6 フェンリル=yamato46 ときどき山本五十六。
ダンジョンの一階で、天乃美空は妹と合流していた。
「おねえちゃんッ!!」
「ごめんってばーっ。遊んでたわけじゃないのよ? ちゃんとバフ撒いてたから、許して?」
「だめ。今日はアカデミーの入学式を見に行く約束してたよね!?」
「あっ、それだ! アカデミーの入学式……って、なんでだっけ? ……なんたら様が入学してくるから追っかけだっけ?」
「『ディア・カルディア』のストーリーモードの開始日だから! 主人公とライバルとヒロインが入学して来るから! ストーリー知らないの!?」
「いちおう、プレイしたはずなのよ?」
「やってなくても、話してたでしょーっ! 北斗くんに兵頭さん、つくもちゃんに仙花会長に……咲耶さまにアルヴィちゃん! はあーっ、みんなかわいくてヤバかったんだから」
「あー……なんか知ってる気がしなくもない?」
長髪を背中に流しながら、空を見ているウィザードの少女。
「はあ……そういやお姉ちゃんさ、なんでサングラスにマスクしてるの?」
「化粧するの忘れたし、いいかなって。スキルとかジョブ聞かれるのも、めんどいし」
ひとけのないフロアで、マスクとサングラスを外すとインベントリにしまう。
現れたのは、端正な顔立ちに色白な肌。凛々しい目つきがキラリと光る美少女だった。
「入学式にプレイヤーっていたの?」
「わかんない。ひとり、すっごい怪しいのは居たかなってぐらい」
妹は姉に向かって首を振っている。
「ふーん。あっ、アカデミーのジャージ着た元プレイヤー、みつけたよ」
「いつ!? どこで!?」
「さっき。そこで」
「お姉ちゃん! なんで捕まえて置かなかったの!?」
「えーっ、すぐ来いって鬼電されたから」
「プレイヤーネームは!? ……言わないか、さすがに」
「聞いた。けど、有名なプレイヤー……じゃなかったわね。だれだっけ? 絶対に敵に回しちゃいけないプレイヤーのなかでも、本当にヤバいプレイヤー」
妹の表情が引き締まる。
「たくさんいるうちの……ふたり。ひとりは『フェンリル』ってプレイヤーで、超攻撃的な近接職。『ザ・ワン』『ジークフリート』『剣聖』、すべてのタイトルを獲得した本当の意味で世界最強」
「へぇ……」
「女神をソロ討伐して真のエンディングを見た、ただひとりのプレイヤー。あの人の怖さは、なんていうか……執念。女神を殺すために、最も多くのNPCとプレイヤーを殺してる」
「聞いている限り、一番ヤバイやつがそいつなのよね」
「もう一人は『黒騎士』っていう重装備のスキルアタッカー。レイドボスやワールドボスでさえも単身で倒す火力とプレイヤースキルを持っていて、ボス戦や攻城戦で倒されたことのない『不死身の傭兵』って呼ばれてた。プレイヤーキラーギルドを、ひとりで崩壊させた伝説もあるぐらいのPVPの鬼かな」
「ふーん。プレイヤーネーム、もっかい教えて? NPCを殺したひと」
「フェンリル? yamato46。絶対だめだよ、近づいてもダメ。殺されるよ」
「……んーっ? 違うなあ。山本五十六って言ってたのよね」
「だれ――――!?!?!? 偽名かネタプレイヤーじゃない!?」
妹の驚き様に、姉は軽やかに笑っていた。
面白いと思ったら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!




