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四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~  作者: 幹谷セイ(せい。)
第一部 四季姫覚醒の巻
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第二章 伝記進展 4

 数日経った、夜中。

『榎ぃー!! ぐーすか寝ておる場合か! 起きよ、馬鹿者!』

 がっつりと眠りに落ちていた榎の頭の中に、突然、大声が響き渡った。

 声の主は、月麿だった。枕元に置いている、百合の花の形をした髪飾りから、神通力を飛ばしてくる。榎の脳内へ直接、声を送ってきていた。

 頭がキンキンして、痛い。榎は不愉快に思いながら、体を起こした。

「うるっさいなぁ。学校が始まって、疲れてんだから、真夜中に起こさないでよ……」

『近頃、まったく妖怪退治に来ぬではないか! たるんでおる! お主には夏姫としての自覚がないのか! 妖怪じゃ、妖怪を倒して強くなるのじゃ!』

 寝ぼけた口調で呟くと、月麿は大声でまくしたててきた。

 先週の土日も、学校と部活の疲れから、修業をすっぽかした。月麿の怒りも無理はない。

 でも、あらかじめ滅多に行けないと言ってあるのだから、激しく怒らなくてもいいのに。榎は不満を募らせた。

「ちょっと、あたしの話も聞いてよ……」

『一に妖怪、二に妖怪じゃ! 倒せったら倒すのじゃー!』

「ちっくしょー。話が噛み合わない。一方的に言ってくるだけなんて、腹が立つなぁ。電話みたいに会話ができればいいのに」

 交信には、陰陽師の持つ神通力が必要で、いつも、連絡をよこしてくる月麿がひたすら、しやべりまくっているだけだった。まだまだ、ひよっこの榎には、遠くにいる相手に言葉を飛ばすなんて芸当は、高度すぎて無理だった。

『聞いておるのか榎! 聞いておるなら、とっとと支度して出てこい!』

「あーもう、 うるさいぞ! 麿の馬鹿!」

 伝わらないと分かっていても、苛立って、声をあげずにはいられなかった。

『ば、馬鹿とは無礼な……! って、おひょ? 榎の声が聞こえたでおじゃる。気のせいでおじゃるか?』

「気のせいじゃないよ。確かに馬鹿って言った。ひょっとして、あたしの声、聞こえたの!?」

 榎の心からの罵倒ばとうが、月麿に伝わった。榎は驚くと同時に、目が覚めるほど喜んだ。

「麿にあたしの声が届いたなら、あたしにも神通力が使えたんだね? すげー、なんだかんだであたし、成長してるじゃん!」

『なんと、いつの間にか神通力で会話ができるほど、成長しておったとは。予想以上に力がついておるみたいじゃのう』

 月麿も驚いた様子で、感心した口調だった。

「へぇ~。あたし、結構すごいんだね。だったら、少しくらい修業を休んだって余裕だよね。ってわけで、おやすみ~」

 榎は再び横になり、布団を頭から被った。

『こりゃ榎! 怠けていてはいかん! 強くなるための鍛錬をおこたっては、いつまでたっても真の四季姫として――』

 しつこく文句を飛ばしてくる月麿の声を、榎はわずらわしく思った。

 交信を切りたい、と念じると、プツンと月麿の声が途中で切れて、聞こえなくなった。

「おお、こっちから回線、切れるんだ。便利になったなー。流石は、あたしだ」

 夏姫としての成長に満足しつつ、榎は再び、朝まで眠りについた。

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