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緋眼のアイリス  作者: 惰浪景
第二章

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46話

 しかし、スターライトクイーンは配信にヤクザとのやりとりを載せるつもりなのか?

 ――すっごい問題になりそうだけど……


 琴音もそう思っているのかスターライトクイーンにジトーっとした視線を送っていた。


【まさかのヤクザコラボ】

【事務所は撮影OKしてくれるのかな?】

【どんな人が出てくるか楽しみ】


 コメント欄は特に気にする様子はない。


「あ、流石に事務所の中は配信しないからね〜」


 ま、そりゃそうだよね。

 俺はホッと胸を撫で下ろす。


【え〜】

【うそーん】

【じゃあ、もしかして今日はこれで配信終了?】

【もっと、配信して欲しいなー】


 配信が終了しそうな空気を察して悲観的なコメントがすごいスピードで流れていく。

 正直、俺は終わってくれた方が助かるのだが……


「チッチッチ」


 スターライトクイーンはニヤリとした笑みを浮かべて人差し指を左右に振った。


「これで配信が終わるのは流石につまらないでしょうー?」

「いや、終わりましょうよ……」


 琴音が心底イヤそうに呟き、俺の背中にへばりついている霞野さんも小動物のようにコクコクと頷いた。


「折角ゲストもいるんだし〜移動しながら恒例の質問タイムやるよ〜」


【88888888】

【キター!】

【コメント欄から拾うのかな?】

【この速度のコメント拾うの無理すぎるでしょw】


 どうやら、配信は続くらしい。

 ガックリと項垂れていると、隣で琴音も同じように肩を落としていた。


「流石に迷惑にならない?結構人が集まってきてるわよ」

「大丈夫大丈夫〜電車は使わないから〜」

「まさか……」


 ゴクリと唾を嚥下する。


「そう、走って移動するよ〜」


 まじか……

 確かに、それなら周囲に迷惑はかけないのか?

 

「それじゃいっくよ〜」


 スターライトクイーンが光に包まれ衣装が変わる。

 横浜で見た星をモチーフにしたマントに白いフリルのワンピースがふわりと現れた。


 こうなれば、もう止められないだろう。


 俺と琴音も一度ため息を吐くと変身し、それを確認して、スターライトクイーンは一気に駆け出した。


【みんなかわええ〜】

【移動しながら配信する為だけに魔法少女になるのホンマに草生える】

【魔力の無駄遣い、助かる】

【変身助かる】

【カメラ人形!がんばって〜!】

【毎回手ブレが一切ないの凄すぎるんよね】


「それじゃ、早速質問ターイム、リスナーさんから届いたゲスト宛質問を拾っていくよ〜」


 息を切らすことなく、凄いスピードで進むスターライトクイーン。

 それに俺と琴音もついていく。

 霞野さんはというと――人形に抱えられて移動していた。ズルい。


 ……あの人形一体貰えないだろうか?

 そんなことを思っていると……


「それじゃ、まずはアイリスたんからね〜」


 どうやら最初に質問に答えるのは俺らしい。


「デデン、憧れの魔法少女とかいますか?」

「憧れ……う〜ん」


 思ったよりもかなりまともな質問にホッとした。

 とはいえ、俺の知っている魔法少女なんて晴香と翔太経由で教えて貰った数人だけだ。


 真っ先に思い浮かんだのは神崎結月だけど、彼女の名前を出すと、しんみりしそうだしなぁ……


「白鷺環さんかな?」

「うわっ無難……」


 琴音がうるさいが無視だ無視。

 

【白鷺環はかっこかわいい。異論は認める】

【横浜で木が一斉に伸びるところ、マジで震えた】

【芦ノ湖の再現は必要ないさ】

【↑お前が言うと一気に安っぽくなって草】


「しらたまは人気だからね〜」

「しらたま?」

「うん、白鷺環だから、しらたま、この呼び方、本人、めっちゃ嫌がるよ〜」

「じゃあ、あんたはスターライトクイーンだからスタクイね!」


 琴音がそう言った瞬間――

 スターライトクイーンからすっと表情が抜け落ちた。


【あっ……】

【あっ……】

【あぁ……】

【地雷を……】

【踏み抜いた……】


「スタクイって呼ぶんじゃねぇ……」


 今までの柔らかい声音からは想像はできないほど、ドスの効いた低い声が鼓膜を震わせた。


「うわっめんどくさっ!スターライトクイーンとか名前長いから略すに決まってんのにそれで怒るとか……」


【ぐさって音しそう】

【やめて、スタクイのライフはもう……】

【スタクイ、懐かしいwww】

【ファンにスタクイって略されるのがイヤでスターライトクイーンの後ろにセイラってつけたやつかw】

【そうそう、それでセイラって呼べってリスナーに言ってきたやつ】


 確かにスターライトクイーンってちょっと呼びにくいんだよな……

 スタクイって省略したくなる気持ちはよくわかる。


 そんな俺の内心を察したのか、スタクイ……じゃなく、スターライトクイーンはキッとこちらを睨みつけた。


「セイラって呼んでね。」

「あ、はい」

「それじゃ次!クレセントムーンへ質問をランダムに選ぶよ〜」

「次は私ね!」


 エンジンがかかってきたらしい琴音はやる気満々の表情だ。

 

「デデン!ぶっちゃけ日常生活で魔法使うことってありますか?」

「そうね〜」


 琴音は顎に人差し指を当て眼を瞑る。

 いや、カップラーメンのお湯とか沸かしてたのに何を悩んでるんだ……


「私、火属性だから急な雨に打たれた時とかは服とか髪を乾かすのにちょっと使うわね」


【おぉ、便利……】

【もしかして、冬とか暖房要らずなのか?】

【夏は暑苦しそう】

【アイリスちゃんとはどういう関係なのー?】


「アイリスとは……幼馴染ね」

「へぇ〜幼馴染なんだ〜」

「幼馴染は負けフラグ……!」


 人形に抱えられた霞野さんが小声で何かを呟いた。

 

「それじゃ、最後はドールマイスター!」

「え、え、えぇ、わ、私、で、ですか……!?」

「デデン!ずばり、今好きな人はいますか?」


 セイラの悪戯っぽい視線が霞野さんを射抜いた瞬間だった。

 

 ――ぼんっ!


 ヤカンが一気に沸騰するような音が聞こえそうなくらい、一瞬で霞野さんの顔が茹で上がる。

 そして、あわあわと両手を顔の前でパタパタさせる。


「あ、あ、あ、あのそれは、そ、その〜」


 誰が見ても、好きな人がいるんだなと分かるような反応だ。

 琴音や俺はそれを微笑ましく見守っていたが、セイラは口をあんぐりと大きく開いていた。


「え、いるの?あの家から一歩も出ないキミに!?」


 そう驚いた声を上げたあと――

 セイラはパッと満面の笑みを浮かべた。


「ドールちゃんにもついに春がきたのね〜今度恋バナしよ〜」


【マジか……】

【ユニコーン終了のお知らせ】

【ドールちゃんファンのワイ、無事死亡】

【恋バナも配信でやって】

【恋愛マスターのワイ、百合の波動を感じる】

【どういうこと?】

【ドールちゃん、今日やたらとアイリスたんのこと見てね?】


「なるほどね〜」


 コメント欄に視線を送っていたセイラが突然そんな呟きをした。


「何がなるほど、なのよ?」

「いや〜別に〜」


 配信、というものに慣れていない俺と琴音にはあの早すぎるコメント欄は読めない。

 しかし、セイラには“何か”が見えたらしい。

 ニヤニヤとした視線をこちらへ送ってくる。


「三角関係なのかな〜なんか、おもしそう〜」


【てぇてぇ】

【ドールちゃんとアイリスたんでアイ×ドルってこと!?】

【ドルアイ派です】

【どうでもいい〜www】


「さてと、それじゃ、そろそろ目的地に着くから配信を閉じるね〜」


【乙ステラ〜】

【乙ステラ〜】

【乙ステラ〜】


 そして、セイラは配信終了のボタンを押し、人形の持つカメラの赤いランプが消えたのだった。

 その瞬間、俺と琴音は肩を撫で下ろした。


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