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エレメント・フォース  作者: 雨空花火/サプリメント
三幕『黒き異空の使者』
19/60

『炎帝の魔法講座。そして出現』



「うわぁ……」


詠真が発した詠嘆的な声が壁や床を反響し、百メートルはあろう高い天井へ吸い込まれていく。

ここは、バーチャルルーム。

『神殿の柱』の二十階から三十階をぶち抜いた、円形の柱の中でありながらキューブ状の構造になっている。

縦幅共に百メートルと少し。床と壁の境目すらわからないほど精白な空間で、何れだけ目を凝らしても汚れを見つける事は叶わない。

現実離れした、殊更非現実感漂うこの空間には、二人の男が居た。

景色に紛れ込んでしまう様な純白の学ランを着た線の細い少年、木葉詠真。

それとは対照的な、紅蓮の炎に袖を通したが如く真っ赤な装いの"炎帝"と呼ばれる青年。

"炎帝"が強く鼻を鳴らして、不機嫌を露わにする。


「聖皇様に感謝し続ける事だ。わざわざ『宮殿』に頼み込んでまで、この場所を確保してくれたんだからな」


そう言って"炎帝"が視線を上げる。壁をなぞっておよそ五十メートル程の所には、ガラス張りの中程度の窓があった。

そこからバーチャルルームを覗くのは、ソフィア、舞川鈴奈、サフィールの三人に加え、"炎帝"と共に聖皇の護衛任務に就いている二名の男の魔法使い。

ジジと一瞬ノイズが鳴った後、ソフィアの優美な声がバーチャルルームに響く。


『"炎帝"、いえ、フェルド・シュトライト。貴方からの強い希望により、この場をお任せする事にはしましたが、くれぐれも方向を違えぬ様にお願いしますよ』


炎帝、もといフェルド・シュトライトはその場で片膝をつき、「ご心配なく。この炎帝にお任せください」と自信に満ちながらも落ち着きを払った声で言うと、立ち上がって詠真を半眼で睨む。

詠真は大きく息を吐くと、何かを始める前に聞いておきたい疑問を投げる。


「えっと、"炎帝"」


「フェルドでいい」


「んじゃフェルド、なんでそんなに俺を敵視してんだ?」


フェルドは鼻を鳴らし、


「自宅に少女を二人も連れ込む穢れた輩を敵としないでなんとする」


吐き捨てる様に言った。

弁解しようー事実を話そうーとする詠真だが、フェルドは聞く耳を持たない。どうやら彼方の意思は固いらしい。

話そうとするだけ無駄だと悟った詠真は嘆息して、話を切り替える。


「まぁとりあえずバトルに関してはいいよ。でも魔法についても教えろよ」


「無論、そこは承知している。お前は魔法についてどこまで知っている?」


「詠真でいいよ」


そう言ってから、詠真は思い起こす。

魔法については、鈴奈が偶に説明をしてくれていた。

魔法を使うには、先祖から受け継いだ血統が必要である事。

魔法は、僅かに出来ない事もあるが、限りなく"何でも出来る"という事。

そして、魔法を使用するには、魔法陣で設計図を作り、その設計図を元に、魔力という魔法使いが持つ独自のエネルギーで骨と肉をつけ、詠唱を以って魔法を具象化するという事。

それらをフェルドに伝えると、予想外にもフェルドは感嘆の声を出した。


「鈴奈の事だ、面倒がってろくに説明していないと思ったが、基本的な所はある程度知っているようだな」


『軽く馬鹿にしたでしょ』


声を拾って聞いている鈴奈の不機嫌な声が響く。

詠真にはフェルドが一瞬狼狽しかけた様にも見えたが、彼は聞こえないフリをして話を続ける。


「そうだな、では魔法使いの歴史について少し話そうか」


「あぁ、確か千年前から居るんだろ、魔法使いって」


「……と、言われている。厳密には、魔法使いの起源は分かっていない。なにせ、文献の類いが一切合切残っていないのだからな」


魔法使いの起源は不明。それはアーロン・サナトエルも同じ事を言っていた。

魔法に限らず、この世界に存在する三つの異能全ての起源は明確ではない、と。

フェルドは腕を組む。


「歴史と言っても、伝え聞く話だけだがな。魔法使いは千年前より、東国の異能集団『陰陽師』と激しく争い、現在は日常の水面下で争いが続いている」


「それでよく存在を秘匿し続けられたな」


「貴様ら超能力者とは規模が違う。現状、百万人と推定される貴様らに比べ、魔法使いは千人に少し届かない程しか数が存在しないのだ。カトリック教会の祖は魔法使いだと聞くが、実際に魔法使いとしての力を持つ者はほんの一握り。現在に至ってもな」


そう言えば、聖皇国ルーンの表の名はバチカン市国だったなと詠真は思い出す。確かあの国の人口は千人も居なかったはずだ。つまり、今更ではあるが、あの国には魔法使いのみが居住してるのか。

その問いにフェルドが補足する。


「全員が全員居住している訳ではない。大半がローマ市内に住み、ルーン国内に居住しているのは十数人程だな」


俺たち魔法使いは、とフェルドが続ける。


「存在を秘匿してはいるが、その存在を知っている奴もいる。イタリア政府とローマ法王だ。聖皇国ルーン、もといバチカン市国は元々はイタリアだ。その中から領土を区切る際に、イタリア政府には存在を明かしたのだろう。その時に政府から、ルーンの表向きの顔して連れてきたのが、いわゆるローマ法王だ」


「なるほどねぇ。ご先祖様はそんなに自分達の国が欲しかったのか」


「下衆い言い方をするな。……我々魔法使いは、力を"持つ者"と力を"持たざる者"の差別が極端に大きい。詰まる所、異能を持たない普通の人間は"下位種族"と捉えている。故に、"下位種族"とは別離した場所を欲したのだろうさ」


「つまり、自分達だけの国が欲しかった。同じ事じゃん」


フェルドは言い返せなくなり、「……そうだな」と渋々認める。

ゴホンと咳払いをし、話を少し戻すとフェルドは言う。


「先ほど、ルーン国内に居住しているのは十数人程だと言ったろ」


「言ったな。その十数人ってのは、何か特別な魔法使いなのか?」


「特別、と言えるだろう。まず一人は、聖皇様だ。そして、八眷属と呼ばれる八人の魔法使いがいる」


「八眷属……?」


聞き覚えのない仰々しい名前を反復した詠真に、フェルドは己の顔を指差した。


「俺が聖皇様に何て呼ばれてたか覚えているだろう」


「えっと、あぁ、"炎帝"か?」


「そうだ。八眷属というのは、聖皇様に仕える八人の魔法使いの事だ。もっと簡単に言うと、聖皇様を除いた約千人の魔法使いの中で、最も強力な八人と言って過言はないだろう。そして八眷属はそれぞれ、己が属性と"帝"の称号を冠している」


つまり、と詠真は合点する。


「"炎帝"ってのは八眷属である証の称号で、フェルドはその八眷属の一人って事か」


「いかにも。後で説明するが、"炎帝"である俺は火属性を得意としている」


ん? と詠真は首を傾げる。

ーー確か、似たような事を何処かで。

数十秒唸った所、ハッと思い出した。

初めて舞川鈴奈と出会った時、突然家に押しかけてきた時の事だ。その帰り際に、鈴奈はこんな事を言っていた。


『だって私は氷魔法を得意とする"氷帝"の異名を持つ魔法使いだもの』


あの言葉は八眷属の事を指していたのだ。詠真が分からなかったのも当然至極の事ではあるが、まさか彼女が千人の頂点に立つ八人の一人だったとは。

確かに凄い強い魔法使いだな、とは詠真も感じていたが、改めてわかりやすい指標を示されるとその凄さがより一層増す様に思えた。

詠真は上のガラス窓に一瞬目をやりながらも、フェルドに視線を戻して言う。


「"炎帝"に"氷帝"か。なら後六人はなんて言う名前なんだ?」


「"水帝"、"地帝"、"風帝"、"光帝"、"闇帝(あんてい)"、"無帝(むてい)"、これらを総称して八眷属だ。聖皇様と八眷属、それ以外の魔法使いは上位魔法使いと下位魔法使いに分けられる。ルーンに居住している残りの数人は、上位魔法使いの中から日によって変わる」


なるほどねぇと詠真が感嘆した所で、フェルドは話を歴史や魔法使いの事から、魔法についての事に切り替える。


「魔法。まず、貴様も知っている基本的な事からおさらいしてやろう」


断固として、自分の事を名前で呼ばない頑固さに苦笑を漏らした詠真は、ツッコまずに黙って聞き手に専念する。

フェルドはだぼっとした赤外套の袖裾から細い腕を覗かせると、右手を詠真に翳した。


「まずは魔法陣」


掌から十センチ程離れた場所に、掌を中心とした、奇怪な文字が羅列した複雑な模様の赤い円が展開する。

魔法の設計図と言われる魔法陣である。


「そして、魔力。と言っても、貴様に魔力は見えないだろうがな」


詠真はムッとして目を凝らした。

確かに何も見えない。だが、何か見えない力の流れが魔法陣に注がれているイメージだけは薄っすらと感じ取る事が出来た。

フェルドが聞こえない程度の小さな感嘆を漏らす。


「最後に詠唱だ。言霊とも言う。魔法によって詠唱文の長さはマチマチだが、強力な魔法になるほど長くなる。詠唱の長さと魔法の威力は比例するんだ。まぁこれは基礎的な魔法だからな、一言で十分だ。ーー燃えよ、『(ファイヤ)』」


魔法陣が少し強く輝き、サッカーボール程の火の玉が詠真の頬を掠めた。


「あっつ!!」


まさか本当に放つとは思わなかったため反応する事が出来なかった。

フェルドはニヤリと笑う。


「直撃しなかっただけマシと思え」


「テメェ……まぁいい、次は躱す。早く続きを話せよ」


「強がるなよ」


フェルドは面白くなさそうに鼻を鳴らし、


「魔法に属性と言う物がある。属性ごとに魔法陣の色も変わり、今放ったのは見ての通り火属性だ」


属性に関しては詠真自身も知識はあった。あくまで超能力的な方面でだが、『四大元素』は四属性を持つ超能力と言っておかしくはないだろう。

実際、『四大元素』は『書庫(アーカイブ)』に万能型属性系超能力として分類されている。

フェルドは八眷属と照らして説明する。


「まず、"炎帝"、"水帝"、"地帝"、"風帝"、"氷帝"は分かり易いだろう。少し特殊なのが、"光帝"、"闇帝"、"無帝"だな。この三つも、頭文字が光、闇、無属性を表している」


フェルドは右腕を横に伸ばした。

掌に白い魔法陣が展開、


「ーー()せよ、『光槍(ライトランス)』」


光が収束し、白く輝く一本の槍が形成された。

フェルドが光槍を軽く振って見せた後、槍は光の粒子となって消えていく。


「光属性とは、光を特殊物質化させたり、レーザーに似た光の収束砲を撃ち出す事を基本的な戦術とする属性だ。次に……」


フェルドの足元に紫色の魔法陣が浮かび上がり、パチンと指を鳴らした。

瞬間。

詠真の視界は完全な闇に包まれた。

目が慣れるという現象は無く、ただただ闇のみが視界を支配する。

闇の中で、パチンと軽快な音が響く。

瞬間。

視界を支配していた闇は嘘の様に掻き消え、非現実感漂う精白な空間が戻る。


「今のが、光とは相反的な闇を操る闇属性だ。光を奪い、影を操り、闇を特殊物質化する事が出来る。そしてーー」


詠真に向けて翳したフェルドの掌に黒い魔法陣が展開した。

また攻撃してる気かと思い構えたが、その必要はなかった。

黒い魔法陣からは細い柄が出現し、フェルドがもう一方の手で柄を引き抜く。


「これが無属性だ」


フェルドの手にあるのは、特に装飾のなされていない簡素な黒い剣だ。

詠真は既視感があった。

アーロン・サナトエルが使用していた無数の武器を撃ち出す魔法、鈴奈曰く魔法金属生成の魔法であるアレは、巨大な黒い魔法陣から放たれていた。

つまりアレは無属性であり、


「魔法金属の生成……か」


「ご明察。確か鈴奈の報告にあったな、アーロン・サナトエルが使用していた魔法の事が。まぁ分かってるなら話は早い。無と言っても属性がない訳ではなく、無が属性なんだ。無属性が行えるのは、魔法金属生成魔法のみだ」


フェルドは生成した剣を消すと、右手の指を全て立てた。


「この八属性に加えて、ソニックムーブなどが使える音属性、電気や磁力を自在に扱う雷属性、空間制御、簡単に言えば結界魔法を張れる空属性、時間を司る時属性、身体強化や治癒、回復魔法が行える補助属性の五つがある。現在判明しているのはこの十三属性だ」


「判明って事は、他にも属性があるかもしれないってことか?」


フェルドは静かに頷く。


「魔法は一部を除いて何でも出来る。故に、属性にも縛りはないと思われている。その例として、アーロン・サナトエルだ。奴は不可能とされていた空間転移魔法を組み上げると共に、銀の魔法陣を展開したらしいな。十三属性の中に銀の魔法陣を持つ属性はない。つまり、空間転移魔法とは未知の属性によって作り上げられた魔法になる」


詠真は何度か頷くと、ここまでの情報を頭の中で整理していく。それが終わったのを見計らい、フェルドが「一つ、面白い物を見せてやる」と言って詠真から少し距離を取った。


「魔法を発動するに際して、魔法陣の展開、魔力の注入、詠唱の三段階が必要なのはもう完全に理解しただろう」


そう言ってフェルドは詠真に掌を翳す。

詠真は即座に身構える。三段階のプロセスがある以上、発動の初動は視認出来るため、気を抜いていなければ十分に対処できる。

ーーはずだった。

フェルドがニヤリと笑い、突如詠真の前方三方向からサッカーボール大の火の玉が襲いかかった。


「なッ!?」


気は抜いていない。

だが、完全に不意をつかれた。

何故、と考える暇もなく、三つの火の玉は一気に距離を詰めてくる。

ダメだ、間に合わない。

直撃を覚悟した時。

三つの火の玉は一瞬にして凍りつき、ゴトンと音を立てて床に転がる。


『フェルド、流石にそれは狡いわよ』


鈴奈の声。

火の玉が氷結したのは鈴奈の魔法によるものか。詠真は情けない自分に嘆息しながら、先ほどの所業の詳細を尋ねた。


『あれは"破棄発動"よ』


答えたの鈴奈だ。


『"破棄発動"っていうのは、魔法陣展開と詠唱のプロセスを破棄して、魔力の使用だけで魔法を発動させる、言うなれば超高等技術ってとこね。今のところ、聖皇様と八眷属しか使えないけど』


「なるほど……じゃねぇ! フェルドお前、直撃寸前だったぞ!」


フェルドはニヤリと笑うだけで、特に反省した様子は無い様だ。

詠真は諦めて、話の続きを促した。

フェルドは退屈そうに首を横に振る。


「今ので俺の魔法講座は終了だ。このまま"本題"に行きたい所だが、何か質問があれば受け付けよう」


"本題"という言葉の意味に億劫さを感じながら、詠真は質問を投げかけた。


「じゃぁ、魔法の種類とか、フェルドや鈴奈が使える属性とか教えてくれよ」


「なぜ敵に手の内を明かさねばならない」


それは今更過ぎる。ツッコむ前に、鈴奈が質問に答える。


『魔法に明確な種類はないわ。魔法使いが各々で魔法を作り上げるもんだから、集計し切れないのよ。それと属性? 八眷属は一応十三属性全部を使えるけど』


「全部!? ……ってあぁ、確か得手不得手があるとかなんとか……」


「八眷属は確かに十三属性全部を使えるが、まともに使えるのは称号に冠する属性くらいだ」


『あんたは特にね。フェルドは火属性以外、下位並みの雑魚なのよ』


詠真は雑魚という言葉に、ニヤニヤした顔を浮かべてフェルドを見る。

フェルドは図星をつかれたため反論出来なかったが、それでも! と八眷属たる威厳を守ろうとする。


「火属性に関しては、聖皇様の次に名前が出るくらいだ!」


『一つ? 私は、氷属性と補助属性の二つですけど?』


「うぐッ! ……お前はチビの時から憎たらしいほどに負けず嫌いだな……」


どうやら鈴奈の負けず嫌いは長い歴史を持っているようだ。なんだかんだ言って炎帝と氷帝は仲が良いようで、それを詠真が口にすると、


『やめて。こんな奴より詠真やサフィールちゃんとの方がよっぽど仲良いわよ』


「そ、そんな……! うぐぐ……許すまじ、木葉詠真ァ!」


詠真は、フェルドが自分の事を敵視してくる理由が分かった様な気がした。


(こいつ、鈴奈と仲良くしてる俺の事が気に食わないのか……)


馬鹿馬鹿しい。そう一蹴してやってもよかったが、どうせなら見てみたい。八眷属の魔法を、この身で確かめてみたい。そんな思いが込み上げていた。

戦闘狂などではない、と信じたい。

詠真がこれから先に見据えているのは、アーロン・サナトエルとの接触、及びアーロンが持つ転移魔法の技術を手に入れ鈴奈やソフィアに組み上げてもらう。もしくは、アーロン・サナトエル本人と協力関係を結び、異世界へ旅立つ事。

そのためには、今よりもっと『強く』なる必要性を感じていた。

だから。


「フェルド」


「なんだ、虫ケラ」


「虫ケ……それはいい。俺の質問は終わりでいい。ーー"本題"に入ろうか」



☆☆☆☆



「はぁ……暑苦しい」


バーチャルルームを下方に望む別室、コントロールルームで鈴奈は辟易する。

部屋の室温ではなく、フェルドに対しての言葉だ。

ソフィアが諦めた様子で苦笑した。


「言っても聞かないでしょうし、今回は目を瞑りましょう。それに」


ソフィアはガラス窓越しに、下方で睨み合う二人を見る。青い十字架に映るのは木葉詠真という少年だ。

アーロン・サナトエルが仄めかした、瞳に十字架を持つ第三の人間。

本当にあの少年が自分と同じ、瞳に十字架を宿す者なのか。ソフィアはそれを確かめる事を最大の目的とし、此度の招待を甘んじて引き受けていた。

そして先日。彼の自宅にて、ソフィアは確かに見たのだ。木葉詠真の瞳の中に、赤い十字架が浮かび上がる瞬間を。

だがまだ弱い。


「"炎帝"との戦闘が、木葉詠真さんの"力"を引き出すキッカケになるかもしれませんから」


「"力"……ですか?」


鈴奈が聞き返すと、ソフィアは口元に人差し指を当てて微笑んだ。

静かに、というジェスチャー。

鈴奈は即座に理解する。

ここは『宮殿』の庭の中。つまり、彼らには聞かれたくない内容だと言う事だ。

物分りが良い眷属にソフィアは一つ頷くと、手元に設置されている端末のボタンに指をかけた。


「では、始めます」



☆☆☆☆



「さぁて、改竄偽装はネコにお任せ」



『神殿の柱』の何処かの階で複数のPCを操作するネコが、口角を吊り上げた。



☆☆☆☆



木葉詠真とフェルド・シュトライトの視界が、この白い空間がぐにゃりと捻れた。一瞬の立ちくらみ。その直後に見た景色は、百八十度様変わりしていた。

暗い。澄んだ空気に育てられた青草のにおいがする。ふと足元に視線を落とすと、案の定一面に青草が広がっていた。頭上には満天の星。ここは、夜の帳に包まれた広大な草原だと気付く。

ステージ名はナイトリー。そのまま、夜の草原という意味だ。


「こりゃすげぇな……」


詠真は屈み込んで青草を触ってみるが、本物と寸分の狂いがない感触。風こそ吹いていないが、本当に別の空間に飛ばされたような感覚だ。

これがバーチャルルーム。あらゆる仮想空間に即座にチェンジできる、天宮島の科学力の結晶とでも言える施設。

だが、それを堪能するために、バーチャルルームに居るのではない。

詠真は軽く屈伸を混じえて立ち上がると、暗闇に浮かぶ陰気な影と視線を交錯させた。


「勝敗はどう決める」


「コントロールルームの判断で、どちらかがダウンした時でいいだろう」


「……分かった」


一度目を閉じ、ゆっくりと目蓋を起こす。瞳は茶と緑、『地』と『風』だ。


「貴様を舐めている訳ではないが、"破棄発動"は使用しないでやろう」


「そりゃどうも!」


吐き捨てた詠真は、地面に両手をついた。そこから何かを引き抜くように腕を振り上げる。両手には鈍色の二剣。石をベースにした片手剣を二本生成した。

ダンッ! と強く地面を蹴り、二刀を右肩へ引き寄せ、草原を走る。

フェルドが軽く右腕を振るった。

その手には一本の剣が握られていた。暗闇で分かり辛いが、ルビーの如く紅い輝きを放っている流美な一品だ。

詠真は距離が詰まってきた所で、地面を強く蹴って飛びかかった。


「"破棄発動"しないって宣言したばかりだろ!」


二刀を袈裟斬りに振り下ろす。


「これは魔法ではない」


フェルドは紅い剣を逆袈裟に振るった。

三本の剣が激しくぶつかる。紅い剣が二本の石剣を弾き返した。

詠真は即座に『風』を利用して空中で翻ると、紅い剣を蹴って追撃を防ぎ、後方へ距離を取った。


「魔法じゃない……?」


似たような物を見た事がある。

鈴奈の持つ青い剣だ。あの剣について尋ねた事はないが、初めて出会った時は腰に吊るしており、それ以降は身に付けていない様子だった。だが、アーロン・サナトエルとの一戦では、先のフェルドと同じ様にいつの間に手に握っていた。

フェルド紅い剣を一振りして言う。


「八眷属は、それぞれ聖皇様から剣を授かっている。それは魔聖剣と呼ばれ、俺が持っているこの剣ーー『真紅蓮御剣(エリュテイアロータス)』もその一つ」


「てことはやっぱり、鈴奈の持ってる青い剣もそうなのか?」


「いかにも。あれは『氷薔薇乃剣(グラキエスロッサ)』という銘を持つ氷属性の魔聖剣だ」


「で、実の所、その魔聖剣ってはなんなんだ? ただの剣、でもないんだろ?」


「魔聖剣は魔法を使用する際の媒介とする事で、発動する魔法の威力や規模を飛躍的に上昇させてくれる代物だ。先程も言った通り魔法ではないが、聖皇様の魔力から生成されているため、魔力に変換して己の魔力内に収納する事も出来る。つまり、出し入れが一瞬で行えるという訳だ」


まぁ聖皇様の魔力と言えど自分以外の魔力を宿すのは心地の良いものでもないがな、とフェルドは付け足した。

なるほど、と詠真は合点。

鈴奈が出会い頭に剣を吊るしていたのは島に到着したばかりだったからで、その後は常識を考えて人の目から剣を隠していたという事だ。

ふと、詠真はもう一つ尋ねた。


「思い違いだったらいいんだけど、鈴奈の変身した狼と魔聖剣は関係あったりするのか……?」


魔聖剣は魔法発動の媒介とする物。故に剣を使って魔法を発動する事に不思議はないのだろうが、例の巨大な氷の狼に変身した魔法に関して、詠真は何か別物の雰囲気を感じていた。

フェルドは戦闘中の質問責めに嘆息したが、親切に答えを教えてくれる。


「関係大アリだ。ったく、これで最後だからな。貴様の言う狼とは、『氷薔薇乃剣』に封じ込まれた聖皇様の膨大かつ強大な魔力が顕現した、言わば魔力の塊だ。名を、魔聖獣『無慈悲氷狼(リモースレス・レド・ウォルフ)』と言う」


魔聖獣は『氷薔薇乃剣』だけではなく全ての魔聖剣に封されており、其々で形態も違ってくるがな、とフェルドは付け足し、


「その魔聖獣を己が身に纏い、極めて強大な力を行使する事ができる『封解顕現』という魔法だ」


「ほへぇ〜……すげぇな……」


「無論、強大な力にはリスクが付き纏う。聖皇様の魔力は俺たちとは比べ物にならない、こう言ってはなんだが、とても異質な魔力なんだ。その異質で膨大な塊を身に纏う事は、使用者の体に甚大な負荷をかける事になる。大袈裟ではなく、無事で居られる保証もない。まぁ、何処かの負けず嫌いは、一度ならず二度までも、しかも二度目は聖皇様の許可も取らず独断で発動したと来た。あいつの負けず嫌いは、いつか身を滅ぼしそうで冷や冷やする……」


「ははは……てか、何度も使えるんだな『封解顕現』ってのは」


「まぁそれも間違ってはいない。一度発動すると魔聖剣に込められた聖皇様の魔力が空になるから、再度充填してもらう必要はあるがな」


「なるほど。よく分かったよ」


そう言って、詠真は二刀を構えた。

質問タイムは終わり。ここからは戦闘にのみ集中する。

フェルドも『真紅蓮御剣』を軽く構え、「……来い」と呟いた。

詠真は地面を強く蹴る。同時に背中と足に竜巻を接続。驚異的な加速を以って、一気に肉薄する。

そのスピードに眉の一つも動かさないフェルドは、落ち着いて『真紅蓮御剣』を横薙ぎに振るう。

上から振り下ろした詠真の二刀は弾かれるが、即座に竜巻をブーストさせ身体を左に捻じり、遠心力を加えた左脚がフェルドの眉間を捉えた。


「甘いな」


フェルドの顔の左側に赤い魔法陣が展開。詠真の蹴りを受け止め、衝撃を完全に殺す。


「なッ……」


「魔法陣はガードに使えるんだよッ!」


フェルドは詠真が態勢を立て直すより先に蹴り飛ばすと、頭上に魔法陣を展開させる。色は赤、火属性の魔法が来る。


「ーー追え、『追尾炎球(フラマストーカー)』」


メラメラと燃えるサッカーボール大の炎球が五つ放たれ、詠真に一直線に迫る。

背中の竜巻を増幅。

急激な横移動で炎球を躱すと、更に急激な前方移動でフェルドに肉薄を試みる。

フェルドはニヤリと笑った。


「魔法の名前はよく聞くことだ」


直後、詠真は言葉の意味を知る。


「ぐぁッ!」


背中を襲う燃える熱さと衝撃に顔をしかめた。

フェルドが放った五つの炎球は、躱した後も追尾してきたのだ。

炎球は竜巻をものともせず、詠真の背中を焦がし、体は前のめりに吹き飛ばされる。その先にはフェルドが居る。


「容易いな、木葉詠真」


前方から更に炎球が迫る。

立て続けの直撃はマズイ。

詠真は痛みを意識から追いやり、前方の地面から岩壁を迫りあげた。

炎球は岩壁に阻まれ、詠真の体も岩壁に衝突する。痛みを感じている暇も惜しく、岩壁を蹴って後方上空へ退避。

二刀の石剣を放り捨て、両掌をフェルドの方向へ翳した。

茶の瞳が青色へ。


「属性には相性もあんだろ!」


掌から放たれたのは、水流を纏った竜巻だ。火属性は水属性に弱いはず。そう踏んだ詠真だったが、


「やはり甘い。思考が単純だな」


岩壁を破壊し巻き込んだ水流竜巻は、赤い魔法陣により防がれフェルドの斜め上へ軌道を逸らされた。

ーーガードされたか。

詠真のその思考自体、甘かった。


「ーー焼き尽くせ、『業火(インフェルノ)』」


ガードに使用された魔法陣が輝き、火炎が放射状に放たれた。

ガードに使用しても、魔法陣の展開が意味するのは魔法の発動。あくまで、ガードは応用的なものだと言う事だ。

見誤った詠真。だが少し慣れてきたのか、紙一重のタイミングで火炎放射を水流竜巻で相殺した。


「ほぉ……よく反応したな」


とは言っても、詠真は内心冷や冷やが止まらなかった。

ーーマズイ。

『風』の竜巻は魔法陣でガードされ、『火』を"炎帝"に使用するのは限りなく意味がないだろう。『地』の剣で『真紅蓮御剣』と剣戟を繰り広げても、斬り崩す事は容易くはない。『水』による対属性の相殺は効果があったが、『氷』は火属性と相性が悪そうな気もする。

やはり勝てる見込みはない。

平行線。いや、押されるのは自分だ。

このままでは勝てない。負けたからと言って何かペナルティを設けている訳ではないが、だからと言って負けるのも癪だった。

それにフェルドは『お前と俺、どちらが彼女に相応しい男なのか決めようじゃないか』と言っていた。

勝敗に関係なく、彼女ーー舞川鈴奈はフェルドの言葉に耳を貸すつもりもなさそうだが、殊更格好悪い所は見せられない。

男のプライド。それが負けを許さない。


「どうした、木葉詠真」


何か、勝つために何か。

思考して。辿り着くのはそれしかなかった。

『四大元素』の四つの力、その内の三つ、もしくは四つ全ての同時発動。奥の手と言える事はこれぐらいしか思いつかない。


(っても……必ず出来る保証はない)


現状、どう頑張っても二つ同時発動が限界。アーロン戦や戦争と言った、極限状態で無いと無理なのかもしれない。

しかし。


(なんて弱音も言ってらんねぇか)


背中に接続した四つの竜巻が増幅。

フェルドの周囲を旋回する様に、不規則に飛び回る。


「なんのつもりか知らんが、下手な小細工は通用しないぞ」


それは詠真も承知している。

だから早くやらなければならない。

三つ以上の同時発動を。


「『追尾炎球』」


五つの炎球が詠真を追尾する。

追尾速度を超える速度で移動する詠真の瞳が、緑を固定して、片目が赤、茶、青、茶と次々に色を変えていく。

その間は反撃する余裕が無い。

炎球の回避に五分の一、『四大元素』に五分の四の思考を割く。


「逃げ回るだけとは、舐められたものだ。貴様ーー死ぬぞ」


炎球が十個に増加。詠真は目を見開くが、思考領域は変えずに回避を試みる。

しかし。


「ぐッ……!」


一つの炎球が足を絡め取り、そこから立て続けに四つの炎球が、腕や背中を直撃し、詠真は地面に落下した。

純白の学ランは六割程度が焦げて黒くなり、額には嫌な汗が滲む。

ダメだ、このままではダメだ。思い出せ、あの感覚を思い出せ木葉詠真。

己を鼓舞し、ふらつきながらも立ち上がった。

その時、頭の中に声が響いた。

それは中性的で、冷たい声色だった。


『情けない』


その一言だけだった。

一体誰だ。

考えるより先に、詠真の中、そして外でそれは起こった。

フェルドは眉間にシワを寄せる。

原因は、詠真に起こった変化だ。

力の発動に際して変色していた瞳の色は両方共黒眼に戻り、黒髪の毛先が僅かに白く染まっている。

何より、木葉詠真の瞳の中には"赤い十字架"が浮かび上がっていた。

酷く既視感のある瞳。

色は違うが、己が主である聖皇ソフィア・ルル・ホーリーロードの瞳に刻まれている十字架と酷似していた。


(聖皇様と同じ瞳……それは、つまり……)


コントロールルームで、バーチャルルーム内の光景を端末の映像を通して見ていた鈴奈も同じ事を考えていた。


(瞳の十字架……それってもしかして……詠真も『世界の声を聞く者』だって言うの……?)


鈴奈がソフィアに視線を送ると、彼女は無言で小さく頷いた。

鈴奈は端末の映像に映る少年の姿を見つめる。


(『位相の狭間』で感じた雰囲気とは少し違うけど……詠真、君は一体……)


強力な魔法使い達の思惑など知る由もない渦中の少年、木葉詠真は沸き上がる力に拳を握りしめていた。

髪色の僅かな変化、及び瞳に浮かぶ十字架に詠真自身は気付いていない。

だが、一つだけ分かっていた。

ーー今なら、三つの同時発動が出来る。

それは確実に、だ。

明確な理由は分からないし、聞こえた声の主も分からない。

おそらく幻聴だろう。幻聴が聞こえる程の極限状態。いわゆる"ゾーン"に入った、詠真はそう判断した。

詠真も地面から大きさと質量を二倍にした岩剣を二本引き抜く。

ダランと垂らした二本の剣身に逆巻く水流が纏い、背中に四つの竜巻を接続。

三つの同時発動。それだけでなく、一つ一つの力も通常より強くなっている気がした。


「いいだろう」


フェルドが言った。


「それが貴様の本気というのなら、この一撃で幕を引こうか。ーー『真紅蓮御剣(エリュテイアロータス)』」


『真紅蓮御剣』が輝き、一瞬剣の輪郭がブレる。次の瞬間には、『真紅蓮御剣』は二本に数を増やしていた。

剣身に煌めく炎が纏わりつく。


詠真が起こす竜巻の風が、草原の青草をサラリと撫でた。

汗が引くような沈黙。


ーーそして動いた。


地を蹴った詠真は竜巻を増幅し、一気にフェルドへ肉薄する。大きく重い二刀の挙動を風で補助し、頭上から体重を乗せて力の限りに振り下ろした。

フェルドは二本の『真紅蓮御剣』をクロスさせて、それを受け止める。

轟音。衝撃。大きなエネルギーがぶつかり合い、水と超高温の炎に反応し爆発を起こそうと震え出す。

次の瞬間。


ーーギャオオオオオオオオオ!!!!


耳を(つんざ)く様な凶悪な絶叫。いや、咆哮と形容すべき大音響が、バーチャルルーム内に響き渡った。

突然の事態に詠真とフェルドは戦う手を止め、力を解除。

瞳の十字架は消え、僅かに白く染まっていた髪も黒に戻る。

『真紅蓮御剣』は一本に戻り、魔力に変換して己の魔力内に収容した。


「一体何だよ今の」


「聖皇様! 何事ですか!?」


返ってきたのはソフィアの無感情な声。


『……イレギュラーです。皆さん、一度柱の外へ出ましょう。答えはそこにあるでしょう』


バーチャルルームの仮想空間が解除。

二人は精白な空間から出ると、レッドカーペットの敷かれた廊下を走って、柱の中心を通るエレベーターへ。

すぐにソフィア達も合流し、一行はエレベーターで一階へ下りた。薄暗い鉄の空間に靴が床を叩く音が響き、花畑で躍り出た彼等が見たものはーー


「……なんですか、アレ……」


この世の終わりでも見たかの様な声でサフィールが呟いた。

彼らの視線の先、天宮島上空。

そこにはあり得ない光景があった。

蒼窮には黒い放射状のヒビ。比喩でも何でもなく、空にヒビが入っていた。

まるでガラスに鈍器を叩きつけた様な、起こりえる筈のない現象。

何が起こっているんだ。

息を飲む彼らの耳に、もう一度。


『ギャオオオオオオオオオ!!!!』


凶悪な咆哮。天宮島全土を震わせる様な凄まじい大音響。

そして。ヒビが砕け散った。

バリンッ! なんて音はしない。砕け散った破片もない。

だが、空の一部が砕け散り、黒い底の見えない穴が穿たれた。

もはや思考が追いつかない。

しかし。黒い穴から。


ーーそれは、現れた。


竜を彷彿とさせる三つの頭部。それを支える長く柔靭な首に、全身を覆う黒い表皮には幾つもの赤い輝線。背には禍々しい一対の黒翼を携え、太く強靭な二足と二腕、一尾を持つ、黒い化け物が姿を現した。

正確は大きさは分からないが、恐らく全長六十メートルはあるだろう、二足歩行型の黒い化け物。

それは正にーー黒竜だ。


「ッ!!?」


全員が言葉を失っていた。

夢。そう思うほどの非現実に反して、夢とは思えない程の現実的な恐怖。黒竜の咆哮に対して、足が竦む。

黒竜が咆哮を上げながら黒い穴から外へ飛び出すと、それに応じて黒い穴は修復する様に閉じられていく。

この世の生物とは到底思えない黒き竜は、幾度かけたたましい咆哮を響かせると、巨大で凶悪な黒翼が空気を叩き、遥か空の彼方へと飛び去っていった。

悪夢。現実。

現実に起こった悪夢。

なんと表現していいのだろうか。

それすらも分からない。

天宮島に住む全ての人間が言葉を失う沈黙の中、木葉詠真が目を見開き、口を震わせて、声を絞り出した。


「今のは……何なんだ……」


黒竜が飛び去った空を見つめ、ソフィアが淡々と、こう言った。


「あの黒い化け物……黒竜は、魔聖獣などではありませんでした。……私にも理解はできません」


しかし、そうソフィアは強く言った。


「黒竜は、再度戻ってくるでしょう。ーーこの島を破壊する為に……」


聖皇ソフィア・ルル・ホーリーロードは、静かに確信していた。

覚醒の兆しを見せた、木葉詠真の持つ『世界の声を聞く者』の力と、ソフィア・ルル・ホーリーロードの持つ『世界の声を聞く者』の力が共振し、起こりえるはずがない事が起こった。


ーー次元振動による空間の歪曲。


そして現れたあの黒竜。


あれはーーそう。

ーーこの世界の物ではない。


つまりそれは……ーー『異世界の証明』。



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