表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪術師と迷い人は異世界で再会する  作者: Y.A.&H.S.
第2章 異世界生活は快適ですか
13/67

第12話 ヒュージと秀司

 

 神月。これは日本の正月のようなものだ。この世界は1週間は7日なのだが、1カ月が28日で、1年が13ヶ月なのだ。これは水・火・地・風属性を司る4人の天使達が7人いる精霊達とこの世界を治めているからだそうだ。


 4人の天使を創造した神は、平等にこの世界を治めるように告げ、その年最初の1ヶ月(神さまの歓迎会を行う為1日多く29日)は神が視察に来るようになった。


 火の天使・ウリエル、水の天使・サキエル、風の天使・ルヒエル、地震の天使・スイエルは最初はとても仲が良かった。


 しかし、時が経つにつれてウリエルとスイエルは力が増し、互いを敵のように見始めたのだ。


 その頃、神は幾人もの天使を創造し、彼らの上司や部下にしていた。


 ウリエルは4大天使に選ばれたことで力が増し、スイエルはとある言葉で空という意味にもなるため、唯一の二属性を司る天使であると思いこみ、力を蓄えていった。


 しかし、サキエルとルヒエルは創造された時のままでいるべきだと精進はするが、力を蓄えることはなかったため、2人の行く末を見守ることしかできなかった。


 ウリエルとスイエルと2人の天使の溝は深まり、共に治めることに限界を感じるようになった。その為、神がいらっしゃられる神月のみともに治め、残りの12ヶ月を3ヶ月交代で治める事にした。

 サキエルは命の源の水を作る為神の力が残りやすい最初の3ヶ月を請け負った。


 ウリエルとスイエルは力が強い為、間にルヒエルが入った。彼らはどちらが先に治めるか争ったが、スイエルが神に見せる準備をする月を治めることを請け負った。彼が次の天使に統治権を交代することを拒まないようにする為でもあったが。


 こうして、季節が生まれ今の世界は完成したと言われる。


 ◆◆◆


 なんでこの話をしたかというと、今日が神月の0日なのだ。先程、その年最初の一月だけ神が降臨する記述があったが、神がご降臨された日は0日という特別な日として、宴を催すのがしきたりだという。


 その為、おせちをつくったのだ。


(まぁ、自炊経験なしだった男子高校生が記憶だけを頼りにつくったのだから、失敗した回数は推して知るべしだ)



 だが、青ランクになってから初めての正月なので気合いが入る。


 去年は見るもの全てが初めてだったので何もできなかった。


「レイジナさん、今年はおせちを作りました。『秀司』がいた世界の正月料理なんですが、こちらには無い食材もあるので、似た何かになってしまったんですけれどね」


 重箱風の弁当箱を開け、召し上がれと差し出す。これは今も不思議なのだが、わさびや筍のような日本特有の食材はあるのに日本食はないのだ。同じ植物やらなんやらがあるのは治めているのが兄妹神だからで済ませられるのだろうが、なぜ和食はないのだろう。


「食材が小分けになって入れられてるが、少量ずつ盛り付けた料理のセット全体がおせちということか?」


 はい、そうですよ。と答えるとやっぱりか、とどこか当たり前の事をわざわざ確認したかのような表情で呟いていた。


 レイジナさんは感がいいのか『一を聞いて十を知る』どころか『一を見て二十を知る』タイプなのだ。【見破り】の魔導を使っているわけでもないのに観察力が高く、凄く羨ましい。


 ◆◆◆


 だいたい食べ終えたところでレイジナさんがそうそう、と切り出した。


「レイジナさん呼びはもうするな。敬語もつけなくていい」

「何故ですか?」

「同じ孤児院育ちになってるんだ。さん付けするのはおかしいとハルマキア家が嗅ぎ回ってる。あの家だけは敵にまわさず、情報も与えないようにしろ。

 仕事と私生活を分けているからと誤魔化したりはしているが、そうなるとヒュージがTPO関係なくさん付けにしていると、怪しまれる。

 今後はレイとでも呼べ。畏まったとこでだけ敬語にしている方が誤魔化しやすい」


  「わかった。でも、今日は神月で、しかも0日だ。こんな日の、俺達2人しかいない家の中でまで気を張らなくてもいいと思うよ。ね、レイ?」


「ああ、それもそうだな。今年もよろしく、秀司」

「今はヒュージだよ」


 そう言うと、今まで張り詰めた表情が緩み、


「『今日は神月で、しかも0日だ。こんな日の、俺達2人しかいない家の中でまで気を張らなくてもいいと思う』んだろ?親からの最初のプレゼントなんだ。大事にしても罪にはならんだろ?」


 悪戯っ子のような笑みだった。けど、嫌な気はしない。


「そうだね。今年もよろしく、レイ」


 ああ、なんでこんなにも懐かしい気がするのだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ