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少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房  作者: 江本マシメサ
第二部 少女はダークエルフと商売を始める!
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少女は妖精族について調べる

「ヨヨ、ヨヨ、起きて。ヨヨ!」

『うーん、エルゥ、もう、薬草はいいから、帰ろうよぉ……!』

「いったい、なんの夢を見ているんだ?」

「たぶん、わたしと薬草摘みにでかけて、いつまで経っても帰ろうとしないから、しびれを切らしている夢」

「なんだ、それは」


 ヨヨは毎回、エルが日が暮れる前まで薬草摘みをするので、早く帰ろうと急かすのだ。

 もう、森で薬草摘みなんてしていないのに、夢に見てしまうヨヨをエルは笑ってしまう。


「ヨヨ、もう日が暮れるまで薬草摘みをしないから、起きて」

『絶対嘘だ~~ハッ!!』


 ここで、ようやくヨヨは目覚める。むくりと起き上がって、『何か用?』と問いかけた。


「寝ているところに、ごめん」

『いいよ。それで、なんか用なの?』

「うん」


 エルは魔石の生産についての計画を、ヨヨに聞かせた。


『なるほどね。魔石の大量生産かー。たしかに、妖精族はいいかもしれない』

「でしょう? でも、どの妖精に頼めばいいのか、わからなくって」

「ヨヨと同じ小山猫リ・イルベスの一族は、他にいるのか?」


 イングリットの質問に、ヨヨは欠伸を噛みしめつつ答えた。


『いるっちゃいるけれど、猫系の妖精は使役に向かないよ。気まぐれで、やる気は自分の興味があることにしか示さないし』

「なるほどな。契約する種族も、考慮しないといけないのか。細かな作業が向く妖精族は、いるのか?」

『有名なのは、鼠妖精ラ・フェアリかな』

「鼠の妖精?」

『そう!』


 賢く、手先は器用で、性格は温厚。ただ、数が少なく、召喚しても応じないことが多い。


『妖精族の村は、他国の領土内にあるから、直接行くのもダメだろうし、鼠妖精は諦めたほうがいいかも』

「そっか。他に、手先が器用な妖精はいる?」

『いるっちゃいるけれど……うーん』

「何か、問題があるの?」

『ちょっと、性格が荒くて、凶暴なんだよね。浣熊妖精ラクーンっていうんだけれど』

「浣熊妖精、なんか、聞いたことがあるかも」


 細かな作業ができるからと召喚し、使役できずに傷だらけになった、という記録を読んだことがあった。


「ヨヨみたいに、友好的な妖精じゃないんだね」

『まあ、友好的な妖精のほうが少ないよね』

「そうなんだ」


 ちなみに浣熊妖精の村は、わりと近い位置にあるらしい。


「ヨヨこの辺には、浣熊妖精の他に、手先が器用な妖精族はいないの?」

『いないね』

「そっか」


 イングリットと顔を見合わせる。


「どうする?」

「難しい問題だな。使役しにくいのならば、魔石生産には向かないし。エルは、どう思う?」

「うーん」


 浣熊妖精について、ヨヨから聞いた話や、書物で読んだ情報しか知らない。

 一度、どのような生態なのか、見に行ってみてもいいのではないか。そう、考える。


「一回会って、話をしてみたい。ダメだったら、別の方法を、考えるから」

「わかった。行ってみよう」

「いいの?」

「ああ。浣熊妖精がどんな奴か、気になるしな」

「イングリット、ありがとう」

「いいってことよ」


 早速、冒険の準備を整えた。浣熊妖精の村まで、ヨヨが案内役を務める。ネージュとプロクス、フランベルジュも同行すると名乗り出た。


「出発前に、お祖父さんに話をしてくる」

「一緒に行こうか?」

「大丈夫」


 フォースターは執務室で仕事をしているという。邪魔するのは悪いと思ったが、すぐに出発したい。

 秘書に聞いたら、すぐに執務室に通してくれた。


「おや、エル。お祖父さんが、恋しくなったのかい?」

「ううん、違う。今から出かけるから、報告にきたの?」

「そうか。夕方までには、帰るんだよ」

「それは無理。北にある、フルルンの森に行くの」

「フルルンの森だと!?」


 フルルンの森――それは、浣熊妖精の村がある森である。魔物も多く生息し、迷いの森でもあることから、なるべく近づかないよう注意喚起されている地域らしい。


「なんで、そんなところに行くんだ! 危ないだろう」

「用事があるの」

「それは、あの、君のお友達としている商売が関係しているのかい?」

「そう」


 フォースターは眉間に皺を寄せ、ため息をついている。


「危ないから、止すんだ。必要な品があるのならば、騎士を派遣するから」


 フォースター公爵家には、私設騎士団がある。それを、フルルンの森まで行かせるというのだ。


「それはダメ。妖精族との交渉だから、わたしが行かなければいけないの」

「しかし、フルルンの森は危険なんだ」


 思いがけない反対を受け、エルは深いため息をつく。


「エル、私は君が心配だから、言っているんだよ」

「わかっている。でも、わたしはお祖父さんと会う前に、イングリットと冒険をしてきた。ギルドに手配されていた魔物だって、倒したし」

「それは、本当なのか?」

「本当」


 ギルドカードを取り出し、フォースターに討伐実績を見せた。


「こ、これは!」


 闇属性のワイバーン、炎属性のオーガ、ゴブリンクイーンを討伐している。もちろん、エル一人の力ではない。イングリットや、フランベルジュ、プロクスの協力もある。

 これらを見せたら、フォースターも強く反対できないようだ。


「わかった。ただし、条件がある」

「条件?」


 それは、思いがけないものだった。


 

『少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房』の書籍化が決定しました!

ぶんか社BKブックスより、4月3日発売になります。

イラストはKeG先生に担当いただきました。

本日はエルのキャラデザを公開します!

挿絵(By みてみん)

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