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呪術師と迷い人は異世界で再会する  作者: Y.A.&H.S.
第1章思い出の日々と消えた世界
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第5話 この世界の色

「君が魔族か?」


  瞼を閉じた暗い世界に凛と澄んだ声が聞こえた。少し懐かしくて見ようとしたが、瞼が重くて開けられない。玲と似たガラスのように空き通っていて、薔薇のように綺麗だけど危なっかしいのにも関わらずフワリとしていて気持ちいい。不思議な声の持ち主は何も言わずに待っている。


  声も出せない程弱っているので首をゆっくり横に振るだけで返事する。


「声を出せない程弱っているのか。ん? 一様聞くが、お前の名前はシュージか?」


  何故名前を知っているのか聞くべきなのだろうが、いかんせん空腹な上、衰弱していて頭が全く働かない。


  コクリと頷くと、魔族ではなさそうだな。という声がして暖かい何かに包まれた。みるみるうちに逃げるうちについた小さな引っ掻き傷から魔導でやられた大きな火傷が消えていった。


  そして、ようやく眼を開けると俺と同じくらいの年で、薄手の青いローブに包まれた女の人が立っていた。赤みがかったチョコレートブラウンに黒くて、声同様に澄み切った瞳。最後の日の玲にどこか似ている。彼女は俺の瞳を覗き込むと


「なるほど、異世界人か。確信が持てないので髪を切って貰っても良いか? 魔族は黒眼黒髪を誇りに思っているからな。ナイフは貸してやる」


  頭は上手く回らないが、髪を切った方がいいだろうと思い、ナイフを借りて肩よりもあった髪をばさりと切り落とす。


「ありがとう、これからは私が君は人間だという証人になろう。ああそうだ、私の名前はレイジナ・カーベインだ。レイジナとでも呼んでくれ。

 君の黒眼黒髪は異世界人だからだろう?運が悪かったな。なんだったら髪と眼の色を変えるか?」


「はい、お願いします」


「希望の色はあるか? ないなら、一番一般的な色にするが。」


「特に希望はありません」


「分かった」


 そういうと、レイジナさんは詠唱を始めた。


【髪よ染まれ、月の色。瞳よ映せ、空の色。美しきその色に、染まれよ染まれいつまでも】


  鏡を見せてもらうと黒眼黒髪の高校生は消え、銀と黄色が混ざったような金(というには薄いが)髪と春の空のようなライトブルーの瞳の成人男性がこちらを見ていた。


 ◆◆◆


  レイジナさんが家に泊めてくれる事になった。周囲には使用人兼弟子で通すらしい。孤児院時代からの知り合いとも伝えているので、良くしてくれている。


  実際は家事もできない只の居候なので少し居づらい。だが、家事も魔導も教えてやるし、出世払いにしてやる。異世界人がうろちょろして悪い事に巻き込まれる方が迷惑だ。と言われたので大人しく後ろからついている。


  もう断る理由がないのだが、これだけは聞きておきたかった。


「そういえば、なんで異世界人だと分かったんですか?」


「【見破り】の魔導を発動させていたからだ。無と光と闇の三属性魔導だから私しか知らないし、使えない。ついでに言うつもりもない。私の切り札だからな。

  あとは、迷い人を懐に入れているとバレたら面倒だ。迷い人は何かしらの力が強いから政治のドロドロとした部分に引き込まれるぞ」


  言う事を聞くようにした上で信頼できるようにそちらの弱みを見せたというところか。まぁ、聞かない理由がない。

  迷い人とは転移してきた人の事で、世界の壁を越えるには人一倍魂の核が強くないと渡れないので迷い人は他の人たちに比べて強いらしい。


 ◆◆◆


  レイジナさんの案内で冒険ギルドに着いた。職業を魔導師にして、属性は火・水・光にした。攻撃魔導師という事にしてしまえばある程度は誤魔化せるらしい……そんな簡単に誤魔化せていいのか?

  名前は秀司をもじってヒュージにした。(孤児には名前が無い人も多いから登録時に名乗ったものになるそうだ)


  因みに、身分証でもあるギルドカードは、本人の魔力を認識している為、本人しか起動できない。他人が触れた瞬間文字が消えるので盗む人もいない。


  スキルやレベルの概念がないので、名前と種族、職業、犯罪歴の有無のみが書かれ、カードの色でランクを識別できるようになっている。


  ランクは下から白→黄色→オレンジ→赤→紫→青→銀→金となっている。つい数年前まではその上に黒ランクがあったが誰もたどり着いた人がいなかったので廃止されたらしい。


  ランクは能力と依頼の達成率、難度の高い依頼をどれほど受けたかの3つの合計で決まる。

 三属性なので普通は赤以上なのだが、まだ使えないのでオレンジからスタートになった。

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