発覚
終わりだ…。ばれちまったばれちまったばれちまった!
…殺される!
「おう…ちょっとこっち来いや」
殺される!!!?
「あ…」
「おい、こっちこいっつってんのが――」
「うわああああああああああああ!?」
にげるしか…にげるしかない!
まずはここから出ないと…。でもそんな事したら、もっと…。いや、でもけっきょくもうダメなんだ。なら行くしかない!
「おいこら待て!」
重いトビラを開け、おれは外へと抜け出した。
追って、来てるか…?
いや、まちがいなく追って来るはずだ。ならどこへ行けば…。おれの知っている場所なんて、そう多くない。それに、おれが知ってるところになんて行ったら、あいつもぜったいさがしに来る。
…知らない方に行くしかない。
暗い…。どっちを向いてもカベがあって、ここがどこなのか、もうわからない。
それでも…進むしかない。できるだけ…遠くへ!
「―――らああ!」
!?
うそだろ…。近くにいる!
なんで…なんでわかるんだよ。もう、けっこう進んだはずなのに!
もっと…もっと速く…。って、さっきからせいいっぱい走ってるっての!
「居やがったなこのやろう!」
「う、うわあああああああ!?」
「なんって声出しやがる! 静かにしやがれ!」
何か…何か!
…! これで!
ぐうぜん足元にあった石を拾い上げ、投げつける。その石はねらった通りにとんで――。
「ふん!」
しかし、それはよけられてしまった。
なんで当たらないんだ! こんなに近くから投げたのに!!
「おいてめえ…」
や、やばい……。
「今の…なんだ?」
やばいやばいやばいやばいやばい。
「良い度胸だ…。許されると思ってんのかてめえええええええ!?」
「ああああああああ!?」
! このスキマ…。おれなら入れる!
「おい!」
さくの下を通って、おれはまた走り出した。
「くそっ…」
だいたい、なんでばれたんだ!?
これまで上手くやってきた。一回もばれたことなんてなかったのに。
そう、さっき…。あいつの…後ろに確か…。
…そうだ!
あいつがばらしたんだ…。それしか考えられない。うらぎったなあ~~~。
にしても…もう、本当にどこかわからない。い、いやだから、もう戻れないんだって。もう、二度と…。
「見つけたぞおらあ!」
「わあ!?」
「もう容赦しないからなこんの~!」
「はなせ! はなしやがれクソやろう!!」
「この…っ」
くそ…こいつさえ…こいつさえいなけりゃ…!
「だからなんて事言いやがるんだ! “親”に向かって!!」
大きな手が、おれへと近づいてきた。
「いってえええええええ!」
「ああもう声がでかいんだよ! 通報でもされたらどうすんだ」
「でけえのはてめえもだろうがってえええええ!?」
このゴリラが…。またなぐりやがった!
「まて! おれはわるくないぞ! やってない! あいつがうそついたんだっ!」
「はぁ~。妹のせいにして恥ずかしくないのかい」
「おれはやってねえ!」
「ほんっとしょうがないやつだ…。ほら帰るよ。泣きそうな顔しちゃってまあ」
「ないてねえ!!」
「うるせえ手間かけさせんな。帰ったら説教の続きだからな」
「…くそ」
いつかやり返してやる。
でも。
悔しいけど…。
しかたないから、今日のところは帰ってやる。