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第6話「優としての生活」

描写は少ないですが、今回まるまる女装です。

 5月25日日曜日。昨日は麻美さんも含めて知り合いには会わずに無事帰宅となった。今日は午後から麻美さんの家に行って借りた服を返す予定だ。家に行くことは昨日帰りの電車内でメールを送って了承されている。……返信はビックリするほど早かった。

 昨日は帰宅後直ぐに行きに着ていた麻美さんからの借り物の服を洗濯機にかけ、カレーを温め直しながら作り置きのチキンカツを揚げる。その間ワンピース(+汚れ防止の為にエプロン装備)のままである。と言うかお風呂に入る迄ずっとワンピースで過ごし、お風呂から上がった後はネグリジェ姿になった。下着もちゃんと買った新品のジュニアブラとショーツである。

 そして起床後もTシャツとジーンズ生地のタイトスカートと自宅内にも関わらず女装を維持している。これは本庄さんからの提案で、とにかく女物の服に慣れる為ということで優基は昨日からずっと女装であった。

 タイトスカートにしたのは他のスカートと比較して風や座る時など裾を気にする場面が少ないからだったが、常に太股同士が触れる感覚と足の可動範囲が制限されてしまうのは慣れるしかないかなぁとつくづく思う。特にしゃがむ時は気を付けないとショーツが見えてしまう。

 起きてから朝食を軽く済ませ(流石に朝からカレーは重いのでベーコンエッグと残り物の野菜でサラダ)、夜の内に干していた服は起床時には乾いていて既に畳んである。掃除に洗濯と普段の日曜日と変わらない行動をこなしていく。一通りの作業を終えて時刻は11時。昼は残りを利用して焼きカレーにしようと思っているので、特別に準備が必要な物は無い。

「何か作っていくか」

 とは言え14時頃の予定(麻美さんは午前中は部活だそう)ではお菓子の方が良いだろう。今ある食材で作れて簡単で時間の掛からない物――という事でドーナツを作る事にした。ホットケーキミックスと牛乳、卵、後は油があればそこまで難しくはない。

 生地を作った後、昼食の予定の焼きカレーの準備を済ませて(耐熱容器にご飯、カレー、チーズと重ねて中央に卵を割ってオーブンにセット)ドーナツを揚げる段階に入る。簡単に成形出来る調理器具があるのでそれを利用してキツネ色に成るまで揚げていく。今回の生地からは9個作れた。その内やや形が崩れてしまった3個を試食と今後のお菓子用にする。

「久しぶりに作ったけど味は大丈夫だな。アレンジは何か出来るのあったかな……あ、チョコレートがある」

 とりあえずドーナツを1個食べてみて味に問題が無い事を確認する。アレンジに使えそうな物を探して冷蔵庫を漁ると板チョコが出てきた。自分で買った記憶は無いが、恐らく母親がバレンタインの時に買った余りだろう。その頃はまだ家に居たし。

賞味期限が問題ない事を確認すると湯煎にかけて溶かし、持って行く予定の6個の内3個の1/3程にチョコレートをかけて冷ます。

「ラッピングは……っと。やっぱりここか」

 戸棚を漁って丁度良い大きさの紙箱を発見した。母親が趣味で集めている物だが、数もあるし勝手に使わせて貰う。それ程高い物でも無かったし。箱にドーナツを入れて一旦冷蔵庫で冷やす。出来上がった焼きカレーを食べてから使用した調理器具や皿を洗っていく。

 そして1時間程のんびりと過ごして13時50分。忘れ物が無い事を確認して家を出る。麻美さんの家迄は徒歩5分程である。途中の大通りでの信号待ちでちょっと時間が掛かったが、13時57分とほぼ約束の時間通りに麻美さんの家に到着した。徒歩で5分程とお互いの自宅は近いのだが先程の大通りを挟んで小学校中学校共に学区が異なり、高校で初のクラスメイトである。

 優基としては麻美さんと選択授業で同じ科目を取っていないし、これまでの接点と言えば入学直後のオリエンテーション位で、麻美さんからすればクラスメイトの一人との印象しか無いだろう。それなのに(勘違いがあるとは言え)これからかなり親しい関係になりそうだ。入学からまだ2ヶ月経っていないにも関わらず、知られているだけでも30人以上(他校生も含む)が麻美さんに告白して玉砕しているという事実がある。麻美さんと男子で親しい関係は聞いた事が無い。親しくなれる事自体は嬉しい半面、女子(しかも妹)としてだし、バレた時は社会的に抹殺されかねない。それこそ細心の注意が必要だろう。

 玄関前で一呼吸してインターフォンを鳴らす。電子音が鳴る中10秒程で直接ドアが開く。

「優ちゃん来てくれて有難う~!」

「うわっ。あの、麻美さ……お姉ちゃん?」

 そしてドアが開くなりいきなり麻美さんに抱きつかれてしまった。服越しに感じる豊満な胸の感触に、男として反応しないように必死に耐える。そしてたっぷり30秒は抱きつかれていただろうか。

「ゴメンね~。昨日のメールから優ちゃんが来るのが楽しみでしょうが無かったんだ」

「そ、そうでしたか……」

 楽しみにしていてくれたのは嬉しいけど、そろそろ離れて欲しい。服越しに潰れて密着している胸の柔らかい感触が伝わっている。

「もっと砕けた感じで良いんだけど、それは追々ね。取りあえず入って」

「お、お邪魔します」

 ようやく麻美さんのハグから解放されて中に入った。……優としてしっかりしないとな。


無事に優として過ごせるでしょうか?次回は14日16時更新予定です。

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