表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/30

20 「楽しまないと損でしょ? 生きてるんだから」

「もしかして、クラスメイトを異性としてみないようにしてるの?」


 急に美空が質問してきた。

 目の前では咲耶とアルヴィが、マティルダさんに教わりながらスライムと戦闘をしている。


 ステージ3のスライムは、ほかのスライムとは異なる『ビッグ・スライム』という種類の個体が出てくる。

 通常の10体分の経験値を持つボーナスモンスター。


 大きくなっている分、戦い方は変わる。

 いかにうまく衝撃を与えて核を動かし、核を叩くかという、わかりやすい連携プレーの練習になっていた。


 せっかくの機会だ。マティルダさんに戦闘指南を受けながらふたりに戦ってもらい、美空とお留守番をしていた最中だった。


「……そりゃな」


「どうして? とっても魅力的な女性じゃない。信頼関係も、少しずつできそうに見えるわよ。プレイヤーとしてゲームの話をしすぎるのはよくないのは知ってても、ゲームのようなことにはたぶんならないって、わたしも安心できてるもの」


 あなたはストーリーの主人公ではないかもしれない。でも、間違いなくストーリーの渦中にいるひとりの人間よ。

 美空は淡々と、しかし核心を突くように続ける。


「真剣に生きているならば恋のひとつやふたつ、あって自然なの。あなたはそう思っていないようね」


「アカデミーに通ってて驚くのは、若さだよ。前世で長く生き過ぎた。若さに驚いちまう自分がいる。俺みたいなおっさんが、十代の女の子にときめくのは恥ずかしいだろ。つりあわない、不健全だ」


「ふーん。まだこっちに慣れてないのね。あなたも、いまを生きる十代の男の子なのよ?」


「ははっ。たしかにな。ただその自覚がないのかもしれないな」


「じゃあ、まじめに生きて?」


「え?」


 美空は強い瞳で俺を見据える。


「ちゃんと今を生きて。なんだか過去に引きずられてるみたいよ。もっとも、記憶があるってことは良い反面もある。悪い反面だと、過去に引きずられて保守的になっちゃう部分がある。あなたの場合、それは対人関係に見えてる」


 この世界にNPCもキャラクターもいない。あなたもわたしも、いまを生きている人間なの、と彼女は言った。


「ちゃんとわたしを見て、咲耶ちゃんやアルヴィちゃんを見てあげて。じゃないと、あなた自身を見逃しちゃうわよ。わかった?」


 妙に説得力のある言葉に、納得した自分がいる。

 いつまで経っても美空には敵わないらしい。


「返事はー?」


「前向きに考える」


「うん。よろしい。あなたもアカデミーに通う学生なんだから満喫しなきゃだめよ。楽しまないと損でしょ? 生きてるんだから」


「そうだな」


 やけに実感のこもった声だった。

 美空は鼻歌を歌いながら歩いている。


――たしかにな


 こんな機会、訪れると思っていなかった。


「……今度」


「んーっ?」


「今度、ボスでも一緒にどうだ」


「えっ、行く! いつでも誘ってよ。タンク、よろしくね?」


「任せとけ」


「タンクいなかったから、狩りはできてもボスまで回れてなかったのよ。元プレイヤーのタンクなら腕も確かよね。あれ、山本五十六? ゲームではどこまでプレイしてたの? 五十階はいってた? それとも、もっと先?」


「たぶん、同じぐらいだと思うぞ」


「そっかそっか。今度ゆっくり話したいなー。ねえ、どこかで空いてない? 狩りでもしましょう」


「ゆっくり話したくて狩りするのは、美空ぐらいだよ。いつでもいける。大抵はダンジョンにいるからチャットくれれば、すぐいくわ。フレンドワープ使えるから」


「スフィア・ミューズ持ってるのズルくない? ちょうだい?」


「やだね。これがなけりゃアカデミー退学になっちまうよ。ダンジョンから出られなくなる」


「けちーっ。ずるいわよーっ。今度わたしの適正ダンジョンつきあって? ね? お願い、ポータルキーだけちょこっと借りればいいから。ね、ね?」


 両手を合わせた上目遣いに負けてしまう。


「しょうがねえな」


「やったーっ! 面倒くさいレベル帯スキップできるー!」


 喜んでいた美空の目が、さらに光る。


「閃いた! ミネルヴァに転校してこない? ねっ、わたしいるわよ? それともクラン一緒に作っちゃう?」


「まだアカデミーにも入学したばっかりだぞ。俺のメインジョブは近接火力職だ。魔法職は美空に任せる。ただ、クランならいいな。仁勇会とワルキューレを超えちまうか」


「へえ。トップチームで最強って言われる、レオパルドや神楽一心にも勝てる?」


「勝負だからな、やってみないとわからない。……ただ」


――お前のためなら神様だって殺してみせる


 うかつに滑る口を押さえながら、ひとりで笑ってしまった。

 ずいぶんと俺も浮かれているらしい。


「怒られる前に合流するぞ。もう終わっちまう」


「えーっ、いまなんて言おうとしたのよ。教えてよーっ」


 はやる気持ちを静かにさせながら、俺は駆けだした。


面白いと思ったら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ