第26話 3つの顔と一つの心〜sideレイジナ〜
レイの母をを名乗る女性を追い返したという【テレパシー】が入ってから毎朝・毎夕考えてきたことがある。
私は
『レイ』として
生きていても
いいのだろうか。
怖いんだ。
『レイジナは天才呪術魔導師』
『玲は幼なじみで大好きな人』
なら、
『レイのどこがいいんだろう』
今はレイジナにも玲にもなるつもりはない。
いや、なれない。
玲なら
親愛も友愛も全部を
貰えるかもしれない
けど、なれない。
『松川 玲』はもう死んだから。
今の私は“彼女の記憶を持った別人”
だから
親愛も友愛も全部を貰えるなんて思えない。
レイジナなら
自分の生い立ちを知って尚
側にいる人だと
慕ってくれるかもしれない。
けど、なれない。
『レイジナ』は捨てられた親に付きまとわれていて『秀司』の“過去がバレる危険がある”
だから
彼のことを考えたらなれない。
だってそうでしょう?
彼は『迷い人』なんだ。唯でさえ、他の人より力が強い傾向があるのに、『迷い人』でも滅多にいない時空属性持ち。
今でさえ、色んな人に目をつけられてるのに『迷い人』だと知られたらどうなるか、考えたくもない。
『存在しない筈』の人間は『存在しない筈』の世界軸を作り出す。それを悪用しようと考える人間は少なくない。
特に貴族やその地位を狙う者はね。
だから
私は『レイ』でい続ける。
彼に愛して貰えなくても
笑顔が見れればいい。
だから
私は
“玲の記憶を持つ優しくて強い”
『レイ』じゃないと
ダメなの。
でも、
『レイ』を愛してくれるのか自信がない。
“彼女の記憶を持った別人”に過ぎないレイを
“過去がバレる危険がある”のに
側にいてくれるだろうか
私が持つ3つの顔を知って尚
恋のために『レイ』の顔を持つ
私の側にいてくれる
酔狂な人は
いるだろうか。




