ようこそ、こちら帝都裏通り魔道具店
よろしくお願いします。
『魔導具』——不思議な力や思いを宿す道具。
用途も形も様々で、同じものは二つとない。
このお話は、そんな魔導具を扱う小さな店で働くボクの話だ。
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帝都の裏通りを抜けると、静まり返った通りの奥に、ひっそりと建物が立っている。
外観は古く、苔むした石壁に覆われ、木製の扉は時間の重みで軋む。
通り過ぎる人も少なく、足音が石畳に響く。
ここが、ボクたちの働く魔導具店だ。
「……ひまぁぁぁぁああ」
カウンターの上で、銀髪の少女が机に突っ伏して唸る。
青みがかった髪が淡く光を反射し、机の木目に絡んで揺れる。
「……仕事しなよ」
ボクは道具の手入れをしながら、淡々と呟く。
「だってお客、全然来ないんだもん」
何がだってなのかよく分からないが話が通じないのは何時もの事なので突っ込む事はしない。それで面倒に絡まれても困る
ボクはため息を1つ吐いて手に持った道具の手入れ作業に戻った
ここは帝都の隅にある魔導具店。あまり大きくない個人経営の店である。大手の商会とは比べるまでもなく品数等も負けている
更に立地条件。大通りからは外れた裏道を抜けた先にあるのでここまで来るお客は余程のマニアか迷い込んだ人か表を歩けない人位だろう
「だったらエルド商会かランノン商会とかで再就職すればいいじゃん。君なら余裕で雇用して貰えるでしょ?」
「いやぁぁぁ! 忙しいのはイヤ! 自由に生きるの!」
少し面倒なところはあるけど、この人の能力は確かだ。
修復も鑑定も、そして目利きも完璧。
そして、何より魔導具を愛している。
「それに!あの仕入れ方法があるでしょ? 他の店にはないもん」
確かに、この店の仕入れ方法は少し独特で、大通りのどんな大商会でも真似はできないだろう...少なくとも他店でこの様な仕入れ方法は聞いたことがない。
その瞬間、店の奥に設置されている鏡から眩い光が発生し、収まるとそこには床に二つの木箱が現れた。
一つは大人の腕ほどの大きさ、もう一つは人の背丈ほどある。
「きたぁぁぁぁぁぁあ!!」
少女はバタバタと木箱の前に行きジロジロと品定めを行うかのように木箱を眺めていた。
「どっちにする?」
ボクはその後ろから少女に問いかけた。
少女は指を動かし、考えるそぶりを見せる。
やがてぴたりと止めて、大きな木箱の方を選んだ。
「大は小を兼ねる! 私はこっち!」
「じゃあ、残り物には福がある、ってことで」
少女が笑いながら箱に手をかける。
ボクは小さな箱に手を置き、光が静かに漏れ出すのを感じた。
――仕入れ作業開始。
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気づくと、ボクは荒れ狂う海の上に立っていた。
冷たい風が肌を刺し、潮の匂いが鼻を突く。
波が岩に叩きつけられるたび、足元の石板が微かに震える。
目の前には、灰色の石造りの灯台。
高さは人の背丈の何倍もあり、幾度もの嵐を耐え抜いた跡が刻まれている。
だが、頂上の灯火は沈黙していた——静寂の闇に沈んでいる。
石段を上ると、湿った石の冷たさと軋む音が肌に迫る。
途中、壁に打ち付けられた古い手帳を見つけた。
紙は湿り、文字はかすれている。
手帳を開くが何も書かれていない。
何となくだけどボクはそれを手に持ち探索を続ける。
階段を慎重に踏みしめ、屋上に到達する。
扉を押すと、軋む音が暗闇に吸い込まれる。
黒い影がゆらりと現れ、空間に漂う。
人の形をしているが、輪郭は曖昧。存在感だけがここにある。
警戒しながらそれを眺めていると手帳が勝手に開き、文字が浮かび上がった。
――《なぜ灯を消した……》
...?念話の一種だろうか?多分この影が語りかけてきているのだろう。そこからは別に敵意や害意などは感じられない。
ボクは手帳を見つめ、淡々と返す。
「ボクはここに来ただけ。観測者として、他人の綴った物語を読むために」
文字が揺れ、次の言葉が現れる。
――《光を守るため、私は——失敗した》
海鳴りが強く、屋上の石板を波が打つように音を立てる。
風は容赦なく吹き付け、雨が頬を刺す。
直後、ボクの頭に“映像”が流れ込んできた。
……嵐の夜。
灯台守の男が、灯を消すまいと油を注いでいる。
波が壁を叩き、塔が軋む。
女性が叫ぶ声がする——「もう逃げて!」
男は振り返らない。
灯を絶やせば、帰ってくる船たちが迷う。
それだけは、許せなかった。
次の瞬間、閃光と轟音。
塔に雷が落ち、すべてが光に包まれる。
そして——暗闇。
その闇の底に、彼の声だけが残った。
《灯を、頼む……》
意識が沈み、徐々に視界が戻ってくる。
文字が再び浮かび上がる。
――《……見つけてくれ。大事な灯を……》
視界の先で、青白い光が微かに海底を照らしているのが見えた。
ボクは手帳を閉じ、石段を下りる。
靴底が濡れた石に鳴り響き、波の轟音が耳を震わせる。
目の前に揺らめく光を確認すると、足は自然と海に向かって進んでいた。
この灯を取り戻せば、物語の続きを紡ぐことができる——
観測者としての役目を果たすために、ボクは前へ進む。
屋上から慎重に石段を下り、暗く湿った空間に潜む海の匂いを吸い込む。
手にした古いロープと簡素な梯子を頼りに、海面に向かって降りる。
波が打ち付け、冷たい海水が外套に染み込む。
ボクは身も凍るような水中に身を投じた。
青白く揺れる光の輪郭が暗闇に浮かぶ。
水の冷たさが全身を包み込み、圧迫感が胸を押す。
光の中心に近づくと、古びたランタンが砂に埋もれたまま揺れていた。
ボクはランタンに手をかける。
手のひらに冷たさが伝わると、淡く青い光が水面に反射し、周囲の闇を染めた。
手帳がまた勝手に開き、文字が浮かぶ。
――《……ありがとう……光は戻った……》
ボクは頷き、ランタンを抱えて海面に向かう。
水面を蹴り上げ、波間に出ると、嵐の音と雨に再び包まれる。
ランタンの青白い光は、海と空の境界を揺らし、荒れた世界に小さな希望を灯していた。
――仕入れ完了。
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気が付くといつもの店のカウンター前。
手に抱えるのは、青白く微かに光を放つ海灯のランタン。
「ふぅ。ただいま」
ボクは箱にランタンをそっと置く。
光が箱の内部を柔らかく照らし、カウンターの木目に反射する。
「おかえり!!私の勝ちだねー!」
隣で銀髪の少女が大きな箱を開ける。
中には、彼女が仕入れた魔導具が納まっている。
「じゃーん! 見て見て、あなたより大きい方選んだからね!」
箱の中から、小さな精霊の形をした魔導具がふわりと飛び出す。
青い光を帯び、周囲の空気まで少し弾むようだ。
「...なんかサイズがあってないんじゃない?」
「そそそそんな事ないよ?きちんとミッションコンプリーツ!!」
ボクはランタンを指先で撫でるようにして見つめる。
嵐の海底で見つけた光は、ただ美しいだけでなく、守られるべき物語そのものだった。
少女がにかっと笑う。
「あなたのは?んーランタン?不思議な光だね」
「海の底の光だ。取り戻した。——ランタンになった」
少女の目が一瞬、大きく見開かれる。
「なんか見ててほっとするね」
二人はしばらく無言で箱の中の光を見つめる。
海の匂いも、嵐の轟音も、今はもうない。
けれど、箱の中に宿った物語の余韻が、静かに二人を包んでいた。
「ねぇ、次はどんな魔導具に出会えるかな?」
「……まだ分からない。けど、楽しみではある」
少女が笑い、箱の蓋を軽く叩く。
ランタンの青白い光が、木製のカウンターにゆらりと揺れた。
「それじゃあそっちの話も聞かせてよ」
「いいよ!まずは目を開けたら森の中で...」
ここは帝都の裏通りにある小さな魔導具店。
特殊な珍しい品々が陳列された棚には新しく静かに暖かな光を灯すランタンとそれに座る小さな精霊を模した魔道人形が展示された
──ようこそ。こちら帝都裏通り魔道具店──
短編を、という事で削って削って削ったら短くなっちゃった「( ˙꒳˙ )アイヤー
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