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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第二部 少女はダークエルフと商売を始める!
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少女は魔石を作る!

 フォースター公爵邸に戻った一行は、執事に主の所在を尋ねる。


「旦那様は、お出かけになりました。帰宅したら、お知らせしますか?」

「うん、お願い。わたし達は、地下にいるから」

「承知いたしました」


 光の妖精達はやる気があるようで、エルの周囲を点滅しながら飛び回っていた。

 今回の件をきっかけに、エルは光の妖精と契約を結んだ。

 そのため、一気に大所帯となる。


 休む間もなく、地下の工房へ向かった。

 エルは魔法鞄から、魔鉱石を取り出す。


「みんな、今から魔石の作り方を教えるから、見ていて」


 エルの声に反応し、こくこくと頷くような動きを見せていた。

 その様子を眺めていたイングリットが、ぽつりと呟く。


「なんか、光の妖精が可愛く見えてきた」


 イングリットの言葉に照れたのか、光の妖精達はほんのりと赤くなっていった。

 言葉数は少なく、ただの光る球状なのだが、感情表現は豊かなようだ。


 プロクスやフランベルジュも、魔石作りに興味があるらしい。エルの手元を、光の妖精と共に覗き込んでいる。


 イングリットはエルから離れた位置にいるヨヨをチラリと見て、質問してみた。


「猫くんは魔石作りに参加しなくても、いいのか?」

『猫の手で、どうやって魔石を作るっていうんだよ』


 ヨヨはイングリットに、肉球を示しながら言った。


「たしかに、その通りだな」

「そこ、お喋りしない」

「はいはいっと」


 イングリットは返事をしつつ、エルの魔石教室に参加することとなった。


「みんなに作ってもらいたいのは、属性を付与していない、ただの魔石。まずは、魔力を含んだ白墨チョークで、魔法陣を描く」


 エルは慣れた手つきで、床にサラサラと魔法陣を描いていった。そこに、大きな錬金鍋を置き、精製水を注いでいく。


「この鍋で魔鉱石を煮込んで、澱みを浄化していくの」


 魔鉱石を入れて魔法陣を発動させると、錬金鍋が一瞬にして沸騰する。ぐつぐつ、ぐつぐつと煮立っていた。

 十分ほどで、浄化は完了する。中の魔鉱石を掬い、錬成台へと並べて行く。

 石のような魔鉱石だったが、色が抜けて水晶のように透明になっていた。


 イングリットはその魔鉱石を覗き込み、感心するように言った。


「市場の魔石は、この浄化の作業が不完全だから、濁った色をしているんだな」

「そうなんだと思う。ここできちんと浄化していないと、魔石が爆発したり、暴走したりするんだよね」

「だったら、大事な作業だ」


 今度は魔法筆を用い、蜂蜜をインク代わりに魔法陣を描いていく。


『ぎゃう~~(蜂蜜、いい匂い)』

「プロクス、笑っちゃうから、個人的な感想はあとにして」

『ぎゃう(了解)』


 エルは真剣な横顔を見せながら、魔法陣を完成させた。


「この魔法陣の上に、魔鉱石を並べて、魔鉱石の中の魔力を熟成させるの」


 エルは目を閉じ、集中する。魔鉱石に手をかざし、仕上げの魔法をかけた。


「――深まれ、熟成エインジング!!」


 魔法陣ごと光に包まれた魔鉱石だったが、光が収まると魔石と化していた。

 ツヤツヤと輝く、良質の魔石が完成となる。

 イングリットは口笛をピュウっと吹き、魔石を手に取った。


「やっぱ、エルの魔石は最高だな」


 イングリットに褒められたエルは、頬を赤く染めている。が、すぐに真顔になって、光妖精に質問していた。


「これ、作れそう?」


 光の妖精達は、コクコクと頷いていた。


「だったら、今度は一緒に作ってみようか」

『ぎゃう(私も)』

『俺様も、挑戦するぞ!』


 光の妖精達は物覚えがよく、手早く魔石を完成させた。その一方で、プロクスとフランベルジュのコンビは、上手くいっていない。

 炎で焦がし、黒ずんだ魔鉱石を前に、エルが額に手を当てながら言った。


「プロクスとフランベルジュは、趣味の魔石ということで」


 光の妖精達はコツを掴んだのか、分業で魔石作りを始めた。

 そんなわけで、魔石の生産が始まる。


 ◇◇◇


 フォースターが帰ってきたというので、エルとイングリットは居間で待つ。

 別に、話があるわけではないが、一応、無事に帰ってきたと知らせるつもりだ。


 アツアツの紅茶と、焼きたての焼き菓子を堪能していたら、廊下が騒がしいことに気付く。


「誰か、お客さん?」

「さあ? なんだろう」


 エルがカップをソーサーに置いた瞬間、扉が勢いよく開かれた。

 入ってきたのは、エルと同じくらいの年頃の少女である。


「え!?」

「は!?」


 同じなのは、年頃だけではなかった。 

 髪の色、瞳の色、肌の色から顔の造形、身長や体つきまで、何もかもエルとそっくりだったのだ。

 仕立てのよいドレスを纏っていて、少女とは思えない貫禄を漂わせている。

 少女はキッと、エルを睨んだ。


「やっぱり、お祖父様は黒斑病の魔女を、ここに匿っていましたのね!!」


 エルとイングリットは、突然の糾弾に言葉を失っていた。

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