表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~  作者: 幹谷セイ(せい。)
第一部 四季姫覚醒の巻
62/331

第六章 対石追跡 1


 六月末、日曜日。京都府四季が丘町にある、とある山中の庵にて。

「何とも、不思議じゃのう」

 観音開きの扉を開け放ち、奉られているお地蔵様と肩を並べて座っていた月麿が、複雑な調子で呟く。

 腕を組み、喉の奥から重苦しい音を出していた。

「どうしたんだ、麿? 何を唸っているんだ?」

 月麿に呼ばれて庵までやってきた榎、椿、柊の三人は、訝しく思いながら、月麿を観察していた。

 声を掛けられるまで、榎たちの来訪にも気付いていなかったらしい。驚いた表情で顔を上げて、深刻そうな視線を向けてきた。

「以前、大雨のせいで妖怪たちの根城が崩れたでおじゃろう? あれ以来、宵月夜と行動を共にしておる下等妖怪たちの気配が、山から消えておったのじゃ」

 確かに、大雨のとき以来、榎たちも宵月夜や、手下の妖怪たちを見ていない。

 柊も交えて、修行がてら妖怪退治も行ってきたが、どれも宵月夜の傘下には入っていない、あぶれた下等妖怪ばかりだった。

「そう遠くへは行っておらぬはずと、神通力を飛ばして探しておったのじゃが……」

 遠い目をして、月麿は山の向こうを仰いだ。榎たちもつられて、同じ方角へ視線を向ける。

 眼下には、四季が丘町の小ぢんまりとした住宅街が広がっていた。

「なぜか、妖怪たちの気配が、町の中から感じられるでおじゃる」

 眉をひそめて、月麿は意味が分からないと、再び唸りだした。

 妖怪とは昔から、人里離れた僻地に住処を置き、時々人前に姿を見せて悪さを働く存在だ。妖怪の集団が人の暮らす土地に定住するなど、ありえない話だった。

「あいつら、山が崩れたから引越したのかな」

「でも、町の中だなんて。どこかのお家にでも、住み着いているのかしら」

「軒下や屋根裏に、巣でも作っとるんとちゃうか。スズメバチやら、害獣と変わらんなぁ。妖怪っちゅうのは」

 榎たちは口々に意見を出し合ったが、どれも憶測の域を出なかった。

 野鳥などと同じで、住む場所がなくなり、やむなく出てきたのかもしれない。

 仮に必然的な事情があったとしても、古来から人間を敵視し、攻撃の対象としてきた妖怪たちを、人が密集して暮らす土地で放置するなんて、危険すぎる。

「もし、町の中で妖怪たちが人間に悪さを働いたら、大変だ。様子を確認するべきだな」

 月麿も、そのつもりで榎たちを呼んだのだし。榎の意見に反論はなく、全員が大きく頷いた。

「妖怪たちが集まっておる、大体の場所は把握してある。偵察に行ってまいれ」

 かくして、榎たちの街中妖怪探索が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。よろしかったらクリックお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルも参加中。
目次ページ下部のバナーをクリックしていただけると嬉しいのですよ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ