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18 えっさ、ほいさ! 体がここを覚えてる!

「しゃあーーーっ!! 見渡すかぎりのスライム畑! 経験値の山じゃねえか!」


 スライムの森の初期地点はちょっとした崖の上だった。

 うまく足場を伝いながらスライムを上から倒して次のステージへ行けるようになっている。


 落ちている石を使えばノーダメージで通れるボーナスマップだ。


 水色のぶよぶよした球体モンスターであるスライム。

 崖の下の開けた場所には、ところせましとスライムが集まっている。


 スライムは重なりながらもうごめいており、スライムのプールのようだ。


「大和!? おまえ、ダンジョン内でのテンションが学園内と全然ちがうではないか」


「元気だなーっ! 負けてられないぞ!」


「……なんて数のスライム」


「あそこ飛び降りたら気持ちよさそうよね、ちょっと大和?」


「なんで俺がスライムの海にダイブしなきゃいけないんだよ。おい、押すなって……ばかっ、ばかばか! うわあーーーっ!? だれだ最後蹴り落したやつ! 美空ーーーーっ!?!?」


「プロテクトかけてあげてるから、割れたら教えてーっ。あ、安心してね。リザレクションもあるわよ」


「それ死んだときに使う蘇生スキルな!? あいつに生殺与奪を握られるのはこええ!! ぶっほ! 割れたーーーっ!! 落下ダメージでプロテクト割れました!! 飛び降りはダメです!!」


「あはは! ナイスーっ!」


「大和!? スライムが集まってきてるぞっ!?」


 崖の上からは美空の笑い声が響いている。


「やるか!」


 インベントリから取り出したのはスコップだった。


 スライムの大半は水でできており、体内に丸い核を持っている。

 核を攻撃してクリティカルダメージを与えるか、スライムの体にダメージを蓄積させて核が壊れるまで殴るかのどちらかである。


 切断とは相性が悪く、相性がいいのは鈍器だった。

 そのなかでもスライムを倒すために効率が良いとプレイヤーに好まれたのはスコップだ。


 叩いてよし、突いてよし、投げてよし。


「えっさ、ほいさ!」


 スライムをスコップでたたき、別のスライムをスコップで突く。

 叩いて突く。叩いて突く。


「えっさ、ほいさ! 思い出してきた。体がここを覚えてる! えっさ、ほいさ!」


「スコップの扱いがやけにうまい大和は、いったいなんなんだ? スライム駆除業者か?」


「農家さんもびっくりだよ!」


「農耕民族の血が騒ぐよな!」


「いや、さわがぬだろう!?」


 咲耶はツッコミがうまいな。


「うまいわね。ノーダメでスライムさばき続けてる。体当たりされてもスコップで打ち返したり……ほら、後ろに目がついてるみたい。後ろからの体当たりも、ぜったい処理してる。何回もレベルダウンしてきたランカーかしら。ふーん」


「おーい、だいぶ開けたぞ。降りてこいーっ! 一緒にスライム叩こうぜ!」


「いくわよーっ。みんな、手つないで。飛び降りるわよーっ! せーのっ! ジャーンプ!」


 咲耶とアルヴィの手をとった美空が飛び降りてくる。

 着地の瞬間『フライ』を入れて減速し、空中を歩くようにゆっくりと着地した。


 おい、なぜ俺だけ突き落とされた。ヒールすればいいってわけじゃないんだぞ。


 マティルダは崖を飛び、二度ほど落下速度を殺しながら足音もなく着地して来る。

 大型の猫みたいな動きだ。


「アイス・ブルーム」


 美空が詠唱なしで放つ魔法。

 自分を中心に冷気を放ち、当たったモンスターを凍らせる。


 スライムは凍ると受け流されていたダメージが通るようになる。

 蹴りや殴りでも簡単に倒せるほどだ。


 美空がスライムを軽く蹴るとスライムの形が崩れて魔力に変わった。


「わたしが凍らせたスライムなら、安全に倒せるわよ。残りを処理していきましょう! 前は農夫に任せておいていいわ」


「だれが農夫だよ!? えっさ、ほいさ! えっさ……ん? 美空? アイス・エンチャントもってないか?」


「あ、忘れてた。はい、エンチャントあげるわね」


 スコップの先端が冷たい光に覆われる。

 これで軽くスライムを小突くと、パンっとスライムが消えていく。


「いよっしゃー! 経験値ラッシュいくぞ! 一マップ目のスライムが半分減ったこの感じ! レベルアップくるぞ!」


「なんでわかんのよ、あいつ。引くわ」


 片手でスコップを回しスライムに当てると簡単に倒せる。

 おかげで、どんどんとスライムを倒していくと、ようやく。


「レベルアーップ!」


 システムメッセージで「レベルが上がりました」と表記された。

 同じ量の経験値が入っている、咲耶やアルヴィもレベルが上がっていた。


「おめでとうーっ!」


 杖をわきにはさみながら美空はパチパチと手を叩く。

 そうしながらも魔法弾を打ち、スライムの塊を屠っていた。マルチタスクの鬼め。


 咲耶とアルヴィはそれぞれ剣を振るっていた手を止め、レベルアップの実感を得ていた。


「これがレベルアップ? なんだか一気に強くなったようで、体が軽い。なるほど。すさまじい」


「すごい! なんだかポカポカするよ。それに、すごく体の調子が良い!」


 冷気を纏った武器がスライムにあたるとスライムは簡単に倒される。

 さくさくと倒される様子は勢いにのって調子を上げ、一面のスライムをすべて片づけた。


「ラスト一体、そっちよろしくー!」


 スコップを地面にさして後ろを見守っていた。


「せいっ!」


 咲耶のまっすぐな太刀筋がスライムに通る。

 スライムは光となり霧散し消えていった。


「ステージクリア」の表記がマップ全体に見えるところに浮かび、次のマップへのポータルがマップ中心に発生した。


「ナイスー!」


「ナイスクリアー!」


 美空と俺の声がハモる。

 うれしそうな顔をしているふたりがいる。


「はあ、はあ……レベルが上がることが、こんなにうれしいだなんて。はじめて知る気持ちかもしれぬ」


「うんっ。なんだか高揚するね」


 はじめての戦いを超えたふたりは息を整えながらも笑っている。

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