第3話『ギルドと、チートがバレそうな件』
「お、お前……何者だ?」
そう言ったのは、村長だった。
魔物騒動のあと、俺は村の広場に連れてこられ、椅子に座らされ、囲まれていた。まるで裁判か、尋問か、ってレベルで大人たちの視線が突き刺さる。
でもその視線は、疑いというよりも、畏敬──つまり、尊敬とか、畏れとか、そういう雰囲気だった。
「何者って……ただの旅人ですよ。たまたま運が良かっただけです」
俺はできるだけ控えめに答える。
俺がしたことといえば、光で敵を吹き飛ばしただけ。それがどうやって起きたのかは、いまだにわかっていない。操作方法もないし、意識して出したわけでもない。
「魔物を一瞬で……いや、魔術師でも難しいぞ。しかも無詠唱で、あんな規模の魔法……」
村の騎士らしきおっさんが唸る。
「……ラナ嬢の話によると、“加護が識別不能”とか?」
「らしいです」
俺がそう答えると、今度は村人たちがざわめき出す。
「神の使いか?」「いや、勇者なのでは?」「魔王と戦える存在かも……!」
──おいおい。やめてくれ。
「いえ、ちがいますから! マジで、旅人ですから!」
そんな俺の必死の否定に、ラナだけがくすっと笑っていた。
「まあまあ、ハルトはハルト。いい人だってことは、私が保証するよ」
ありがとう、ラナ。でも君の笑顔がフラグに見えてしかたない。
---
◆
翌日、俺はラナに連れられて、隣の町まで足を伸ばすことになった。
「ちょっと遠いけど、この辺では唯一の冒険者ギルドがあるの。身分証とか、スキルの調査もしてくれるよ」
「冒険者……俺、やれるかな」
「心配しなくていいよ。登録するだけなら簡単だし。ほら、ハルトって魔物も倒せるし」
それを“俺の実力”って思われるのが一番困るのだが、今さら否定しても信じてもらえない。
そして俺たちは、のんびりした牛車に揺られ、半日かけて町にたどり着いた。
---
町の名前は「トアリス」。石造りの壁に囲まれた中規模の町で、村よりは人も多く、建物もしっかりしている。
そして、ラナが案内してくれた建物──冒険者ギルド──は、木製の大扉が目印の、ちょっとゴツい建物だった。
「いらっしゃい! ……あら?」
受付にいたのは、赤髪ポニーテールの女性。年は二十代後半くらいで、元気で気さくな雰囲気を持っている。
「おや、ラナちゃん。今日はどうしたの?」
「この人、登録をお願いしたくて! ハルトっていうの」
「はじめまして、ハルトです。いちおう旅人ってことで……」
受付嬢はにっこり笑い、「オーケー」と言った。
「登録には簡単なスキルチェックがあるけど、痛くもかゆくもないから安心して。こっち来て」
---
◆
俺は、ギルド奥の部屋に通され、そこに置かれた“鑑定の水晶”と呼ばれる球体に手をかざすように言われた。
「スキルとか加護の確認ができるの。名前とか職業も、ある程度なら反映されるよ」
「へえ……」
恐る恐る手をかざす。水晶が淡く光り始め、やがて文字が浮かび上がった。
---
▼【鑑定結果】
・名前:ハルト・サトウ
・職業:旅人(???)
・加護:神域の干渉(識別不能)
・スキル:オートアブソープション(説明不能)/絶対防衛(説明不能)
---
「え、なにこれ……?」
「……ッ!」
受付嬢が息をのむ。
「……これ、ギルド長に報告案件かも。加護もスキルも識別不能、しかも“神域”って……普通じゃないわ」
「普通がいいんですけど!」
やばい、バレた。やっぱり俺、普通じゃないんだ。
---
◆
そのあと、正式にギルド登録は完了した。ギルドカード(身分証)も発行されて、いちおう“旅人級冒険者”という身分ができた。
とはいえ、受付嬢──名前はミリアさん──はやたらと目を輝かせながら言ってきた。
「ハルト君、しばらくこの町に滞在してもらえる? 冒険者としての実力を、ぜひ見たいわ」
「……俺、ただ平和に暮らしたいだけなんですが……」
「それなら、田舎の警備クエストとかどう? 安全だし、報酬も出るわよ?」
つまり逃がしてくれないらしい。
そしてその帰り道。
「……すごいね、ハルト。識別不能って、そんなに特別なことだったんだ」
「はは……全然実感ないけどね。俺、なにも自分でしてないし」
「でも、村を救ってくれたのは事実だし。私も……助けられた」
そう言って、ラナは少しだけ照れたように微笑んだ。
「……ありがとう、ハルト」
風が吹いて、ラナの耳が揺れた。
──ああ、俺、ほんとに異世界に来たんだな。
そんな実感が、ようやく胸の奥に湧いてきた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
あと、感想もお願いします!