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31 なんじ深淵を覗くとき――――

 

 ボンボンボン!

 宝箱が湧いてくる。四つの宝箱が落ちてきたと思ったら、さらに追加で宝箱が降ってくる。

 ダン、ダンダダーン!

 もってけ泥棒! 豪快にふるまわれる宝箱の山。


「この瞬間が一番楽しいんだよな。うひゃひゃひゃっ」


「サンマボーイ、あなたから選ぶことを許します」


「そうだね。ヤマトから選ぶといいよ!」


「うむ。異論はない。すべて持っていっても構わないほどだ」


「それはいけない。どんなにキャリーをしても、宝箱は隣人に分け与えるべきなんだ。レアアイテムを手に入れるときには頑張りが報われるからな。よし、俺はこれだ!」


 二つ並んだ宝箱の組み合わせが四つ。それぞれ選び宝箱を開ける。


「オープン! ふぉおおおおおおお!」


「なんだ、あいつ。気色の悪い声をだして……むむっ?」


「わああーーーっ、なんだこれーーっ!」


「これはっ! ッフ、良いものだ」


 倒したボスは二体。サンマこと「ソーリアン・アビス」とウナギこと「アビス・イール」だった。

 どちらの名前にもアビスがついていることには理由がある。アビスとは深淵などを意味する言葉だ。「カルディア」ではアビスとよばれるマップが存在する。「海底神殿」と呼ばれるマップだ。海底神殿へは「アビス」と名のつくボスモンスターを倒したときに得られる特殊なアイテムを使わないと入場ができない。


「アビス・オーブが俺を深淵へと誘っている!?」


「いつにも増して触れにくい話題を出すでない。そういうお年頃か?」


「これだよ、これ。『アビス・オーブ』っていうアイテムだよ!」


「なんだ実在したのか。急になにかに目覚めたかと思ったではないか」


「ヤマト、ヤマト! 見てくれ、これはいいものだろうか?」


「うおおおおお!?!? ユニーク!? また落ちたのか!? これはウナギのユニークだな。はああ!? ……うっそだろ。移動速度と攻撃速度あがんの? ダブル良オプション付きのユニーク装備なのかよ。どんな運だよーーっ。うわあ、すげえ!! ちょっと落ち着いていい? 落ち着くわ。……はあ、はあ。よし! これは『竜鰻の靴』っていうウナギのドロップ品だ。絶対に装備したほうがいい。必要ステータスを見ると、レベル10ぐらいで装備できるようになる。移動速度と攻撃速度があがるからアルヴィ向きの装備だ。おめでとうっ!」


「そんなに良いものなのか!? やったっ、やった! ティルダ、うれしいっ!」


「おめでとうございます。お嬢様に喜んでいただけて嬉しく思います」


「ありがとーっ!」


 次に持ってくるのは咲耶だった。


「大和、これも見てもらえないだろうか」


「いいぞ。えっとな、サンマのアクセサリだな。はっ? ユニークじゃん。どうなってんのドロ運、高すぎ!? うおおおお、すげええ。まじかよ、このレベル帯でこんな効果出るの? 『体力持続回復』と『回避アップ』と『破壊』だ。攻守備えたアクセだな。破壊ってのは、盾とか鎧を壊しやすくなる。これつけてると鎧ぐらいなら斬れるぞ。神アクセすぎる」


 アクセサリには固定効果に加えてランダムでもう一つオプション効果がつくことがある。まさかこのレベル帯で「破壊」がつくとは。攻城戦では必須になる装備だ。


「……キサマ、ごほんっ。少年よ受け取れ」


「なんだ? うおおおい、秋刀魚じゃねえか。秋刀魚!? おおおお!? 秋刀魚手裏剣ーーーっ!?!? 欲しかった、ほしかったやつ……どうして!?」


 マティルダが、ドロップしたサンマからのユニーク武器を譲ってくれた。


「礼だサンマボーイ。あと、いつまでつけている?」


「つけてるって、なにが?」


「うわちゃーっ」


「あのな、大和。一度伝えようとしたんだぞ?」


「そういや、さっきなにか言ってたな」


「ヤーマトっ、頭に秋刀魚が刺さってるよ?」


「どういう日本語!?」


「むう、事実なのだ。頭に秋刀魚が刺さっておる」


「そんなことある!? あるわけ……あるんだよ!?」


 後頭部に触ると本当になにか刺さっている。引き抜くと秋刀魚手裏剣だった。


「はあーっ!? ……サンマと戦ってるときに頭にぶっささったのが、たまたまサンマのユニーク武器で取得扱いになったってこと!? こんなことあんのか!? 咲耶をかばって刺されてよかったーっ!」


「せめて違う喜び方をせぬか!?」


「わーっ、おめでとう! それって、ユニーク武器が二本揃ったってことだよね!?」


「アルヴィ、そのとおりだ。ということはー?」


「なるほど。レジェンダリーへの武器進化を狙って『合成』ができる。……いま、なんで私に渡したのだ!? ああっ、いま合成って言ってしまって……合体してしまうではないか!? ああ、ああーーーっ!?」


 話しながらも俺の秋刀魚手裏剣を受け取ってくれた咲耶だった。

 武器が魔力に変わり、光りながら形を変えようとする。

 頼む、成功してくれ。頼む。


「咲耶ーーーーーっ!!!! 結婚してーーーーっ!!!」


「どわあーーーっ!? 抱きつくなばかものっ! いきなり求婚するやつがおるか!? 段階を踏まぬか段階を!?」


 咲耶の手に握られた秋刀魚手裏剣はレジェンダリー武器である「フィッシュ・ダーツ」に進化した。


「あのお魚はなんだろうね?」


「ダツという魚です」


「ダーツ? あははっ、日本語のジョークだ! おもしろーいっ」


「対人戦で使えるんだよ、このダツ。俺はマジで嫌われてみせる」


 手裏剣カテゴリの武器は投げることを目的として作られている。魔力を通すとMPを消費して手裏剣が増える。これを投げることで攻撃することができる中距離武器だ。


 ダーツを腰に装備して魔力を流しながら触れるとダーツが増える。それを手に取り投げる。


――トスッ、パキンッ


 投げた地面が凍る。ダーツは冷気を帯びており、空中で凍ることで鋭さを増して刺さっていた。


――トス、トス、トス、トス、タタタタタンッ


 慣れた動きで手裏剣を投げ続けハートを描く。


「ビッグ・ラブ! 手裏剣いいねーっ! 最高ーっ!」


「器用すぎないか!?」


「すごい! 凍ったハートだ!」


「すぐに割れそうですね」


「氷属性なんだよ。戦士じゃ防げないかもしれない。氷属性の属性効果がスロウっていう動きにくくなる状態。しかも重複しちゃうんだよな。ダーツが二本あたれば6秒は足止めできる」


「……バカな。やって見なさい」


 ヤバさに気づいたマティルダが試す。当てなくてもいいので足元に向かって正確にダーツを放った。


「ック、そんな……これはっ!?」


「一本でスロウがはいって、二本目で時間延長される。慣れた盗賊職がこれを使えば妨害効果がデカいんだよ。俺は5メートル距離なら100パーセント当てられる。防いでもスロウだけ入るうえに、当て続ければ凍傷ダメージが入る。もちろん対策もあるから安心してくれ」


 まさか手に入るとは。咲耶を拝む。


「やめろ、拝むな。妙な信仰をつくるでない」


「ヤマトにもいいものが手に入ってよかったっ」


「うむ。謎の宝石しか出なかったら気まずいところだったな」


「そうだ。そのことなんだ。俺のたくらみにのらないか?」


 咲耶とアルヴィは同時にニヤリとした後、俺の誘いに頷いた。

 これを知ってしまったら、ふたりともダンジョンが楽しくて寝れなくなるぞ。



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