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23 伝説のスライムビキニ


「ほら、報酬の宝箱がステージの真ん中に落ちてんだ。取りにいこうぜ!」


 咲耶とアルヴィの手を引いてステージの中央へとたどり着いた。

 隕石が落ちたせいで、すっかり歩きにくくなっている。


「どれがいいかな? どれがいいかなーっ。うふーっ、わたしの指輪はどーこっ? ここかなあーっ」


 人数分の宝箱がドロップしているなか、美空は宝箱に話しかけ続けていた。どれを選ぶかまだ決められていないらしい。


「選べなーいっ。大和はどれがいい?」


「そうだな。俺は真ん中にあるやつかな」


「よし、わたしそれにする!」


「おおい!?」


 幅が1メートルもある特大の宝箱はすべて金色に光っており、レア以上の装備が確定していた。ステージ4でのボーナスの効果だった。


「私たちも、もらっていいのだろうか」


「遠慮せずもらってくれ。ひとりひとつずつ、お待ちかねの報酬タイムだぞ。当たりは武器か防具だな」


「スライムのユニーク防具ってスライムビキニでしょー? 男性でも着れるやつ。オプションなについてたっけ?」


「スライム特攻だな。スライムへのダメージが伸びるし、スライムからのデバフ効果がなくなる。踏んでも滑らなかったり、スタンしなかったりな」


「微妙だけど持っていれば狩り装備になるのね。……んーっ、ビキニかあ。いらないかなーっ。大和が引いたら、その場で着てくれる?」


「おう、出たら着てやるよ。どうせ出ないけどな。ボスからのユニーク装備なんて百回開けて一個も出ないっての。みんな選んだな。それでいいか? よし、お宝タイムだ! 開けろあけろー!」


――ギイッ


 宝箱に触れると勝手に蓋が開く。

 なかのアイテムは魔力を帯び、光り輝いていた。


「アクセサリっ、きたーーーっ! スライムリングの紫ー! やった、やったーっ! これで詠唱がはやくなるーっ! 強化石も二つあるし、ラッキー! スライムブーツまであるわ。あと、ダンスマスター装備一式!? ダブったあーっ」


「自分も出たぞ! アクセサリ二つに、ダンスマスター装備一式にスライムの帽子だ。あと石がいっぱいはいってるぞ!」


「石も拾っておいてくれ。あとで武器の強化に使えるからな」


「大和、武器がでたぞ! これはもしや、いいやつではないだろうか?」


「は? 武器? うおおおお!? マジかよ!? ユニーク引いてる。すげえー!」


 スライムハンマーという先端にスライムのついた棒。

 あなどるなかれ。これはスライムだけでなく物質系の敵に対して特攻効果を持ち、狩りをはるかに楽にしてくれる。通常では入手できないユニーク武器はだてじゃない。


「咲耶ちゃんすごい! 周回するの、とっても楽になるのよ。あとは、スライムの狩場を積極的に選ぶといいわ。すっっごく当たり!」


「あれでスライムゴーレムを狩ると経験値おいしいんだよな」


「アクセサリの効果はわかりますか? 青色のリングです」


「青はスライム特攻だな。装着時にスライムへのダメージが上がる。赤色とかなら近接職はつけておくといい」


「赤色を持ってるぞー!」


「すっごい当たり! 攻撃力があがる。アクセサリで上げれるのはレアなんだ。運がいいな!」


 みんないいものが引けたようでよかった。ダンスマスタ―装備一式って、確定で出るんだな。


「よし、ダンジョンを出ようぜ」


 我ながら自分のことが怖い。とても自然に退出を促すことができた。

 頼む。だれも気づかないでくれ。


「なあ、大和の宝箱……光っておるぞ?」


「ほんとだ。蓋がしまったままなんだね」


 おのれ咲耶ーーーーっ!!!


 こうなれば強行突破だ。ダンジョンを出るポータルはすでに開放されている。あそこに飛び込めば!


「やーまとっ……開けよっか?」


 テレポート持ちのウィザードから逃げられると思った俺がバカでした。


「話をしよう。俺の宝箱は開かないみたいなんだ。運営に問い合わせなきゃ」


――パカッ、ピカーーッ


 運営という名の神様は俺の声なんてお見通しらしい。

 なんと宝箱が勝手に開いてしまった。なぜか宝箱からはとてつもない輝きが漏れ出している。


「う、ううう、うおおおおおっ……あああああーーーーっ!!」


 泣きながら宝箱の中身を取り出す。


「スライムのビキニだ! ほんとうに実在したんだねーっ」


「ほう。レアな装備がふたつも落ちたということか。良いことではないのか?」


「さきほど、っぷ……失礼。ピエロ氏はビキニなんて出ることはない。出たら着てやると豪語していたようです」


「大和は約束を破ったりしないわよねー?」


「うおおおおおっ……見ろよ、このスケスケ……だめだよ、だめだろ。だめにきまってる!?」


「着ろー? 男が二言をいうなー?」


 絶対に逃がしてもらえない圧を放つ美空。後ろでは心の底から楽しんでいるマティルダ。

 敵うはずがない!?


「う、うわあああああああーーーーーっ」


 泣きながらビキニスライムの装備ボタンを押す。否、押させられる。

 装備換装時の光のエフェクトがあらわれ、消えたときには俺の装備はスライムでできたビキニになっていた。


「っく……きゃはははははっ、っくううう……あはははははーーーっ!!」


「っぷ、っく……ふはっ、ははは!」


 美空が腹をかかえて泣きながら笑い、つられてマティルダがこらえきれず吹き出した。


「きゃー……ヤマトぉ……はずかしいよお。っぷ、笑っちゃだめだけど……くふっ」


「……痴れものがっ。ぷふっ……気の毒な姿になってしまって……ふふっ」


「もういいだろ、もういいよな!?」


「ダメよ、っぷぷ。スクショタイム終わるまで……きゃははははっ」


「いやだーーーーーーっ!! なにが悲しくてスライムビキニの写真を撮られなきゃいけないんだ!!」


「に、似合っておるぞ、大和」


「ギリギリ悪口だろ、それ!」


「きゃはははっ! はっ、ひぐっ……くううっ、死ぬ、息できないっ。あはははーっ」


 美空がしばらくツボにはいったらしい。息ができないほど笑い、涙を流していた。


「……とんでもない目にあった」


 学園ジャージに着替えるまで美空に死ぬほど笑われた。


「やっば。笑いつかれた。はーっ、しんどっ」


 背中を叩いて慰められる。ぜんぶお前のせいだろ!


「むっ、大和。おまえ、残りのものは置いておいてもよいのか?」


「んー? まだ何か入ってたか?」


「うむ。……あれ、これは私のか? んっ、いや違うっ! ふたつあるぞ!」


 咲耶は両手にスライムハンマーを持っている。

 めったに出ないユニーク装備がふたつ?

 まさかふたつドロップしたのか!?


 ならば、やることは一つだ。


「おい、おいおいおい。はじまってるな。咲耶、そのまま両手の武器を合わせろ」


「むっ、こうか?」


「まさか、ここでやる気? 本気なの?」


「二本あったらやっておくだろ。咲耶、そのまま『合成』って言ってくれ」


「……かまわんが『合成』」


 咲耶の手を離れてふたつの武器が光りだす。

 ふたつの魔力と化した武器が交わり、光の色を変えた。


 あふれんばかりの黄金の輝きが武器を新たな形へと変える。


「咲耶、おまえマジで神」


「むう? スライムハンマーが、剣になってしまったではないか。ふにゃふにゃだ。斬れるものではなさそうだ」


「……こんなこと、あるわけ?」


「なんだかすごそうな剣だねー?」


「とてつもない魔力が込められている。説明しなさい、ピエロ」


「武器の進化だよ。ボスから落ちるユニーク装備は、まだ上の進化が残ってる。同じ装備をふたつ合成させると、稀にレジェンダリーというレア度に進化するんだ。ユニーク武器自体が強くて、めったに進化させるプレイヤーはいない。三本同じユニーク武器を手に入れたりして、はじめて強化するぐらいのものだ。ただ、もちろん失敗する。ユニーク武器のまま、強化失敗することもあるし、合成に失敗して無くなることもある。ほとんどの場合は強化失敗だが、ごくごくまれにレジェンダリー武器に進化できる。狙ってできるものじゃない」


 「名刀スライム」は、斬るのではなく叩く。


 このレベルではありえないダメージをたたき出し、スライムや物質系の敵には容赦のないダメージを与える。

 対人でも相手の盾を一撃で割れるし、重装備を貫通して固定ダメージを与えるヤバい武器だった。


 加えて、武器の耐久度が落ちない。

 どれだけ振るっても勝手に耐久度が回復するため狩り向けの装備でもあった。


 いま俺のレベルは4まであがっていた。

 頭の中で練っていたプランが変更になる。


 レベル7を目指すつもりだった。

 どうせならもう少しいけるかもしれない。


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