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26 白鳥の湖とサンマ

 意気揚々と刀を振り回しながら魚群へと近づく。

 俺に気づいた魚群は一斉に集まりはじめ、時計回りに泳ぎながら巨大なボールとなった。


 巨大な塊から影が広がり、光が失われる。


「あ、あんなに広がるのか!?」


「よ、避けられないよ!?」


「よく見ておけ! 一気に全部が落ちてくるわけじゃない。バラバラに落ちてくるんだ!」


――トスッ


 地面に激突したとたんに絶命し、魔力となって消えていく。


――トスッ、トスッ


 雨の降り始めは上空を見上げてしまいたくなるほど静かにはじまる。


――トットット


 雨足が強くなり銀色の雨が降りしげる。

 命を捧げ特攻するソーリアン・ソードたちの影を縫うように動く。


――ザアアアアアアアアアアーーーーーッ


 すべてを飲み込むスコールのような雨が叩きつけられる。

 モンスターの大波を悠々と泳いでかいくぐる。


「しゃあーっ! ノーダメージ!」


「ぬお!? あれを避けきれるものなのか!?」


「すごーいっ! はいはい! 自分もやりたいぞーっ」


「よし、来いっ! アルヴィ!」


「やったーっ!」


 スキップをして近づいてくる勇敢なファイター。


「アルヴィ、もしかして見えてるか?」


「もちろんだよ。見えてる。うまく言えないけど落ちてくるときにパターンがあるように見えたよ。モンスターが落ちてきた場所が一瞬の安置になるから、そこを縫って動く。合ってるかな?」


「ゲナウ!(まさにその通り)」


「うん。大丈夫。ぜんぶ見える」


――どんな才能だよ。


 弓の中級スキルをすべて見えると言い切るアルヴィに鳥肌が立った。


「来るぞ!」


「まかせてーっ」


――トストスッ、トトトトッ


 リズムよく落ちてくるサンマを、小さな足幅で避けるアルヴィ。


――ザアアアアアアーーーーーーーーッ


 降りしきる大雨のなか涼し気な横顔は笑っている。


 長い髪をたなびかせ、想像もつかないほど自由に体を反らす。

 チャイコフスキーの名作、白鳥の湖の第二幕「白鳥たちの群舞」を思い出す。


――いかに魚が空を泳ごうと、自由に飛び回れる鳥を捕まえられるわけがない。


 気づくと俺は降りしきる大雨のなかで彼女を迎えに行く。


「俺と踊りませんか」


「ええ、よろこんで!」


 降りしきる雨の音は優雅なリズムとなり旋律を奏でる。

 アルヴィにつられて、俺も飛べる気がした。


 ひときわ重い音が響き、雨が止んだ。


『王子様に、見つかっちゃったね』


 いたずらな子供の笑顔でアルヴィはつぶやいていた。


「お、おお!? な、なんだいまのは!?」


「お嬢様、さすがです」


「避けれたよーっ! ヤマトがリードしてくれたんだーっ」


 アルヴィは満足げだった。




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