いた。


『ダメですわ! 泥を斬りつけているようで、まったくダメージを与えている気がしません!』


 アダーガ部隊が槍を突き出すが、結果はネージュと同じ。

 反撃で炎を吹きかけられたが、盾で防ぐ。


 どうすればいいのか。

 物理攻撃は、絶望的なまでに効果がない。

 試しに水の魔石を投げてみたが、回避されてしまった。キャロルのようにアイテム・スロウの能力があれば氷の魔石を投げて攻撃するのだが……。

 ここで、エルはピンとくる。


 エルは水吐フグを取り出し、水の魔石を突っ込んだ。

 そして、左右の手で思いっきり潰す。


『オロ、オロロロロロロロロ!!!!』


 水吐フグの口から、弧を描くようにして水が噴射される。

 水の魔石を呑ませることにより、勢いと距離が増すのだ。


 炎のスライムは回避したが、水吐フグの吐き出す水はそのままあとを追いかける。ついでに、燃え移った火を消火しておく。

 ついに、炎のスライムに水をかけることに成功した。が、炎の勢いは弱まらない。


「イングリット、氷の矢を! 炎のスライムに当てなくていいから、地面が濡れたところに射ってくれる?」

「お、おう。了解した」


 イングリットは炎のスライムから少し逸れた場所に、エルの作った氷の魔石がついた矢を放つ。地面に突き刺さった瞬間、濡れた場所に鋭い氷柱がいくつも突き出てきた。


 炎のスライムは串刺しになる。


『ぎゃううう?(やった?)』

『いや、まだだ!!』


 ギイが叫ぶ。息絶えたかと思っていたが、さらに体を燃やして氷柱を溶かしてしまった。

 地面に降り立った炎のスライムは、うごうごと妙な動きをする。


「あれは、変化!?」

「何!?」


 炎のスライムは、フランベルジュの姿へと転じた。


「嘘だろう……?」

「信じられない」


 完全に、フランベルジュを取り込んでしまったのだろうか。不安が募る。

 いつもフランベルジュがしているように、ヒュン、ヒュンと刃を旋回させながらゆっくり近づいていた。


 だんだんと早くなり、急接近する。最初の狙いは――エルだった。


『ぎゃーう!(させるか!)』


 成獣の姿となったプロクスが、炎のスライムに飛びかかった。

 刃を掴み、動きを止める。が、刃がぶん! と大きく動くと、プロクスの大きな体は吹き飛ばされてしまう。


 アダーガ部隊が槍を突き出したが、カン! という硬い金属音が聞こえるばかりであった。


 イングリットの放った矢は、剣で一刀両断される。

 水吐フグの口から吐き出される水は、炎のスライムの熱によって蒸発。届くことはなかった。


 剣を振り上げた状態で、炎のスライムはエルに迫る。

 イングリットが、エルに駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。


「イングリット、ダメ!!」


 イングリットはエルの言葉に何も返さず、優しく頭を撫でるばかりであった。

 胸が、ぎゅっと締めつけられる。

 このままでは、イングリットが傷ついてしまう。

 どうすればいいのか。エルは叫ぶことしかできなかった。


「フランベルジュ、起きて!!」


 エルが叫んだ瞬間、炎のスライムの動きが止まった。

 そして、剣の形をしたその身が、内側から突き破られる。


 フランベルジュが、炎のスライムの体を破って、外に出てきたのだ。


『すまぬ。待たせたな』

「フランベルジュ……!」


 フランベルジュは地面に伏す炎のスライムを自らの刃で突き刺し、炎で焼いた。


『地獄の業火で焼かれろ!!』


 一粒の灰さえも残らないくらいの、強い炎で焼いたようだ。

 炎のスライムは、絶命する。


「わたし達、勝った、の?」

「み、みたいだな」


 エルは膝の力が抜けて、その場にぺたんと座り込んでしまう。

 そんなエルを、イングリットが支えた。 

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