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16 自称幼馴染の魔法使い


「大和ちゃん、武器のライセンスとったよーっ。三本も持つなんて、珍しいね?」


 ギルドの受付嬢である葵ちゃんに、武器の「所持許可証」を申請してもらっていた。

 昨日の夜に預けたものが、もう許可が出たらしい。間に合ってよかった。


 日本刀が二振りと、ロングソードを一本受け取る。


「ありがとうございました。パーティーメンバーの武器もまとめて作ったんだ。レディメイドは合わなくて」


「んふふっ……七回も強化済み。レベルフリーのレア装備なんてはじめてみたよーっ。レベル15ぐらいまでは武器を買わなくてもいいんじゃないかなーっ?」


 武器のレア度もコモンからはじまり、アンコモン、レア、ユニーク、レジェンドとあがっていく。

 ユニークはボスモンスターからしか落ちず、レジェンドはドロップしない。


 プレイヤーが制作できるアイテムのレア度上限はレアまでだった。

 体感一パーセントほどで作成できるレア武器を三振りつくっただけではない。


 鉱山で鉄を掘った際に、まれに落ちる強化石を使って強化まで済ませている。

 10回までなら確定で強化が成功するが、強化値が確率で変動する。


 そこまでの厳選は行っていないものの、あるもの全てを使って、そこそこ良いものができた。

 強化石なんて一時間石を掘っていて、ひとつ落ちれば運がいいもの。


 武器と合わせると、とてつもない時間リソースをかけて装備を作成していた。

 一緒に作ってくれたエンジェル・フェアリーのスティアは喜んで協力してくれたし、雨竜さんも手伝ってくれた。


「15になったら、ミスリル装備に換装予定かな」


 武器はレベルに応じて変えなければいけない。

 またミスリルを手に入れたときも、同じことを繰り返すつもりだ。


 地道な作業もダンジョン攻略がぐっと楽になることを考えれば苦ではなかった。


「お姉さん、大和ちゃんが強くなるのを応援しかできないから、がんばれーって声に出しておくね。がんばれーっ!」


「葵ちゃんの応援バフで頑張れるーっ」


「お姉さんでよければ、いつでも応援してあげるからね。無事に帰ってきてね? 約束だよーっ」


 さきほどマティルダさんの圧で削れた精神が癒され回復していく。


 ポーションと換金素材を売って、ギルドの発行する通貨であるLPも振り込まれた。

 一ポイント一円として使えるので、これでしばらくは暮らせそうだ。


「大和、なにをデレデレしておるのだ?」


「着替え終わったか……うおっ、すげえ! かっけえ!」


「咲耶様、素敵ですね」


 咲耶は仁勇会の更衣室に装備を預けてあるらしく、着替えにいっていた。


 戻ってくると着物をモチーフにした装備を一式身に着けており、腰には二振りの刀が装備されている。

 膝上までの着物の裾。なかにはタイツをはいており、長い脚が引き締まって見えた。


「じっ……じろじろ見るな。はずかしいではないか」


「わ、わりい」


 お互いに視線を外したのに、また戻すと目が合った。


「んふふっ。いいなあーっ、きゅんきゅんしちゃう」


「なにか言いたいことがあれば……な、なんとか言ったらどうだ?」


「咲耶は本当に美人さんだなあ」


「し、しれものがっ!」


 怒られてしまった。


 葵ちゃんは、にまにまと口の端をあげて「ごちそうさまです」と拝んでしまっている。


「アルヴィを待たせては悪い。はやくいくぞ」


「って、どこに行くんだ!? おーいっ、咲耶。こっちこっち。仕方ねえな」


 逆方向にいってしまう咲耶の手を掴んで、一緒にダンジョンに進んだ。


「なっ、手をつながなくてもわかるっ! ……けど、なんだ。ありがとう。ん? というか、おまえ! なんで仁勇会のゲートをしれっと使えておるのだ? おい!?」


「大和ちゃん、いってらっしゃーい!」


「葵ちゃん、いってきまーす」


「ひとの話を聞かぬか!?」


 いったん咲耶の話を置いておいて、ダンジョンの一階に向かって歩く。

 長い通路のさきにあるゲートをくぐり、ダンジョンの一階へと飛んだ。


「ああーーっ、ただいまーーーっ!」


「ぬお!? ダンジョンにただいまはおかしいだろう!? 私もダンジョンの一階はひさしぶりだ」


 のどかな平原ともゆるやかな丘とも見え、穏やかな時間が流れる場所。

 ドンライ平原は、いつも人が集まり賑やかだ。


 軽食を売る屋台や武器屋、モンスターの素材買取屋、ポーションの屋台、飲み物の販売所、コーヒーショップ。

 さまざまな店を横に見ながら、広場へ到着する。まもなく、アルヴィとマティルダさんがやってくる。


「……かわいい。あの腰の位置はなんなのだ」


「似合ってんなあ」


 すらりと長い脚がショートパンツから見え、活動的に見える。

 動きやすそうなノースリーブなボタンシャツのうえには、重厚感のある裾の長いコートを羽織っていた。


 立ち振る舞いもあって、騎士という姿がしっくり来る。

 かわいらしいアルヴィの凛々しい格好に、なんだか微笑んでしまう。


 となりにいるマティルダさんも軍服を模した赤と黒に黄金の装飾のついたコートを着ている。

 ふたりとも、腰の高い位置でしっかりとベルトを巻いており、ウェストの細さとシルエットの大きさが印象的だった。よくみると、おそろいのブーツだ。


「サクヤーっ! あなたは日本のお姫様かい!? とっても素敵な装備だねーっ!」


「アルヴィこそ! 凛々しくて、騎士のようだ」


 一歩下がったところで、どっちも姫さんみたいだなあとみていると、だれかに肩をつんつんとされる。


「ねえねえねえ、もしかしてもしかして、そういうこと? イベント起こってる? Fクラスの代表バトル?」


「うおおおお!? 美空!?」


 マスクもサングラスもしてない素の姿のウィザードがいた。


「なによ、びっくりしちゃうじゃない。ってあれ、山本にわたし名乗ってたっけ? んー? プレイヤーネーム聞いてるから、自分から先に名乗ってるか。そうよね」


 美空はこの世界に来ているプレイヤーのひとりだった。

 あとお前は殊勝に自分から名乗るような性格はしていないだろ。


「あはーっ、アルヴィちゃんと咲耶ちゃんかわいすぎない? ねえ、紹介して? いいでしょう? 元プレイヤーのよしみ。ヒロインたちとお知り合いになりたいじゃない」


 ねえねえ。つつかれながら険しい顔をする。


「ストーリーモードやってねえんだ。困ったり、ヤバいときあったら助けてくれないか」


「えっ、まじっ? うーわ、人生損してるーっ。損した人生は取り戻せません。ざんねんでしたーっ。もちろんいいわよ」


「てか、あいつらヒロインなの?」


「はあー? そっから? ストーリー難易度も好感度あげるのもすっごくむずかしいから、覚悟しておいたほういいわよ」


 アルヴィちゃんなんてクラスメイトに嫌気さして、ソロプレイヤーになっちゃう未来もあるの、と彼女は囁く。


「ぜったい毎日話しかける。これは義務です。私情入ってて悪いのだけれど、わたしもわかるのよね。イギリスで暮らしてたときにアジアン差別うけたから、目に見えない壁の大きさって。まっ、そういうこと。あのふたりのバッドエンドを回避することは元プレイヤーの義務としてあなたに任せるわね。がんばりたまえー」


 ぽんっと肩を叩かれる始末。マティルダよりも理不尽な美空だった。


「美空のこと、なんて紹介してもらいたい?」


「んーっ? 友達じゃ弱いか。ペアハンパートナーっていうには、レベル差あるし。同郷の幼馴染でどう? わたし新潟の長岡出身だし、史実の山本 五十六もそうでしょう? あ、ごめんプレイヤーネームで呼んじゃうのマナー違反よね。なんてよべばいいかしら」


 プレイヤーネームを間違えて覚えてやがる。訂正の機会も失ったし、いいか。

 長岡出身という情報ははじめて聞いた。たしか花火大会が有名なところだったな。


「大和でいいよ。柳楽 大和の大和」


「天乃 美空。美空で呼ぶことを許してあげる。きれいな名前でしょう?」


「お前にぴったりだよ」


 その返事に、美空はすこし固まっていた。


「……ねえ。忘れてたら教えてほしいの。あなたとわたし、やっぱりどこかで会ったことがない? たぶんゲーム内よね。……ただの勘。もしかして、わたしのこと知ってる?」


「あるよ。ずーっと前の話。ほんのすこしだけな」


「……そっか。気を悪くしないでね、どうも……うまく思い出せなくて。忘れてたら、ごめん。思い出したらまた言うから」


 異世界に来た反動のようなものだろうか。俺も最初、記憶が混乱していたしな。

 まだうまく思い出せていないのかもしれない。


「ほら、紹介してやるよ幼馴染」


「あはっ、やったーっ。ちゃんと学園のイベントにも呼んでよね?」


「授業参観から呼んでやるよ」


「それはつまんないからいいかなー」


 美空を連れてパーティーのところへ戻る。


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