第15話 その言葉は誰のもの?
中水月 17日国家魔導師主席選抜戦 本選1日目
昨日のレイのあの言葉はどうとればいいんだろう。玲としてなら、告白としてとってもいいんだろうけどな。
最近の行動の節々から、レイは「玲」の生まれ変わりなのだと分かった。そして、前世の記憶はほぼ完全に残っていることも。だけど、今でも彼女から自分は『松川 玲』だとは、言われてない。
(気づいて欲しいのか、気づかないで欲しいのかぐらいは分かるようにしてくれよ)
でも、何も言わないという事は、気づかないで欲しいという事なんだろうな。
玲に会いたいという願いは叶ったのだ。これ以上は我儘だ。『玲』にも『レイジナさん』にも迷惑をかける。きっと、都合のいい使用人だから手離したくない。せいぜいそんな理由のはずだ。
この醜い心には気づきたくなかった。
玲を異世界に来てまで
側にいさせたい。
恋と言うには汚くて
親愛というには熱すぎる。
この心に蓋をして
君が話してくれるまで
僕は君を待つよ。
君の側で
迷い人の使用人としてね。
だからいつの日か教えてね。
「その言葉は誰のもの?」
◆◆◆
今日は選抜戦本選初日。レイと国家付与魔導師になったバルシオン・クリス・ハルマキア次期子爵の対戦だった。
ハルマキア次期子爵が的に付与魔導を2つだけかけたあと、レイが呪術を2つだけかけて的に干渉して壊す。壊れたらレイの勝ち、壊れなかったら次期子爵の勝ちとなる。ハルマキア次期子爵は硬化と魔導妨害の2つを掛けた。しかし、レイは魔導妨害と硬化を同時に解いてしまった。
【心を開いて、力を抜いて。優しく、柔らかいその心で願いを聞いてちょうだい。効果無効】
相手の魔力と自分の魔力をシンクロさせて、自分の攻撃が通るようにしたのだ。レイは続いて的を破壊する。
【元ある姿に戻りなさい。全てのものは土から生まれ、土に還る。物体完全破壊】
的はバラバラになり、破片は空中を綺麗に舞い、そのまま消えていった。
◆◆◆
sideレイジナ
おっつかれ〜〜と、間抜けな声を掛けてくるバロンの姿が見えた。何故負けたのに嬉しそうな声なのか。一瞬、逃げる選択肢が浮かんだが、出会った頃それをしたら、隠れ家を特定されたのでやめる。
「お疲れ様にございます、バルシオン様。先程は、
「あーあー、そんな堅っ苦しい言葉遣いしないで。それが嫌で逃げて来たんだ」
ちぇっ、駄目か。いつもなら、この口調で挨拶しておわりなのに。
そんなことをおくびにも出さず、いつもの口調に戻す。
「どこに誰の目があるか分からないんだからさっきの方が良いと思うんだけど?」
「別に家族ぐるみでの付き合いがあるなんてちゃんと情報収集してる人なら知ってるから大丈夫だよ」
なんで逃げ道潰しとくかなぁ。話区切るまでに時間がかかってメンドくさくなるんだけど。全く、このイケメンの無駄遣い野郎は。
ねぇねぇ、という声で意識をバロンに戻す。
「君が良かったらなんだけど、僕のとこに嫁に来て欲しいんだ」
はあああぁぁぁ?!?!
何言ってんの!これまでと話の流れ違わない?!
いつもなら情報交換だけでしょ!?!?
「僕のところもさ、そろそろ娶れってうるさい訳。流石に来年26で結婚適齢期終わるのに妻がいないとなると、周囲からの目が面倒くさいんだよね。
で、君もあと数ヶ月で21歳だろ。親同士も仲良いし、気が知れてる。強い力の血を入れるって事で通せるし、僕自身も君を気になってたしね。返事はいつでもいいけど早めによろしくね」
私が固まっている間に言いたいことを言って、逃げやがった。これは潰しておかないと。




