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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第三部 少女はダークエルフと共に、魔石工房を作る!
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少女とダークエルフは、聖樹探しにでかける

 村長が呼び寄せた洗熊妖精は、エルやイングリットが初めて見る珍しい武器を持っていた。

 盾の持ち手が槍になっていて、表面には剥き出しの刃が突き出ている。


「え、その武器何? 初めて見た!」


 エルから質問を受けた額に十字の傷跡がある洗熊妖精が、ぶっきらぼうに答えた。


『これはアダーガ』

「アダーガ。へえ、初めて聞いた」


 もう一匹の、毛並みがふわふわした洗熊妖精が、補足してくれる。


『これは、人間が作った武器兼防具っすよ! なんか、使いこなせないから、一気に廃れていったらしいっす』

「そうなんだ」


 人間界の戦場で使われていたのは、三世紀も前の話。そこそこ生産されていたようだが、「剣と槍と盾は、それぞれ使ったほうがいいな!」と誰かが言い出し、それから戦場で使われなくなったらしい。

 洗熊妖精は力持ちなので、難なく使いこなせるようだ。


 エルとイングリットの聖樹探しに付き合ってくれる洗熊妖精は、額に傷跡があるほうがギイ。毛並みがふわふわなほうがモンという名前らしい。

 皆、一通り自己紹介をしたあと、出発する。

 彼らを雇うのは、決して安くなかった。けれど、聖樹がある場所まで案内してくれるので、旨味もかなりある。何より、一行に抜けていた戦力を補ってくれるのは、ありがたい。


『一応、魔物が少ない道で案内しますが、それでも普通より多いので、気を抜かないほうがいいっすよ』

「うん、ありがとう」


 プロクスは二番目に大きな形態へと転じ、ネージュは剣を鞘から抜いた状態でいる。フランベルジュは、いつもより高い位置で飛んで、周囲を警戒してくれた。

 エルも、投石器と魔石を手に握った状態で、イングリットのあとに続いている。

 ドキドキハラハラな状態で歩いていたら、フランベルジュが叫んだ。


『敵だ! 敵が接近している! あれは――毒蝶ドゥ・ディエだ!』


 黒い羽根がふりまく鱗粉には、毒が含まれている。吸い込んだら、最悪死んでしまうらしい。

 大きさは一米突メートルほど。群れで行動するようで、五体もの毒蝶が接近しているようだ。


 フランベルジュの警告から数十秒後、その姿がエルやイングリットにも捉えられるようになる。


「あれが、毒蝶!」


 森の奥地に生息する危険な魔物として、エルは記憶していた。イングリットも、生まれ育った森で時々見かけたことがあるという。


「あいつは人や獣の血肉で、巣を作るんだよ。ああやって集団で移動して、獲物を探すんだ」


 ちなみに、噛まれたさいに出る唾液は、巨大な生き物でも麻痺するほど強力だという。警戒をしなければいけない。


「さて、どう戦うか」

「とりあえず、風の魔石で鱗粉をこっちに飛ばさないようにする」

「おう、任せた、エル」


 エルは投石器に風の魔石を番え、ぐっと引いた。魔石を掴んでいた手を放すと、弧を描いて飛んでいく。

 風の魔石は空中で展開され、毒蝶にとって向かい風となる。


「お、飛行の速さも遅くなっているな」


 エルが魔力を込めた魔石なので、五分間は風が常時展開される。それまでに、片を付けたい。


 一羽、先頭を飛んできた毒蝶を、洗熊妖精のアダーガ部隊が応じる。

 盾を突き出し、先端についた刃物で攻撃した。

 ギイとモンの、素早く繰り出された攻撃を、毒蝶はひらりと躱した。が、その先で、ネージュが待ち構える。


『油断大敵ですわ!!』


 毒蝶の首を、剣で切り落とした。そのまま絶命する。

 その後も、アダーガ部隊が毒蝶を引き寄せ、隙ができたら攻撃する、という戦術を繰り返した。

 あっという間に、五体の毒蝶を討伐した。

 久しぶりに、イングリットとエルのギルドカードが反応を示す。どうやら、報酬付きの魔物だったようだ。


「げっ、こいつらに食われた人が、十五人もいるって」

「どこかに、巣があるのかもしれないね」

「なるべく、近寄らないようにしたいな」


 血肉で作った巣というのは、かなりの大きさだろう。エルは想像しただけで、気持ち悪くなってしまった。


「ギイ、モン、ありがとうね。あなた達のおかげで、強い魔物に勝てた」

『それほどでも~』

『……』


 照れるモンに、背を向けるギイ。対照的な洗熊妖精であった。

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