表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~  作者: 幹谷セイ(せい。)
第一部 四季姫覚醒の巻
35/331

第三章 春姫覚醒 9

 翌日。長らく、伝師の長の下へと赴いていた月麿が庵に戻ってきた。

「麿の外出中に、二人目の四季姫を覚醒させるとは。ようやったぞ、榎!」

 月麿は二人目の四季姫、椿と対面して、大喜びだった。

「どんなもんよ! あたしの実力、見直したか麿!」

 褒められていい気分になった榎は、ふんぞり返って自画自賛した。

「自惚れるでない。春姫の内に眠る力が、目覚めかけておっただけじゃ。お主は目覚めるきっかけになったに過ぎぬ」

 榎を指さして、月麿はびしりと厳しい言葉をぶつけた。榎はつまらなく感じ、唇を尖らせた。

「何だよ。もっと褒めてくれてもいいのに。あたしは褒められて伸びる子だぞ」

「もし、椿が一人だったら、春姫に変身しても、戦えなかったかもしれないし。えのちゃんがいたから、椿も頑張ろうと思えたのよ」

 椿は榎を庇って、優しい言葉をかけてくれた。

「まったく、和気藹々(わきあいあい)と馴れ合いおって。気が緩んでおる」

 月麿は呆れた様子だった。

「じゃが、四季姫も二人となると、また新たな戦い方を組み合わせられるでおじゃるな。連携して、より強い妖怪も倒せるでごじゃる。より精進せよ、期待しておるぞ!」

 榎たちは頷き、山を降りた。

「えのちゃんは、京都にきてから、ずっと一人で妖怪退治をしていたの?」

 寺へ戻る道中、椿が尋ねてきた。榎は頷いた。

「うん。妖怪を倒して、修行を積んで、仲間を探してね」

「大変だったんだねぇ。だから、夜な夜な家を抜けだしたり、放課後に遅く帰ってきていたわけね」

「ごめんね、黙ってて。言っても信じてもらえないと思ったし、椿を危ない目に遭わせたくなかったから」

 謝ると、椿は首を横に振った。今まで、榎がこそこそと一人で行動していた理由を全て知り、更に同じ立場に加われて、椿は機嫌がよさそうだった。

「さっちゃんは、危ない目に遭ってもいいの? えのちゃんと妖怪の関係、知っているんでしょう?」

「委員長は、駄目って言ってもきかないから」

「椿だって、同じよ?」

「だから、意地でも内緒にしていたんだよ」

 椿と周の、目的に固執するしつこさには、似た部分があると、常々思っていた。周に安易な約束をして、少し反省した榎は、同じ過ちを繰り返さないためにと、椿に真実を隠し通していた。

 全ては、椿のため。榎は嘘を吐いていた理由を、きっちりと椿に伝えた。

「ふぅん。えのちゃんは結構、椿の性格を分かってくれているのね。いいわ、隠れてこそこそしていた件は、許してあげる」

 椿は榎の考えを聞いて、ちゃんと理解してくれたらしい。満足そうに笑った。

「これからは春姫として、えのちゃんと一緒に戦うから。よろしくね」

「うん、よろしく頼むよ。椿」

 やっと、仲間が増えた。

 榎は今までとは違う、戦いの可能性を想像して、気持ちを引き締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。よろしかったらクリックお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルも参加中。
目次ページ下部のバナーをクリックしていただけると嬉しいのですよ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ