30 うなぎの底力
ボスの体力ゲージは半分以下になっていた。
ようやく体を起こしたウナギ。だらだらと全身から湧き出していた粘液がぴたりと止まり、体表が乾いていた。
「攻撃パターンが変わるぞ。魔法主体で組み立ててくる。『アイス』と『バブル・ボム』そして『スプラッシュ』だ」
マティルダに念のためポーションを手渡しながら言うと、ぐびっと飲み干していた。
「俺に任せろ。ヘイトを取る」
彼女はなにもいわない。ただ、俺の頭をワシャっと撫でると笑っていた。
マティルダが回りこむなら俺はウナギの正面に立つ。
すさまじい勢いで噛みついてくる。俺のいた場所の地面は岩ごと嚙み砕かれ小石が舞う。
――ヒュン
「ギイイイイイ」
小さく円を描いた刀がウナギを斬った。体表にダメージは通らないため口の中でやわらかい部分を切断する。
「ウナギの舌って食えんのかー?」
アビス・イールに向かって千切れた舌を振って見せる。怒ったボスモンスターは標的を俺に定めたらしい。
魔法の詠唱がはじまる。
魔法陣が俺の上に展開され、人間大ほどの魔法陣から速度のついた氷塊が落ちてくる。
――ドスン、パリンッ
体感温度が下がる。三つ落ちてくる氷塊をよけ、短い詠唱時間で放たれる魔法を警戒した。
アビス・イールは「スプラッシュ」を放ってきた。口の前から飛び出してくる水の奔流。細い水がすさまじい勢いで放たれる。金属の鎧をも貫通する威力のある一撃を避ける。
ふたたび「バブル・ボム」を詠唱するアビス・イール。
一瞬、マティルダに目配せした。
――チャンスをつくる。決めろ。
マティルダは満足げに頷く。
「バブル・ボム」が放たれる。泡が放たれる瞬間、泡が固まって存在している絶好の機会になる。
――――ボボボウンッ
すべての泡を誘爆させる唯一のタイミングで刀を投げた。自爆したアビス・イールは悲鳴を上げる。
「ギィオオオオオオオ」
――ズズーンッ
巨大な体を力なく地面に横たわらせる。倒れる前に近づいていた俺は、刀を拾うと一か所だけ切りつけた。
ウナギのエラであり唯一の急所だった。
これを見逃すマティルダじゃない。
「はああああああっ!!」
これが本来の「レオパルド」のスタイルなのだろう。
飾り気のないロングロードが二本。同時にスキルを放つようで剣が光をまとっている。
「クロス・エッジ! ダブル・スラスト! スラッシュ、パワースラッシュ! 消えろ、サザン・クロス!」
温存していたスキルをすべて使った攻撃はボスモンスターの体力を吹き飛ばす。スキルの間にも鮮やかな動きで剣を叩きこみ、ダメージを稼いでいた。
「……ッペ」
口のなかがまだ気持ち悪かったらしい。マティルダは最後にツバを吐き捨てていた。
「最悪です。モンスターの粘液を飲んでしまった。クソ。……まだ、キサマの唾液のほうが飲めますね? ッフ」
満足げに笑うマティルダに俺は固まっていた。頭を撫でられ足早に去られる。
「ティルダーーっ! かっこよかったー! ヤマトも、すごいよ。よく挑めたね」
「当然です。しかし、彼は称えられるべきだ。ひとりのメンバーとして、素晴らしい活躍をしてくれた」
「大和、やるではないか。ぬるぬるの上を走っていたときは目を疑ったぞ」
「ダンジョン内でだれもやらないようなことは任せろ。大抵できる」
「いらぬ自信だなあ……それに助けられたのは事実。魔法も多く見れた。避け方も参考になった。感謝するぞ」
「ヤマト、きみは最高だね! レベルなんて関係なく、きみはきみだ。すべての役割をこなせる最高の仲間だよ!」
「うむ。本当に感謝しておるよ。あなたと組めて、学ぶことばかりだ」
「そう言してもらえてありがたい。がんばったかいもあった……ところで、お待ちかねのお宝ターイムッ!」
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