世にも不思議な劇団参上!(ニールの過去編その2)
遅くなりました。いろいろやることが重なり、編集作業にも時間がかかってしまいました。あと、表はニール君の目線で書かれているのである意味主人公といってもいいかもしれませんが、あくまで彼は第3者的に物事を見て行動するので、主人公体質ではありません!むしろ、そんな事を言われたら動揺し困惑するでしょう。
『おっと、団長がそろそろ町に入る準備をしろと言っている。にしても、なにかと周りのみんなに注意をするたびに、僕を引き合いにして言うのはやめてほしいよなぁ~。』とつぶやきながらも、周りのみんなと同じく準備を始めた。僕はまだお客に見せる技を持ってないのでビラ配りだけだけど、他のみんなは各々特技をもって客引きをしなきゃいけない。特技がないわけではないが、あくまでそれは【商売】に使うもので見世物ではない。「春夏冬の交渉術」…商品売買において、自らに有利に働く折衝技術。商業国家「サイカ」の商人でも数少ない「希少上級技能」である。まだまだスキルレベルが1なので、せいぜい、小銭程度の値引きか、おまけを付けてくれるぐらいだが、買い出しぐらいには役立つ技術です。もっとも、レベルを上げれば「洞察力」・「会話術」・「情報収集力」・「良質安価な資材調達」・「有能な人材確保」といった総合技術を身に付けることができる。だけど、僕はあくまで劇団員なんで、「演技演芸」を身に付けるのが先だし、正直、【商売】に力を入れようとも思っていないので、僕にとってはあまり役に立っていないのが現状です。
『団長や他のみんなは喜んでくれるけどね。』…なんとも言い様がない事だけど、だってこのスキルが僕を苦しめたものであり、僕を救ってくれたものでもあるから。中小規模の商店の三男坊に過ぎない少年が国でも数少ない技術持ちだったら、どうなるのかは想像できるよね…。やたらプライドだけ高い格上の商家の子に目を付けられる。もしくは後継者のいない目ざとい商家から、明白な政略結婚を押し付けられて来た。(もちろん、スキルの事は隠してはいたけど情報って奴はどこからか漏れてくるかわからないから。)商家の家で育った僕にとって、それは恵まれた才能かもしれないが、末っ子としては気まずいし。(兄姉の立場上)人の上っ面で内面を見通すことができる能力は気味悪がれる。(普通、人が寄ってこない)だから兄姉からも可愛がられることもなく、友達なんているはずもなかった。両親・兄姉と頭の悪い格上の子弟に対して「太鼓持ち」をすることだけが、自らの立場を守る行動となっていた。それは作り笑いの仮面を被り、心の中に澱を積み重ねていく様な行為だった。
(回想)…『あれから、もう一年たつんだよなぁ~。』…
そんな毎日に嫌気が差していて、だけどどうしようもない状況にますます落ち込んでいた1年前のある日、商店街の大通りを普段の喧騒とは違う、賑やかな鳴り物をかき鳴らして進む一団が町の内門から中央広場へ進行していった。『なんだろう?』遠目より眺めていた僕に、一団の一人が配っていたビラが風に飛ばされて顔にまとわりついた。「うわっ。」おもわず仰け反り慌ててビラを読んだ『移動劇団・「木漏れ日の庭先」一座!!「サイカ」に参上!明日5月14日より中央広場特設会場で各種イベント!6月11日までです。お見逃しなく!』と大々的に大文字で書かれていた。メインの演劇の題目はもちろんのこと、その合間合間で各種パフォーマンスが会場のあちこちで披露されるとかいてある。小国であっても「サイカ」は近隣諸国の「市場」を担っている国。この手の劇団は少なからずやってくることが多いが、これだけ見世物の多い劇団は珍しかった。なによりも、ビラを配っていた劇団員らしい人達が生き生きとした笑顔を見せていたのが印象的だった。『僕にはないものだよなぁ~。』と思いながらも気分転換にはなるはずだからと折を見て行くことに決めた。…この時、僕自身は気付いていなかったが数年ぶりに『心から笑っていた』そうだ。(たまたま、近くを通り掛かった筆頭使用人の話による)・・・(次回に続く)
ニール君は商人チートなんですが、彼自身はそのことには興味がありません。だから、才能の無駄と化しています。ゆえにある意味普通の人と代わりがありません。「春夏冬の交渉術」は珍しいですが、ある程度の商業都市には2~3人はいてもおかしくないです。しかし、ニール君には本人さえも気付いていない「潜在的特異技能」を持っているんですがここでは明らかにしません。ただそのおかげでチート級の能力を持っているですが、それに気付き使うことがあるかは今後の展開次第になるかと思います。