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チャーム
「バーのチャームなんて、所詮乾き物でしょ。俺なら絶対に手を付けないね。」
いつものバーに向かう途中の階段で、私の前にいる二人組が何やら喋っている。
その二人が店内に入り、ドアが閉まった後、私は一拍置いてから、ドアを開けた。
「いらっしゃいませ、橘様。」
マスターはいつもの笑顔で迎えてくれる。カウンターにいるのは、私と、先程の二人連れ。私は最初にマティーニを頼んだ。そして、三人に同時にチャームが差し出される。
「どうぞ。本日のチャームは『水を一滴も使わずに煮込んだカレー』でございます。」
二人組の驚いた表情。どうやら彼らは知らなかったらしい。『ムール貝の酒蒸し』『ブルーチーズのディップ、セロリを添えて』『じっくり煮込んだ野菜スープ』『そのスープをミキサーに掛けたポタージュ』…… このバーはチャームにもこだわっていて、毎回手の込んだ物が出てくる。どれもこれも美味で、はずれは無かった。
そして、私も彼らも、チャームは完食だった。




