第十四章 春姫進化 14
十四
長い直線の通路を抜けた先は、今まで見てきた中で、一番広い空間に繋がっていた。
広場の最奥には、物見櫓みたいな背の高い木造の建物が建っている。
その櫓の足元に、悪鬼が立っていた。悪鬼は悍ましい笑みを浮かべて、椿たちに視線を向けた。
「予想外だったな。見事に、四季姫を我等の住家まで引っ張りこんでくるとは。無能な妖怪にしては、上出来だ」
四季姫や、逃げ出した小豆洗いには目もくれず、悪鬼は梓に向けて低い声をぶつけた。梓は身体を震わせて怯えていたが、勇気を振り絞って睨み返していた。
「朝月夜さま、宵月夜さま! お気を確かに!」
悪鬼との拮抗状態を崩し、八咫が鳴き喚いた。
八咫の視線の先。悪鬼の足元に、横たわる二人の人影が。
朝と、宵だった。
全身が切り裂かれ、酷い出血だ。翼は激しく乱れ、周囲にもがれた白黒の羽根が散らばっていた。
宵は、まだ動く余裕があるらしく、何とか起き上がろうと腕に力を込めていた。だが、朝は地面に顔を伏せたまま、微動だにしない。
背後から、楸の上擦った声が耳に入ってきた。椿は悲鳴さえ上げられず、愕然と変わり果てた二人の姿を見るだけで、精一杯だった。
「朝……ちゃん」
ようやく口をついて出た言葉も、震えて言葉になっていなかった。
絶望や悲しみよりも先に、怒りが込み上げてきた。
「よくも、朝ちゃんを!」
椿は戦闘体勢をとった。握っていた笛が、再び円月輪に姿を変える。
椿の両側で、榎たちも並んで武器を構えた。
「悪鬼は一体だけどす。全員でかかれば、勝てへん相手ではありまへん!」
「行くぞ、みんな! 即効でケリを付ける!」
榎の合図で、椿たちは足に力を込めた。
悪鬼は、何を考えているか分からない表情で、じっと椿たちを見ていた。まるで品定めでもするかのような、不愉快な視線だった。
やがて、悪鬼が眼球のない黒い目を、細める。
直後。榎が突然、地面に膝をついて呻きだした。
「何だ、頭が、割れそうだ……」
「えのちゃん、大丈夫!?」
「榎はん、どないしましたんや!」
「こないなときに……。しっかりせんかい!」
突然の出来事に、何が起こったのか分からない。椿たちは慌てて榎に駆け寄るが、榎は頭を抱えて蹲るばかりだ。
地面に突き刺して支えにしていた、榎の武器である白銀の剣が、緑色の不気味な光を放っていた。ずっと剣を覆っていた奇妙な苔みたいなものが、さらに増殖している気がする。
この剣が、榎に異常をもたらす原因なのだろうか。だが、榎が使用する大切な武器だ。安易に引き離せない。
どうすればいいか分からず、椿たちが戸惑っていると、急に悪鬼が大声で笑いはじめた。
「共鳴している。我等の魂と! 見付けたぞ、我等が長の魂の断片!」
何を言っているのか、椿にはよく分からなかった。楸と柊も、眉をひそめて困惑した表情を浮かべている。
「そちらにおられましたか。すぐに、お救い致しますぞ!」
悪鬼の身体から、幾本もの黒い触手飛び出し、榎めがけて飛んできた。
柊が機転を利かせて、薙刀を振り翳す。触手を弾いて、榎を守った。
「こいつ、榎が狙いか!」
「夏姫には、指一本触れさせんどす!」
楸が弓を構え、狙いを定める。オートボウガンに変形した楸の武器から、大量の矢が一斉に放たれる。矢は的確に触手を撃ち抜き、背後の櫓の柱に磔にした。
妨害を受けた悪鬼は舌を打ち、苛立ちを見せながらも、柊と楸の攻撃を警戒していた。
「面倒な。こいつら、一筋縄ではいかぬ力を放っている」
二人の力が、悪鬼を倒すために有効な威力を秘めていると察したのだろう。真っ向から戦おうとはしなかった。
悪鬼は側に倒れていた朝の髪の毛を引っ張って、持ち上げた。だらりと項垂れた朝の身体が、宙に浮き上がる。
「ならば、また人質をとって流れを変えるまでよ!」
「いかん、朝月夜さまが……!」
悪鬼の卑劣な声も、八咫の悲鳴も、椿の耳には残らなかった。
椿は、円月輪を悪鬼に向かって投げつけた。回転する刃は悪鬼の手を直撃した。傷も与えられずに弾かれたが、その反動で悪鬼は朝の髪から手を離す。
悪鬼が油断した隙をついて、椿は朝の側に滑り込んだ。朝の傷だらけの身体を抱えこんで、悪鬼から庇った。
「朝ちゃんに、手を触れないで! もう、傷つけないで!」
「小癪な小娘が!」
椿に、殺気を込めた睨みを飛ばして来る。
だが、臆したりはしない。椿もまっすぐに、悪鬼を至近距離で睨みつけた。
「小豆洗いはん、さきほどの植物を使って、悪鬼の動きを封じれらまへんか?」
外野でも、楸が状況を改善しようと動いてくれていた。
小豆洗いは少し難色を示しながらも、大きく頷いた。
「少し、集中させてくれ。狙いを定める時間が必要だ」
「わかった。時間を稼ぐ」
小豆洗いの注文に応じて、榎が頭を押さえながら立ち上がった。
「榎はん、動いて平気どすか?」
「大丈夫だよ。椿たちには、絶対に手出しさせない!」
榎は剣を構える。楸と柊も、同時に武器を構えた。
「私たちが、悪鬼の動きを止めます。その隙に、お願いします!」
「頼むで、おっちゃん!」
小豆洗いに言い残し、三人は一斉に、悪鬼に攻撃をしかけた。
榎の剣撃が、跳ね返される。悪鬼は反撃しようとしていたが、榎の姿を見て一瞬、躊躇った。
その隙を見逃さず、柊が一撃を加える。威力は弱いが、悪鬼の肩に傷を追わせた。
だが、せっかく与えたダメージも、すぐに回復して傷が塞がってしまう。柊は舌打ちした。
「こないに狭い場所やと、安易に禁術が使えへんな」
会得した禁術を使えば、悪鬼に大打撃を与えられるはずだ。でも、思う存分暴れるためには、戦いの環境が悪い。狭すぎて満足に技を出せないし、制御ができないから皆を巻き込んでしまう。
「通常の攻撃で、圧すしかないどす」
楸は的確に矢を放ち、背後の木や地面に悪鬼の体を縫い付ける。確実に悪鬼の動きを封じていった。
身動きが取れなくなった悪鬼を、巨大な豆の葉が包み込む。隙間なく完全に覆われ、悪鬼の姿が見えなくなった。
「よっしゃ! 悪鬼を閉じ込めたで!」
「今のうちに、早う、お二人を助けんと!」
楸の声で、八咫が動いた。悪鬼の側から逃げようとしていた宵を引き摺って、楸の側に運んでいった。
「宵はん、しっかりしてください!」
楸が声をかけると、宵は弱々しい動作で、顔を上げた。
「俺より、朝が……。急所、やられて……」
宵も重傷だが、朝のほうが危険な状態だ。
座り込んだ椿は、朝の頭を膝に載せ、顔を覗き込んだ。
全身を走る、激しい切り傷。あまりの痛々しさに、見ている椿も苦しくなった。
さらに酷い怪我は、胸を突き刺した傷跡だ。朝の胴体の中心部を貫いていた。急所は外れているが、微かに伝わってくる心臓の鼓動が、とても弱々しい。
妖怪である朝は、人間よりも遥かに優れた自己再生能力を持っているはずだ。その力さえ機能しないほど、ダメージは大きく、朝は弱りきっていた。
放っておけば、間違いなく死ぬ。若しくは、悪鬼の血が暴走するかもしれない。
「お願い、死なないで」
椿は円月輪を笛に戻し、癒しの旋律を奏でた。力を込めた大きな音色が、辺りに響き渡る。
「まだ、何も伝えられていないの。椿の気持ちも、何もかも」
妖怪に、春姫の癒しの力がほとんど効力を示さない事実は、理解している。実際、朝の身体は癒しの音に包まれても、少し出血が止まったくらいで、傷口が塞がる気配もなかった。
だが、無駄だとわかっていても、何もせずにはいられない。
絶対に、死なせはしない。椿は笛の音に、ありったけの力を吹き込んだ。
「椿、ずっと力を使いっぱなしやろ。ぶっ倒れるで!」
乱れる音色に違和感を覚えた柊が、椿の限界に気付いた。
辞めさせようと声を掛けてくるが、椿に退く気はない。
「いいの。朝ちゃんが助かるなら、椿はどうなってもいいわ……!」
息継ぎをして、椿自身の意志をみんなに伝える。
椿の命を全て分け与える覚悟で、朝に音色を聞かせ続けた。
「駄目だよ椿! 冷静になって!」
青褪めた榎が、椿たちの側に駆け寄って来る。
直後。突然、地面が激しく振動をはじめた。
「何や、地震か?」
立ち止まって、倒れないようにバランスをとりながら、みんな警戒して足元に注意を払う。
「地脈が、動いておる? すぐ真下に来ておるぞ!」
八咫が慌てて、反射的に飛び上がった。さらに揺れが強くなる。
「地脈とは、地面の下を走る、自然のエネルギーの流れどすな。この辺りにも、支流があったんどすか?」
楸が宵を庇いながら、八咫に尋ねる。揺れの原因を詳しく知っているらしく、不思議そうな顔を浮かべていた。
「いや、悪鬼は地脈の力を好まぬ。流れがある場所に住み着いたりせぬし、ついさっきまで、何もなかったはずである」
「では、なぜ急に……?」
「おそらく、春姫が放つ笛の音の波動が、地面の下を振動させておるせいだ。地下で地割れが起きて、遠くにある地脈の流れが割れ目に染み込み、新しい支流を作り出そうとしておるのだ」
八咫が憶測を膨らませている間にも、揺れは激しさを増していく。
やがて、椿が座り込んでいる地面のすぐ側に、亀裂が入りはじめた。
ひび割れた地面の下から、勢いよく水が出てきた。水は噴水みたいに頭上高く噴き上がり、雨みたいに広場中に降り注いだ。
椿と朝は、激しい水の落下を受けて、ずぶ濡れになった。
不思議な水。温かくて、優しく身体を包んでくれる。
水の飛沫は、椿の笛の音と呼応して、激しく震えていた。
不思議な水は、すぐに目の前で大きな変化をもたらした。
「朝の傷が、消えていくぞ!」
榎の声に、椿も目を細めて朝を見る。致命傷とも言えた心臓を貫く大怪我が、みるみるうちに塞がっていく。血の気が引いて真っ青になっていた肌に、赤みが戻ってきた。
「宵はんの怪我も、一気に治っていくどす!」
遠くに視線を向けると、楸に抱き寄せられていた宵の身体から、全ての傷が消えていた。
まるで、奇跡だった。
この、突然湧き出てきた水の影響だ。この水の流れは、椿の能力と相性がいいらしい。春姫の陰陽師としての力を、何倍にも増幅してくれていた。
朝の身体から、傷がすっかり消えた。切り裂かれた服までもが、再生した。
ゆっくりと、朝が意識を取り戻して目を開く。
良かった。
椿の中に安堵の気持ちが広がった途端、一気に身体の力が抜けた。笛を掴む握力もなくなり、地面に落とす。
椿は朝の上に、倒れ込んだ。
「椿! しっかりしろ!」
榎の声が、凄く遠くに聞こえる。
「いけねえだよ! 地脈は、呼応する者の力を際限なく吸い取って増幅するんだ! 早く止めねえと、あの娘っ子、力尽きて死んじまうだよ!」
小豆洗いの裏返った声も、微かに聞こえた。その言葉に反応した榎たちが一斉に動き出す気配がする。
「地脈の流れを止めないと!」
「うちに任せとき! 〝氷柱の舞・直下氷結!〟」
柊の術が、炸裂する。地面が一気に凍り付き、亀裂を塞いだ。噴出していた水も氷になり、枯れ木みたいな形で固まった。飛び出した水の塊を、榎が切り落とした。塊は音を立てて崩れ、粉々になった。
激しかった音が、動きが止み、一気に静寂の空間に変化した。
「何とか、治まったな」
騒ぎが収束し、榎たちは安堵の息を吐いた。
「今のうちに、亀裂を塞いじまわねえとな。梓、やれるか」
小豆洗いは、使える全ての力を悪鬼に使用して、自由に動けない。大きな冒険をやり遂げて成長した娘を信頼して、大仕事を託した。
梓は嬉しそうに頷き、掌の豆を発芽させた。芽が地面を縫って進み、土の表面を解していく。亀裂のある場所を器用に土で埋め、大量の蔓で塞ぎながら固めていった。
体を濡らす水の影響が、幾分か和らいだ。だが、椿には指一本、動かす気力も残っていなかった。
途切れかける意識の中、誰かに抱き留められている感覚だけが、伝わってきた。
「椿さん、なぜ、僕なんかを生かすのですか……」
耳元で、朝の声がした。とてもぼんやりして、夢か現実か、分からないくらいだった。
「僕は、役立たずです。助けてもらっても、あなたに何もしてあげられない」
震える声だった。朝は椿を抱きしめて、泣いていた。
ひたすら、何もできないと、嘆いていた。
「側にも、いてくれないの……?」
椿はやっとの思いで口を開き、消え入りそうなか細い声を掛けた。
その声に反応して、朝の体が震える。振動が、椿にも伝わってきた。
「生きて、椿の側にいてくれるだけで、いいの」
多くを望んだせいで、遠くに行ってしまうなら。
もう、存在以外、何も望まない。
失って、ようやく気付いた。本当に大切な人が、一緒にいてくれる有り難さを。幸せの意味を。
やっと、椿の心からの気持ちを、伝えられた。
満足だった。椿はゆっくりと、目を閉じた。意識が、底のない泥沼に落ちていく感覚がした。
朝が、椿の動かない手を、強く握りしめてくれた。とても、温かかった。
「あなたに戴いた命、お返しします。僕の器には、入りきりません」
耳元で、朝の囁く声が聞こえる。
同時に、唇を柔らかい感触が包み込んだ。口の中に、何か強い力が流れ込んでくる。
優しく、温かい力だ。さっきの不思議な水にも似ている。
力が、疲弊しきった体中に流れ込み、滲みわたっていく。
沈みかかっていた意識が、呼び戻された。指が、腕が動く。
ゆっくりと、椿は目を開いた。すぐ目の前に、朝の顔があった。
優しく、微笑んでいた。
椿も自然と、微笑み返した。
「椿……。良かった。無事だった」
「ほんまに、心配させてくれるで」
首を傾けると、少し遠くで安堵の表情を浮かべる、榎たちの姿もあった。
無理をしすぎて、みんなを心配させたらしい。
謝らなくては。椿が朝の手を借りて、起き上がろうとした矢先。
「二人とも、すぐにその場から離れてください! 悪鬼が、出てきます」
楸の大声が、広場に響く。側にある、悪鬼を閉じ込めた巨大な豆の葉が、ボコボコと音を立てながら変形し始めていた。内側から、大きな衝撃が葉っぱをぶち破ろうと、もがいている。
「限界だで! 葉っぱが、引き千切られるだよ!」
小豆洗いの声と共に、葉っぱに大穴が開いた。勢いよく破れ、中から瘴気を纏った悪鬼が、再び解き放たれた。
「こんな下らぬ術ごときで、我の動きを阻めるとでも思っているのか!」
小豆洗いの技によって翻弄された悪鬼は、怒りを露にして怒鳴り散らした。
「我は悪鬼の中でも最強の力を持つ、頂点に立つ存在ぞ! たかが陰陽師どもに後れを取るほど、耄碌しておらんわ!」
全身から触手を伸ばし、頭上を覆う。触手は鋭い槍みたいな形になり、幾本も規則正しく並んで、地面に突き刺さった。
突き刺さった触手は、椿と朝を、榎たちのいる場所から分断する形で刺さっていた。まるで、檻に閉じ込められた状況に陥った。
「何だ、この柵は!」
「あかん、切り付けても、びくともせんで!」
榎たちが慌てて駆け寄り、椿たちを助けようと触手を攻撃するが、鉄よりも固い触手は、さっきと同じものとは思えないほど、頑丈になっていた。
悪鬼と一緒に、触手で作られた格子の中に閉じ込められた。現状を把握した瞬間、椿と朝は悪鬼に人質にされたのだと気付いた。
「四季姫ども! この小娘たちを助けたければ、武器を捨てろ。柵の中に、投げて寄越せ」
悪鬼は椿たちを餌に、榎たちに要求を始めた。宙を漂っていた別の触手が、刃物みたいに鋭くなって、椿の喉元に近付いてくる。朝が庇ってくれたが、どのみち逃れられそうにない。
「随分と、弱気やねんな。真っ当に戦う気はないんか。それとも、うちらみたいな小娘に、恐れをなしたんか?」
柊が憤りながら、悪鬼を挑発する。触手に少し、殺気が宿った。
「柊はん、あまり刺激してはいかんどす。椿はんたちの命がかかっておるどす」
楸が慌てて、柊を止めた。椿たちを助けるために、慎重になってくれていた。
このままの調子では、みんな、悪鬼の言いなりになって武器を手放しそうな勢いだ。
何とかしなくては。
椿はゆっくりと、立ち上がった。
「みんな、椿は大丈夫だから。こんな悪鬼に好き勝手させる必要はないわ!」
大声で、無事を伝える。榎たちよりも先に、悪鬼が反応して、触手を椿の喉元に向けてきた。
「弱い小娘が、何を粋がっている。知っているぞ、お前は四季姫の中で、最も弱いのだろう? ろくな力も持たぬくせに、どうやって我と戦うつもりだ?」
悪鬼は椿の立ち位置を把握した上で、挑発的に貶してきた。誰よりも弱い椿を、心底馬鹿にした態度だ。
椿は、何の反応も示さなかった。ただ黙って、微動だにせず、悪鬼を見つめた。
「その白烏の力など、当てにはならんぞ。悪鬼殺しなどという古臭い力は、最早悪鬼には通用しないのだからな!」
悪鬼は朝に視線を向け、さらに嘲笑った。余裕に満ち溢れた姿から、椿は目を離さなかった。
「力があるから強いなんて、勝手に決め付けないで。椿には、椿の戦い方があるんだから!」
笛を握る手が、だんだんと熱くなってくる。体中から、静かな力が込み上げてくる感覚がした。
椿の変化に、悪鬼も気付いた。興味深そうな視線を向けてきた。
「面白い。ならば、見せてもらおうか! 弱者の戦い方とやらをな!」
悪鬼が興奮した奇声を放った瞬間。
椿の体が、淡い桃色の光に包まれた。




