第3話 目覚めたそこは異世界で
目覚めるとそこは、知らない森だった。
「いやっテンプレすぎ!」
叫んでしまったが、俺は悪くないんだ。うんそうだ、そうに決まってる。
体を見ると中世ヨーロッパの平民あたりが着てそうな、だがしっかりとした生地の服を着ていた。左手には例の義眼を握っていて、ポケットを探ると手紙が入っていた。
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白石 秀司君へ
私はこの地を治めているアゲイルです。因みにその星の名前もアゲイルです。地球を治めている水の神・ミリサの兄妹神で、地の神とも呼ばれています。とはいえ、草花はまた別の神が治めているので、私は主に貴金属や宝石類を管理して地の恵を与えます。
妹の頼みで特例として貴方をこの世界に転移させる事を認めました。できれば松川玲さんと同じ孤児院出身にした上で転生させてあげたかったんですが、因果律の修正や天界に送る魂の数を調整する関係で転移となりました。
この世界の常識をある程度書き記し、神の祝福を授ける事で許してください。
まずこの世界はステイタスという概念はありますが、それを見れるのは関所、もしくはギルドへの登録かランクアップの時のみです。職業は村人にしているので安心してください。
ですが、黒髪黒眼は魔族の象徴です。魔族は魔物(ゲームの中の魔物と同じ物と考えて大丈夫です)に知性が宿ったもので、人に化けて襲う事がある事から忌避されています。未だに忌避する感情が強い人はいます。早めに無属性魔導で色を変える事をお勧めします。
魔導は基本の4属性の 水・火・地・風と少し高レベルな能力を必要とする光・闇・時空の3つから構成されます。平民は4属性のうち1つから3つですが、1つしか或いは何も無い人も多いです。上流階級は3つか4つで、4つ以上属性を持つ人はそれなりの地位を与えられます。(無属性もありますが魔力を持っているなら誰でも使えるものなので省略します)
祝福は全属性を授けるものなので、どの属性を隠すかは自分で決めてもらって結構です。
付け足すなら、紹介した順が後になるほど、属性を持つ人は少なく、発動に掛かる魔力と制御・運用に必要な力が大きく、その繊細さに拍車がかかります。時空属性を運用まで出来た人は今現在、白桜歴4863年の間に10人いるかどうかといる程です。
無属性魔導は誰でも使えるので誤魔化すなら無属性だと言えばいいですが、イメージを伝えられれば同じ魔導を使うことができるので、隠してる属性を使うのは避けた方が賢明でしょう。
その事も考えて決めてくださいね。
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一枚目には俺が転移した理由と魔導(魔法と同じ意味らしい)について書かれていた。最後の
『その事も考えて決めてくださいね』
はおそらく、お願いではなく命令だ。
面倒を増やすなよ、と会った事がない神さま? アゲイルさん? がこちらを睨んでいた。
ブルルと、頭の中での想像に浮かんできた神様を追い払い、2枚目を読み始める。
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追伸
名前は平民は名前だけで、上流階級で家名(ここからミドルネームが入る人が出始める)、貴族で洗礼名、王族で国名、国王は尊称が入ります。
神の祝福は全属性を魂へ付与、魔力回復速度の向上、言語理解です。
腕の治療はサービスです。
これから先、私は何があろうとも介入出来ません。ご了承ください。新たなる人生に大いなる幸せがあらんことを。
アゲイルより
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(2枚目は完全に説明書だな。というか、魔導の使い方も書いておいてよ)
それが読み終わって一番最初の感想だ。
「二属性並列発動とか出来ねぇかなー。というか〜使い方知らねえのにどう使えと?」
しばらく一人でグチグチいうと気が晴れた。まずは生活基盤を作る必要がある。近くの村か街を探そうと川沿いに歩き続けながら森の出口を探し始めた。川沿いに歩くのは水をすぐ飲めるようにする為で他意はない(筈だ)。