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四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~  作者: 幹谷セイ(せい。)
第一部 四季姫覚醒の巻
111/331

八章Interval~命懸けの戦い~

 朝。

 綴は浅い眠りの中で、夢幻の世界に落ちていた。

 榎が挑む、四季姫としての大きな使命。

 今、夢の中で、榎は戦っていた。

 凶暴な攻撃を仕掛ける、獰猛な秋姫の姿。必死で攻撃を受け止めながら、反撃の機会を窺う、夏姫の懸命な姿。

 客観的に見ているだけでも、明らかに残酷な結果が見えた。

 榎は勝てない。あまりにも、力の差がありすぎる。

 秋姫は強すぎる。当然だ。秋姫は、強くあるために、あの姿で存在している。

 だが、榎に向けていい力ではない。榎を潰すための力では、決してないはずだ。

 分かっていても、今の秋姫を止められるものなど、誰もいない。

 綴はうなされていた。今、現実に起こっている出来事が、悪夢として綴を襲い、蝕んでいる。

 夏姫の髪飾りが、破壊された。

 あの髪飾りがなければ、榎は夏姫の力を操れない。

 負ける。

 負けるだけでは済まない。無抵抗となった榎を、最早、秋姫は逃さない。

 自然と、綴の腕に力が篭った。

 綴は、遠くにいる誰かの〝今〟を、夢に見る。

 普段はただ傍観するだけだが、必要なときには干渉もできる。

 夢と現の境界を破壊し、現実世界を歪める力を持っている。

 本来なら、使ってはならない禁忌の力だ。

 余程の危機でも訪れない限りは。

 だが、今が綴にとってはその時だった。

 あの少女を――榎を救うためならば、躊躇う必要などない。

 綴は夢の奥へと念を送り、現実へと干渉した。

 榎が心の内から放とうとする、秘めた力の解放に、助力を加える。

 榎の力を封じる扉が、開いた。

 周囲に分散していた、夏の力が、榎の下へと一斉に集中していく。

「大丈夫だ、君の力に、限界はない――」

 吐き出す息と一緒に、声にならない言葉を吐いた。

 直後。

 榎は制御なく、再び夏姫の力を手に入れた。

 綴の中に、安堵が広がる。

 同時に、綴は激しく咳き込んだ。

 肺が壊れそうなほど、器官の中で何かが暴れる。

 その衝撃と反動で、綴は飛び起きた。

 咳はしばらく続き、綴は呼吸もままならない状況で、水中で溺れた感覚にも似た苦しみに耐えた。

 やがて治まった。ナースコールを押すほど、限界には達しなかった。

 影響は小さい。安心した。

「また、寿命が縮んだかな……」

 夢の中から現実に干渉する力は、使用者の命を削る。

 ただでさえ、長くない命だろうに。奏に知れたら、また大目玉を食らう。

 だが、かけがえのないものを守ったのだから。今まで、持っていても何の意味も見出せなかった命だ。

 一年や二年、消え去ったところで何の後悔もない。

 綴は、心から満足していた。

 夢から覚めてしまったから、榎の戦いの決着は、分からない。

 だが、確実に分かっていた。

 必ず、勝利を手にしていると。

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