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22 殺戮の魔女「てへっ。やりすぎたわ」


「あ、あれに挑むというのか?」


「わ、わあーっ。で、でっかいねえ。スライムのお山だよー」


 ズシン。ズシン。

 跳ねて動くだけで地響きを起こす、山のような大きさのスライム。


 一本道を歩いていくと広場があり、そこに陣取っている。

 あれを倒さなければダンジョンから出ることはできなかった。


「あれを逃がして山狩りするとやっかいだな。……美空、頼めるか」


 へたに一撃を入れると分裂して逃げ回られて、スライム鬼ごっこがはじまる。


「もちろんよ。一撃で吹き飛ばしていいのね?」


「ああ、頼んだ」


 美空はウィザードの「メディエーション」という詠唱がはやくなるスキルを使ったあと自分にバフをかける。

 ペン回しみたいな手癖になっているのか、杖をくるりと回しながら「うーん」と唸っている。


「同時詠唱でメテオ二発かなー? うん、ストライク。『メテオ・ストライク』二発撃つから気をつけて。範囲は狭いけど揺れるわよ。24秒」


 きっちりと時間を述べる美空はすでに詠唱をはじめている。


 山のようなスライムの頭上には、二重になった青色の魔法陣が連なる。

 幾何学模様の魔法陣は、山のひとつも超えるほど大きい。


「メテオストライクが、あの大きさですか? 広範囲に小さな隕石を呼ぶメテオシャワーではなく、大型の隕石を呼び寄せるメテオストライク……シャワーなみの範囲がありそうです。それも、二発ですって?」


「そこはまだ解説してやれないな」


 美空は詠唱時間を短縮させるためDEXにステータスを振っているせいでINTの数値は多少削っている。

 しかし、装備にINTをあげるオプションをつけたり、杖に「魔法攻撃力」や「魔力使用量増加」というオプションを重ね合わせることで並みのINT特化ウィザードの威力を超えることが可能だ。


 汎用的な装備をしているように見えて、だいぶ厳選している。

 現状ではほぼ最高クラスの装備だろう。


 同じプレイヤーのなかでも、おそらくレベルも火力も技術もトップに君臨しているに違いない。

 こんなレベルのプレイヤーがごろごろしていたら世界は簡単に崩壊するし、ダンジョン50階のドラゴンも裸足で逃げ出すだろう。


「ダブルスペル・メテオストライク」


 透明な声で紡がれる、破壊の魔法。


 天空を我が物ととした魔法陣から光の柱が襲いかかる。

 空が裂ける。雲が霧散し、光の柱が地上を目指して振ってくる。

 燃え盛る星屑の輝きは儚く、一筋の光と化して地上を目指す。


 雷鳴のように響きわたる轟音。

 大地を揺らし、空気を振動させ風を巻き起こす。

 吹き上がる炎の奔流はすべてを飲み込んだ。


 一瞬、世界から色が消えたかのような光が起こる。


――ゴウウウウン


 ふたつめの光の柱が立ち昇る。

 大地を激しく揺さぶり、生命を試すかのような静寂をもたらした。


 生命の輝きを消し去った光は、すべての痕跡を消した。


 山のようなスライムは跡形もなく消し飛ぶ。

 魔力となって霧散した光だけが、深々とつけられた破壊の痕跡であるクレーターのうえを彷徨っていた。


 焦げ臭い大地のかおりだけが漂っていた。


「てへっ。ごっめーん。やりすぎたわ」


 破壊の権化をつくした魔法使いは「てへっ」と笑顔で反省する。


「一発でよかったわね。低レベルダンジョンだったの、忘れてた。さーてと、お宝、お宝ー!」


 スキップしながらダンジョンの最奥へとウィザードは進む。

 あまりの現実離れした光景に誰も動けなかった。


「ティルダは、知っていたのかい。魔法使いがこんなにも強力で……世界を変えてしまう力を持っていたことを」


「……存じ上げません。魔法使いではありません。彼女が、異様なまでに強いのです」


「これがアークウィザード? ……個人の力なのか。信じられぬ。目を疑う光景だ」


「いやあ、さすがに美空が強すぎる。魔法の威力に驚いてるだろうが、この距離から正確に当てる力もすごいんだ。ふつうのウィザードなら、フライで上空からスライムを魔法陣に目視で捉えたうえで詠唱する。美空は地上から同じことを正確にやってのける。これはさすがに、真似できない」


 元の世界で最強の魔法使いとして名を馳せたプレイヤーだけはある。

 攻城戦はもちろん対人戦でもある「ザ・プライド」や「バンガード」でも無類の強さを誇り、二つ名を獲得していた。

 彼女は「殺戮の魔女」と呼ばれた天才魔法使いだ。


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