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呪術師と迷い人は異世界で再会する  作者: Y.A.&H.S.
第3章 みぢかし時間と関係
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第23.5話 累計25話達成記念〜2人だけの婚約式〜

 

 中火月6日


「レイ、誕生日おめでとう」


 灯りを点け、21回目の誕生日を祝う。転生しているので、実際は21回目どころか40回目に近いのだが、記憶の戻り方もあり曖昧な為、こちらでの歳に合わせている。


 身体に引っ張られてるから、精神年齢ならまだ25〜30才ぐらいだの、まだセーフだのなんだの言っていたが、何のことだ。

 まぁ、そんなことはどうでもいいか。


「明日は婚約式だね」


 誕生日ケーキを挟んで向かいに座る。玲は幸せそうな、恥ずかしそうな、こそばゆいような笑みを浮かべながら右手で頬づえをつき、左手を魔力灯にかざした。


 明日のこの時間にはエンゲージリングが嵌められているであろう薬指を見てクスクスと、転校してきた頃にしか見られなかったような笑顔を浮かベている玲を見ると、それだけで俺も幸せになる。


「ねえ、ちょっとだけ立って」


 ん?と、不思議そうな声を出しつつ、レイは椅子の隣に立った。一方で俺は、レイの前に跪き、小さな白い箱を開ける。


「殆ど成り行きになっちゃったから、改めて。ずっと俺の隣に居てくれますか?」


 箱の中には銀の糸で編み込んだかのような模様の指輪があった。双獅子の討伐依頼を受けた日に買ったプレゼントだ。指輪は二つのリングが重なりXに似た形になっている。二つに分かれた部分に挟まれるようにそれぞれ台座が付いていて、片方にはルビーがあるが、片方には何もないただの台座の為に未完成のような指輪だった。


「ええ、もちろんよ。『秀司』も『ヒュージ』もずっと私の隣に居てね」


 レイは左手を差し出し、俺はその手を取る。箱から指輪を取り出すと、石のついていない台座に気づいたようで、今は何もついていない方の台座をキョトンとした顔で見ていた。

 俺は、その顔を見て明日が更に楽しみになった。


「今は、これでいいの。詳しい内容は明日のお楽しみに取っとけ。これは婚約指輪で本命のプレゼントは明日の婚約式だ」


 俺はウィンクしながら薬指に嵌めた。


「happy birthday,my fiance.」

「だいぶキザになったわね。婚約式は1日早いからloverじゃないの?」

「雰囲気壊すなよ」


 触れるだけの軽いキスを落とす。その後、どちらともなくそれぞれの部屋に向かった。


 ◆◆◆


 sideレイ


 ベットにうつ伏せになりヴー、と唸った。顔の熱を逃がそうとタオルに水を湿らせ、少し凍らしてから顔に押し付ける。そのまま30秒ほど深呼吸を繰り返す。


 顔の赤みは引かないものの、ようやく落ち着いたので顔をあげ仰向けになって天井をボーっと見つめる。恥ずかしい。


「しゅうったら、なんで普通にキスできるのよ。というか、今まではせいぜいほっぺたでしょうが……」


 口許に手を伸ばすも、現実だと認めるようで顔の10センチ前で止めた。代わりに左手だけで目を覆い被し、右手で水差しを探す。

 水差しに入れてある、レモン果汁を混ぜた自家製のスポーツドリンクを一気に飲み干した。ようやく熱が引き、残った全ての熱を吐き出すように息を吐く。


 それから5分近く経って目を覆っていた手を外した。指輪が無いのか心許ない。さっき、前世も含めて初めてつけた指輪なのに。

(たった5分もつけてないのに、馬鹿みたい)


「嗚呼、もう!」


 少し思い出しただけでまた顔が熱い。この熱は冷めそうにない。


「カッコ良すぎ。これから心が持ちそうにないよ」


 冷房を効かせて、自らに【スリープモード】をかける。






 2人だけの婚約式は絶対に忘れられないわね





 レイはゆっくりと瞳を閉じた。


 ◆◆◆


 side秀司


 ついキスをしてしまった。

 柔らかくて、暖かくて、甘く……って、そうじゃない!


 枕にシワができるほど強く握りこぶしを叩き込んだ。枕だけでは衝撃を吸収しきれず、スプリングが軋む音がした。


 ああもう、今までは髪か手へのキスで我慢していたというのに。

 ごろんと仰向けになり、腕を放り出す。足はベッドの脇から動いてないので大の字というよりナの字になっている。


 大きく深呼吸をして、枕元に置いてある自家製のスポーツドリンクを一気に飲み、5分の1ほど残してサイドテーブルに戻す。


 軽く触れるだけのバードキスだったのに、まだ唇にはその感触が残っている。触れただけでこれなのに、舌を入れていたらどんなに気持ち良かったのだろうか。歯列をなぞり、舌を絡ませ、上顎を撫でたら、どんな反応をしてくれたのだろうか。甘い甘い妄想が熱となり身体の奥深くに溜まっていく。


 俺って変わりすぎじゃないか……


 ああ、初めてのキスは忘れられそうにない。

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