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遭遇
地面ばかりを見て歩いていた草間は、顔を上げると見知らぬ家の前に立っていた。
周囲を見渡し、草間はまたやってしまった、と思った。
恐らくここは、昼間”おかっぱの少年”が”悪い人”だと示していた面接官の家だ。
何気なく視界に入った表札を見て、草間は思った。
無視をしようと決めていたにも関わらず、自ら首を突っ込む形となってしまった。
もちろん、草間が面接官の家の場所など知るはずもない。
彼は信じようとしないが、”おかっぱの少年”に惑わされ、案内されたのである。
草間は咄嗟に時計を見る。
昼の1時を過ぎていた。
何も気づかぬまま、凡そ1時間程歩いていたことになる。
周囲は住宅街だが、人は見当たらずしんと静まり返っている。
草間が辺りを見渡していると、彼の正面にある家の玄関がぎぃと音を立て、ゆっくりと開いた。
扉の向こうのは、”おかっぱの少年”
そして、居間であろう部屋に続く、床にべったりと付いている血の跡。
あぁ結局こうなるのか…
草間は閉じられた居間の方を指差す”おかっぱの少年”を呆然と眺めていた。