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緋眼のアイリス  作者: 惰浪景
第二章

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45話

「そ、それで!これが最初の調査結果です!きゃぁ!」


 ドールマイスター、こと霞野ゆかりは鴉羽さんに書類を出そうとしたのだが……

 何もない場所で足を取られ、そのまま前のめりに転倒した。


 ひらひらと宙を舞う書類は円卓の奥の方へと滑り落ち、鴉羽さんがそれを静かに拾い上げる。


「ふーん、“エレナ・モーガン”ねぇ……」


 鴉羽さんは顔写真付きの書類にサッと目を走らせ、感情の読めない声を零した。


「そのエレナってのが暴れまわってる魔法少女ってわけ?」

「そうよ」


 琴音の問いに頷いた鴉羽さんは書類を俺たちの方へと差し出した。


「ふむふむ……げっ米軍出身じゃん……」


 鮮やかな金髪と透き通るような白い肌が特徴的な美少女の顔写真の下。

 経歴の欄には、アメリカ陸軍所属と記されている。


「去年、軍から脱走し行方がわからなくなっていたそうよ」

「アメリカから逃げてきたんですね……」


 六年前。

 溢れかえった魔物への対処の術を見出せなかったアメリカは自国で核を起爆した。

 ”国家非常事態宣言“を出し、国の存亡をかけた戦いだと国力の全てを魔物の対処に注力したのだ。


 ――その結果、少女たちは貴重な“戦力”として徴兵される。

 都市も荒廃してかつて世界の覇権国家だったアメリカはもう見る影もない。


「しかも、暴力団を3つも潰してるんですね……」

「ホントだ、行方不明者三十名、死者二十名……」


 俺と琴音は衝撃のあまり言葉を失う。

 いくら裏社会の住人相手でもやりすぎだ。


「アメリカからは“速やかに強制送還”して欲しいと要望が来ているけど……」


 鴉羽さんは、遠くを睨みつける。

 

「……彼女は日本の法で裁かれるべきよ」


 その声は低く、芯の通った鋼のようだ。

 俺たちもそれに同意を示すように頷き合う。


「それで、この一次調査の裏どりをやればいい感じ〜?」

「ええ、現段階では疑惑がかかっているだけだから、何が起こっているのか実際に足を運んで欲しいの」

「わ、わたし、のちょ、調査は人形を使って、ヤクザさんの事務所から情報を抜いた、だ、だけなので」


 裏どりって犯行現場を押さえるとかになったりしないだろうか?

 米軍の魔法少女を相手に戦闘はしたくないな〜


 そんなことを思いながら、俺たちは調査の日にちを決めて解散したのだった。


         ***


「は〜い、みんな〜こんステラ〜!今日は告知した通りたくさんのゲストちゃんが来てるよ〜」


【こんステラー】

【ゲストってもしかして……】

【ざわ……ざわ……】


 マギ管で任務を引き受けた二日後の土曜日。

 難民魔法少女調査チームとなった俺たちは全員揃ってカメラを構えた人形の前に立っていた。


 どうしてこうなったのか?


「今、最も熱い魔法少女、横浜の大天使だよ〜!」


【銀髪ちゃんキター!】

【かわいい!】

【しほりん ¥10000】

【無言赤スパ飛んでて草】


 裏社会の調査をやるにあたり、良い作戦がある。

 スターライトクイーンにそう言われて駅に集まった瞬間、彼女はカメラを回し始めたのだ。


 ――調査はどうしたんだ、そうツッコミたいのだが……


「それじゃ、一番右から自己紹介していってね〜」


 何世代も前のロボットのようにぎこちない動作で琴音が一歩前に出て右手を上げる。


「く、クレセントムーンですっ!十六歳で好きな食べ物はら、ラーメンで……」

「ちょっと、自己紹介ぎこちなさすぎ〜緊張してる〜?」

「だ、だって……」


 多分、この場に居るスターライトクイーン以外のメンバーは全員琴音と同じ状態だ。

 先ほどから早鐘を打つように暴れる心臓を抑えるために俺も何度も深呼吸をしている。


 霞野さんに至っては今にも泡を吹き出して倒れそうなほどプルプルと震えている。


「4万人の視聴者の前にいきなり立たされるなんて思わないでしょっ」


【セイラちゃんあるある、勝手に出演パターンか……】

【クレセントムーンちゃんはA級?B級?】

【配信始まったばっかだからまだ視聴者増えそう】

【8万人くらい集まるで〜】


「は、8万……」


 あまりの視聴者の多さに、調査は?なんて聞く余裕がない。

 霞野さんが、目を回して倒れそうになったのを慌てて抱き止める。


「大丈夫ですか?」


 返事はなく、俺の胸元あたりをギュッと握りしめてそのまま顔を押し付けてくる。


「ハァ……ハァ……」


 過呼吸とかじゃないよな……?

 慰めるように背中を摩ってあげる。

 

 元の月城優の姿でやったら絶対アウトな案件な気がするが……


【てぇてぇ】

【しほりん ¥10000】


「毎度のことだけどドールマイスターちゃんの自己紹介は省くね〜次は……キミね」


【ざわざわ……】

【待ってた!】

【伝説の銀髪美少女の通名がわかる時が……キタ!】


 突然回ってきた順番に肩が跳ね上がる。

 変に決めようとして4万人の前で消えない傷を負うのは避けたい。

 ――無難にこなそう。


「えっと、最近魔法少女になりましたアイリスです」


 そこまで言い切ると、緊張のあまり、熱くなった頬を隠すようにぺこりとお辞儀する。


【え?最近なったばっかりなんだ?】

【マジか】

【てことはF級とか?】

【F級の強さではなかったと思うけど……】


「アイリスたんはB級だよ〜」


【はっや】

【すでにB級だったとは……】

【緊張でガチガチなアイリスたんかわいい】

【クッ……これが横浜の守護天使の破壊力】


「それじゃ、今回の動画の趣旨を説明するよ〜」


 それは、俺も聞きたかった。

 4万人の前……いや6万人になってる……


 こんな大勢の前でなぜ、突然配信をはじめる必要があったのか。


 スターライトクイーンは顎に指を当てたあとカメラに向けてウインクした。


【天使降臨!】

【尊死】

【しほりん ¥10000】


「最近、この辺の裏社会を荒らす潜りの魔法少女を探してるんだけど〜心あたりのあるヤクザさん、DM下さいな〜」

「ええぇぇ〜」


 まさかの呼びかけに琴音が目を剥く。

 まぁ、確かにどうやって裏社会の人から聞き取りとかをやるのか、とは思っていたが……


 こんな方法を使うとは……


「早速、DM来ました〜」

「はっや!」

「それじゃ、このヤクザさんとやりとりをしながら移動しようか〜」

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