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第2話『獣人の村と、もふもふ少女(とまた魔物』」


 初めて訪れる村は、のどかで穏やかな場所だった。


 草原の小道を歩くことしばらく。見えてきたのは、木造の簡素な建物が並ぶ小さな集落。家の屋根にはわらが敷かれ、土で固められた道路を、馬車がゆっくりと走っていた。


「……うわ、ほんとに“異世界”って感じだ」


 俺の独り言に答える者はいない。当然だ。俺はここで知り合いなど一人もいないのだから。


 にもかかわらず──村に入って数秒で、視線が突き刺さる。


「……あれ、人間?」


「でも変な服着てる……」


「冒険者? いや、子どもじゃ……?」


 子ども扱いはやめてくれ。


 村人たちの視線を受けながら、おずおずと歩を進めていると──


「きゃっ!? あなた、大丈夫!?」


 不意に、ぱたぱたと駆け寄ってきた少女がいた。


 耳が、ぴょこぴょこと動いている。


 髪は薄茶色で、腰まで届く長さ。その頭には、ふさふさの犬のような耳。腰には同じくふさふさのしっぽ。──獣人だ。まごうことなき、異世界ファンタジーの住人。


「あ……ああ、大丈夫です。たぶん」


「たぶんって……え? ケガは? 服、ほこりまみれじゃない。っていうか、裸足!?」


 そう言われて気づいた。確かに裸足だった。どうりで草原を歩くのが痛かったわけだ。


「私、ラナって言うの。ここの村で薬師をしてるの。……とりあえず、うちに来て!」


 ぐいっと腕を引かれて、俺はそのまま連れていかれる。まるで初めて会った人に懐いた迷い犬みたいな気分だった。



---



 ラナの家は、村の端にある小さな薬草小屋だった。


 薬草の香りがほんのりと鼻をくすぐる中、俺は椅子に座らされ、タオルで顔を拭かれ、足を洗われ──気づけば完璧に世話されていた。


「で、あなた、名前は?」


「……あ、ハルト。サトウ・ハルト。なんか、いろいろあって……気づいたら草原にいた」


「うーん……記憶喪失?」


 違うけど説明できないから、否定はしない。


 とりあえず「気がついたらこの世界にいた系」で押し通すことにした。実際そうなのだから、あながち嘘でもない。


「まあ……助けてくれてありがとう。なんか、あったかくて……安心した」


「ふふっ。村の人はみんな優しいよ。あなたが悪い人じゃないなら、歓迎するよ」


 ラナが笑うと、獣耳がぴくぴく動いて、それが妙にかわいらしい。やばい、癒やされる。


「ところで、ハルト。魔物に襲われたりしてない?」


「ん? ……まあ、一匹」


「えっ!? 一匹!? 大丈夫だったの!?」


「なんか、気づいたら爆発してた」


「……」


 ラナはポカンとしたあと、急に真顔になって俺を見つめた。


「えっと、もしかしてあなた──“加護持ち”?」


「加護?」


「うん。神様に祝福されてる人。例えば《風の神の加護》なら、風の魔法が得意になったり、《力の神の加護》なら腕力が上がったり……。それによってスキルや能力も違うの。大抵は神殿で判別してもらうんだけど」


「へえ……あ、そういえば、ステータスに“加護:???”って書いてあった」


「な、なにそれ!? 識別不能の加護なんて、聞いたことないよ!」


「まじで?」


「うん……あの、ハルト。もしかして、すごい人なんじゃ──」


「いやいや! 俺はただの一般人です! ただ、ちょっと運がいいだけかもしれない!」


 あわてて否定した。でも、ラナの目は「絶対それだけじゃない」という疑惑に満ちていた。



---



 その日の夕方。


 村の広場が、騒がしくなった。


「村の外に魔物が現れたぞー!!」


「子どもたちを避難させろ!」


 どうやらまた魔物が来たらしい。村の門の向こうには、さっき俺が倒したのと同じような黒い狼が二匹、低く唸りながら歩いていた。


「……またあいつらかよ。デジャヴ?」


 俺はラナと一緒に避難する……つもりだった。


「ハルト!」


 ラナが俺の手を掴む。走ろうとした、その瞬間。


 狼の一匹が、ぐるると唸ってこちらを見た。


 ラナが、足を止めた。



 足が震えている。


 このままだと、ラナが──


「ちょっとだけ、下がってて」


 俺は、ラナを後ろに庇うようにして前に出た。足は震えていた。何をするかなんて、俺自身もわかってなかった。


 でも──


「やるしかねぇじゃん、こうなったら」


 そうつぶやいて、一歩、前に踏み出す。


 その瞬間だった。


 光が、俺の足元から広がった。


 ──ズドォォォン!!


 再び、爆音とともに地面が弾け飛ぶ。光の奔流が、狼たちを呑みこみ、何も残さなかった。


 俺は、ただ立っていただけだったのに。



---


▼ 新たな称号を獲得しました

・【守護者(仮)】

・【ラナの恩人】



---


「……は?」


 またこれか。


 振り返ると、ラナがぽかんとした顔で、俺を見ていた。


 その瞳に、なにかきらきらしたものが浮かんでいたのは──

 気のせいじゃ、なかったかもしれない。



「面白かった!」




「続きが気になる、読みたい!」




「今後どうなるの!!」




と思ったら




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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!




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何卒よろしくお願いいたします。




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