第5話『神の痕跡と、ミスティの秘密』
朝焼けが、リュノ村を包む。静かな朝だ。だけど──俺の心は、全然静かじゃなかった。
昨日出会った銀髪の少女・ミスティの言葉が、ずっと頭から離れない。
> 「あなたの体には、神の痕跡がある──神域に触れてる」
……俺にそんなヤバいもんが?
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宿屋の朝食をとり終えた俺とラナは、また村の見回りに出た。今日は何も起きないでほしい──そう願いながら歩く。
「昨日のあの子……絶対普通の子じゃなかったよね」
「うん。てか“監視する”とか言ってたけど、まさか村に来てたり──」
「来てる」
すぐ隣の柵の上に、ミスティは座っていた。無表情で、足をぶらぶらさせながら。
「本当に監視してるのかよ……!」
「当たり前」
「いや当たり前って……お前、何者なんだよ」
俺がそう言うと、ミスティは静かにフードを外した。冷たい風が銀の髪を揺らす。
「私は、“灰の観測者”──神に近い存在を記録し、見守る者。あなたの中に、神の痕跡がある。放っておくと、いずれ世界に影響する」
「な、なんか急にスケールでかい話になってない!?」
「影響というより……引き寄せる、かもね。異形を。神獣を。混沌を」
「俺、平和に暮らしたいんだけど……」
俺の叫びは、空しく風に流された。
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◆
その後、ミスティも一緒に村を回ることに。というか、勝手に付いてきた。しかも──
「ハルト、これ持って」
「うわっ、ミスティ、手ぇ繋ぐなって!」
「魔力の流れを確認したいの。これが一番早い」
「は、はずせってば! ラナに見られたら──」
「見てるわよ」
振り返ると、ラナが無言で睨んでいた。
怖い。いや、本当に怖い。
「は、誤解だラナ!これはその、魔力の流れを──」
「ふーん。じゃあ、さっさと終わらせて」
ラナの声が凍っていた。
やばい。これ、ほんとに平穏な日々なのか?
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その日、俺たちは村の外れで小さな廃祠を見つけた。誰も管理してない神殿のような建物。苔むした石柱と崩れた天井。
「……ここ、妙に気になる」
ミスティが真剣な顔になる。
「神の痕跡が、濃い。たぶん、あなたの力が引き寄せてる」
祠の中へ入ると、そこには古びた石版があった。ひび割れたその中央に、光る文字が浮かんでいた。
> 【ここに“神喰い”が封じられし】
「“神喰い”? 物騒な名前だな……」
そのとき──
祠全体が震えた。
「来る!」
ミスティの声と同時に、地面が割れた。そこから這い出てきたのは、灰色の甲殻をまとった異形の獣。人間の顔をかたどったような仮面をつけている。
「グォォォォオオ──!」
「こ、こんなやばそうなの、俺無理無理!!」
「戦わなくていい。ハルト、あなたの魔力、解放して!」
「できないって言ってるだろ!」
「じゃあ──こうする!」
ミスティが俺の手に触れ、詠唱を始めた。
「《灰色の静寂よ、神の痕跡を開け》──!」
ビキィィッ!!
空気が割れた。
俺の体から、光が吹き出した。金と銀の粒子が舞い、祠の天井が一瞬で消し飛ぶ。
怪物が、その場で動きを止めた。
「……ハルト、今のは」
「俺、何もしてないぞ!? 勝手に爆発しただけだ!」
「やっぱり、あなたの中に……神の力がある。しかも、“未覚醒のまま”で」
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◆
その晩、村へ戻った俺たちは、宿屋の一室で再び向き合っていた。
「……ハルト、今までは平凡な生活を望んでたんでしょ」
「ああ。なるべく戦いたくないし、危ないの嫌だし」
「でも、それはもう無理かも。あなたは“呼ばれてる”。この世界に」
ミスティの言葉は、妙に重かった。
……俺は、ただの一般人じゃなかったのか?
ただの異世界転生者でもないのか?
でも、やっぱり俺は言いたい。
「……それでも俺は、のんびり暮らしたい」
ミスティは静かに目を細めて、小さく笑った。
「なら、守るしかないわね。あなたの平穏、私が一緒に」
「え……」
「ラナだけに任せるの、危なっかしいから」
「なんかムカつくんだけど!?」
そう言いながらも、ラナの頬は少し赤く染まっていた。
神の力。神喰い。灰の観測者──
世界の謎が少しずつ姿を現してくる。
でも今はまだ、俺はただの一般人でいたい。
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