「調査」――[星辰調査録『有智生命の章』]の一部を抜粋
この星には、情報を突出して蓄積する生命体有り。元素体系は有機23系。蓄積機構は最下注釈の模型へアクセスされたし。彼等は自らの事を人間と名乗り、またその過ごす地を地球と呼ぶ。情報交換の手段を幾つか挙げる。まず近接に用いる物。情報を、体躯の変形、もしくは道具による動作に委任し、恒星光の反射波で射出。光受容器官で受信。あるいは、情報を、内部機構が生み出したガス体を媒体とする振動に委ねて大気へ射出、振動受容器官で受信。遠距離については、情報を含めたパルス波を、衛星軌道上に乗せた機械類で遠方まで拡散、アンテナで受信する手段を取っている。
人間はまだ他個体を認識するにまで達しておらず、他個体が射出した情報を適切に処理することができていない。至って非合理な、連合には甘受することのできない齟齬が蔓延している。
彼等は、当項銀河を半周さえしない間に生まれた新知的生命であり、彼等の推移から、銀河を半周する頃には合理的な情報交換術を会得していることが見込まれる。
現在彼等が最も著しく欠く物は、論理・〈集〉の認識・普遍性。遠距離の通信手段は芽生えたばかりであり、諸問題の漸進的解決は昨日始まった物に過ぎない。
この有智生命体に、連合はまだ関与すべきでは無く、彼等の抱くあらゆる偏見が完全に解消された時、初めて交流への議論が交わされるべきである。
(*´_`)読んでいただきありがとうございました。




