陰キャに異世界は、難しかったです。
家ではゲーム、マスクは外せない、学校では本なんて好きじゃないのに本ばっかり。そんな毎日。
「いや、そこ行ったらだめでしょww」
ヘッドホンをつけ、マイク越しにネットへ話しかけているのは、前髪を目の際まで伸ばし、長い黒髪を下ろした14歳の少女『高橋 桜』。陰キャである。
「あれ?もう3時じゃん、、、やば、ちょ、寝るわじゃ〜ね」
ネッ友とのゲームが終わってから、SNSでネッ友と絡む。しかし、現実では人と絡めない。それが、高橋 桜の人生そのものである。
「おやすみ世界。」
...厨二病である。
「おはよう世界。おぉ太陽よ、その灼熱はボクの心を燃やし尽くしてしまったようだ...」
「...ん?ベッドじゃない?草...?ここ、異世界ぃぃ!?いやいや最高かよ!やはりボクは選ばれし者だった訳だ...」
僕っ子、厨二病、陰キャを兼ね備えた高橋 桜異世界転移完了。
「こ、これは、街?に行けばいいのかな?」
そう言って寝ていた場所から少し見えていた街へ繰り出す陰キャ。心配だ。
「いやいや、なんですか?ここ、ヒト、イスギ、スマホ、ネット、ネットモドコ?」
その後もブツブツと小さな声で、縮こまって呟く桜。
「モ、無理」
意識が...うすれ、て。あれ?ゆ、め?
(なんか、あたたかい?優しい、吐き気が無くなって...)
「ちょっとぉ、あなた大丈夫ぅ?」
「ひゃあ!ど、ど、ど、どちら様ぁ!?」
桜が再び目覚めたのは、野原とは裏腹にメスゴブリンの膝の上だった...
「あらやだ、自己紹介がおくれたわね、私はゴブリンのメルダよ〜♡そんなことよりあなた、街中で倒れてたのよ〜も〜私ったら心配で心配で...私の家まで連れてきて治癒魔法で治しちゃったってわ〜け!」
メルダの特徴的なキャラに完全に固まる桜。メスゴブリン、膝枕、勢いのあるおばさん。当たり前だ。
「そういえばあなたお名前は?」
「たっ、高橋 桜と申します!ち、ち、治癒魔法あ、ありがとうございました!私...ちょっと用事ありますのでぇぇ〜」
早口でお礼を言った後自己ベストのタイムで家を出る桜。そして発動!陰キャ魔法、気まずくて、身に覚えのない用事!どこへ行く用事なんでしょうかねぇ〜
「どどどどどどうしよう〜、行く宛てもないし、日もくれてきてるしぃ...」
桜は街中で倒れ、夕方頃まで寝ていたのである。3時に寝ればそうなる。
「おや?そこのお嬢さん、何かお困りかな?」
「だっ、だっ、誰ですかぁ?」
ハプニングが多すぎて、涙目になりながら振り向く
「僕は、セルベール魔法学園で教師、騎士をしているライアンだ!お嬢さんは?」
ライアンは短髪の綺麗な金髪、こんがり焼けた小麦肌の27歳の男性だ。イケメンだ。
「た、高橋桜といいます...!」
「高橋桜...あっ!異世界転移者リストにあった子か!転移してきたばかりなんだ、家もないだろう、学園の寮にとまるといい」
桜は小さく頷き、ライアンがニカッと笑い、寮へ案内する。この時間が桜にとっての異世界最大のピンチであった。
「桜ちゃんは、異世界のどんな所から来たの?」
「...に、日本です。」
「ん?ちょっと聞こえなかったもう1回お願い出来る?」
「に、日本です!」
「へ〜ニホンかぁ〜ニホンから来た子は初めましてだな〜」
こんな会話が別の話題でも何度も続いた。
「はい!着いたよ!ここが桜ちゃんの部屋!なにか困ったことがあったらあそこが僕の部屋だからいつでも来ていいよぉ〜!じゃ、ゆっくりやすんでね!おやすみ!」
「...おや、すみなさい。」
桜は寝る準備を素早く済ませ、スマホも、PCもないため、直ぐに眠りについた。
朝、部屋のドアが叩かれる。
「桜ちゃ〜んいる?」
「は、はい!なんでしょうか...」
「あれれ、起こしちゃったぁ?ごめんごめん」
(朝の5時にドア叩かれたらそらビビるわ、非常識かよ...ここ日本じゃねぇわ)
「いえ、全然...」
「桜ちゃんには!セルベール魔法学園に入学してもらいまーす!」
「あ?え?私がぁ!?魔法学園にぃ!?」
「すごいよ桜ちゃん聞いた事のない大きな声がでてる!その調子で入学だ!」
「はぁぁぁぁぁ!?」
波乱の2日間。高橋 桜(陰キャ)はこの異世界で生き抜くことは出来るのか!?
やっぱり、陰キャに異世界は難しかったです。