秘蔵の苺酒ですが、ま、まあ、そんなに言うなら、分けて差し上げなくも……ないですよ?
封印の紙を破り、瓶のふたを開ける。
今年も季節がやって参りましたね。
にやり。
「お。苺酒?」
背後から伸びた手が瓶を取り上げた。
ピンクがかった褐色がとろりと揺れ、形の崩れた苺が頼りなく中を漂う。
「ちょ、零れたらどうするんですか!」
私のとっておきなのに。
「飲ませて?」
悪びれずに甘えてみせるなんてズルいです。
仕方ないですね。
「ちょっとだけですよ? 今年はお酒にする前にあなたがたくさん食べてしまったんですから」