大団円
唐突ですが、全く違う世界のお話。
お決まりの?
お約束の?
ありふれた?
にしようとしてマス。
帝国歴259年。
金色帝の御世が始まる5年前、わが帝国は存亡の危機に立たされていた。
魔族と龍族が手を取り人類の殲滅作戦を開始してから3年の月日が経っている。
前帝が命をかけて作った結界は猛攻の前に崩壊寸前であった。
ただひとつの希望は、行方の知れない勇者である。
彼は前帝が結界を作るまでの期間僅かな手勢で敵の侵攻を防ぎきった。
しかしその代償は大きく荒廃した大地と帝国の民は人口の3分の2を失っていた。
傷ついた勇者は自分のふがいなさに恥じ旅に出たのは2日前。
結界が崩壊する前に成すべき事はふたつ。
エルフ族との同盟締結と勇者を中心とした帝国軍の再編である。
世界の命運をかけた賽が振られようとしていた。
ー帝国創世記3章 光のときより
侵攻の5日前。
皇女ミアはまだあどけなさが残る帝国最後の収束魔法使い手である。
彼女は、エルフの指導者ツキナと会談の機会を獣人最速の少年レオンの仲介で得た。
「ミア皇女殿下、短刀直入に申し上げます。
もう時間がありません、勇者様の行方はまだ分からないのですか?」
エルフ族と獣人族にとっても魔族と龍族の脅威は迫っている。
後に銀髪の女神と称えられるツキナは、魔族に壊滅的な被害を受け
散り散りになっていたエルフ達をまとめ上げ再び反撃の機会を伺っていたが
龍族と手を組まれた以上エルフだけではなすすべはない。
希望があるとすれば勇者。
「それについては後程、先ずは斥候からの情報です。」
・・・
「以上が、わたしの知る敵戦力です。
先程の情報も鑑みると総攻撃を仕掛けてくるのは、あと5日と見て良いでしょう。
魔族だけならともかく龍族の力は強大で対抗出来る戦力にも限りがあります。」
ツキナの戦略眼は正確無比、冷静に続けて話す。
「現状前線で直接対抗出来るのは
帝国将軍殿、獣人族の高位戦士が3人、そしてエルフの上級魔道士2人、最後にここに居る3人。
このメンバー以外は防衛の結界を張り続ける事だけに集中させるしかありません。
これも時間稼ぎにしかなりませんが。」
レオンとツキナはミアの顔を見つめる。
ミアは大きく溜息をつき、「勇者様の向かった先は転生の迷宮です。」
ツキナに戦慄がはしる。
レオンには何のことだか分からない。
「あの試練に挑んだのですか!なぜそれを先に・・・
大博打にもなりません、存在が完全に消滅してしまうのに。」
「確かに今まであの試練を乗り越えた者は居ません。
かつてエルフ最強を誇ったあなたの父君でも戻れなかった事はわたくしも知っています。」
ツキナは、落ち着きを取り戻し冷静に答える。
「その通りです。結果わたし達は壊滅的被害を受け、故郷を失いました。
確かに試練を乗り越え帰還した者は生まれ変わり新たな力に目覚めるといわれていますが
それも神話の時代のおとぎ話。」
「それが、あの方が望んだことだったのです。」
悲痛な叫びに似た声が漏れる。
「前帝も国王陛下も何度もお止めしました。
しかし魔傷が治って歩けるようになった途端立ち去られてしまいました。
このことは秘匿すると陛下がお決めになったのです。」
言葉の端々から、後悔の想いが伝わる。
尊敬し、師と仰ぎ目標として修行に明け暮れていたのに。
自分も一緒に試練に挑むと言って何度困らせたか。
それなのに勝手にいなくなって。
「あのさ、よく分かんないけどみんなで迎えに行こうよ勇者様。
あの方は、勝手にいなくなっちゃうような人じゃないよ。
ツキナ様もご存知でしょ。」
絶望に打ちひしがれる壊滅寸前のエルフの里から救い出してくれた勇者の強さと優しさをツキナは思い出す。
ほほに一筋の涙が流れていた。ただ、会いたい。
レオンだって同じだった。親に捨てられた自分と一緒に冒険をして強くしてくれた勇者様。
あの人に会えるんだったら救えるんだったら、何もいらない。
「ツキナ様、レオン、そして私。怖いものは何もありませんね。」
二人の手をとり固く結ぶ。
傍らにいた帝国将軍コゴロウに今後の防衛体制と
エルフ族との一時的な同盟の内容を皆に伝えるように伝えた。
「迷宮まで2日かかります。今すぐに発ちます。
すべては未来のために。」
迷宮最下層。祭壇には重苦しい気配が長く続いている。
壁画には太陽、聖剣、聖杯、聖杖、聖印の象徴たる
主の姿とその4人の従者が描かれていた。
勇者ライトは最下層で癒えていなかった胸の魔傷の悪化で苦しんでいた。
後は盃に聖水を注ぎ飲み干すだけだというのに壁画の主がそれを妨害するような
殺気を放ち魔傷が裂けて苦しむ様子を嘲り笑っているとライトは感じていた。
「このまま消えるわけにはいかない!何としても・・・」
気力だけで2日間耐えていたが限界も近い。
「レオン、ツキナ、ミア、みんな、すまない・・・」
意識が薄れていく。ここまでか。
「勇者さまっ」
薄れていく意識の中で来るはずのない3人の声が
聞こえる。
ツキナが手を取り浄化の魔法をかける。こんなに苦しんでるライトを3人は初めて見る。
どれだけ痛みに耐えていたのか想像がつかない。
「全く、せっかちなんだよライトは」泣きながら
レオンが、涙目になって抱き付く。
ツキナも「何もかも貴方様がお一人で背負う必要はないのです。わたしだってお役に立ちたいんです。」と浄化の魔法に渾身の力を込める。
「勇者ライト。ひとりで転生の試練に挑む事は皇女としても一番弟子としても許しません。先ずは抱き付く2人から離れて下さい!」
顔を真っ赤にしてミアが叫ぶ。安心したせいかそれとも泣きそうなのかわからないが、皇女の威厳の手前隠しているのはバレバレであった。
意識がはっきりしてきた勇者ライトが
「まさか一緒に挑むおつもりですか!それだけは出来ません。」
と言ってひとりで盃を手にしようとした時、
壁画が光り、その中から主が飛び出してきた。
「ようこそ!
命知らずのゴミくずども。
生まれ変わって新たなちからを得たいが故に
もがき抗う者ども。
僕を楽しませてくれるなら
時空を超えて過酷な人生を送って
その挫折を糧としてみて。」
主に続いて現れた従者がそれぞれ杯を持ってひとりひとりに杯を手渡した。
「お姫様は絶望的な孤独を
エルフさんは近しいひとの悲劇を
獣人くんは極悪な親を
勇者は理不尽な無能を」
ライトは覚悟を決めて叫ぶ。
「必ず帰りましょう!そして希望を!」
皆頷き、一気に杯を飲み干した。
そして、全員その場に倒れた。
それから・・・ほぼ1日が過ぎた。
先ずレオンが目覚めた。
レオンは何故か紫色の革製のカバンを持っていた。
次はツキナが目覚めた。
彼女の手にはコインが握りしめられていた。
ミアが目覚めた時は何も持っていなかったがその瞳の色が金色に輝いている。
まだ勇者は目覚めない。
三人は顔を見合わせて、自分が全く違う人間でとても長い間過ごしていた事を思い出していた。
それはそれぞれ自分の年齢と同じだった。
「勇者様は、あちらの世界でも努力されているんでしょうね。」
ツキナが呟く。
ミアはとても不思議な感覚で勇者を見つめる。
自分や目覚めた2人にも新たなちからが備わっているのが分かるのに彼はむしろ弱くなってしまっている事がはっきりと分かる。
そしてそれが自分が守りきれなかった人々への後悔からきていることも。
あなたはいつもご自分を責めていたんですね。
「大丈夫。あなたには私達が一緒にいます。」
じれったくなってきたレオンが涙目で叫ぶ。
「早く帰って来てよ!ライトッ」
「おぉ、いい感じだねぇ、ま、今回勇者様にはボッコボコにして廃人になってもらおうと思ってたんだけど。なかなかどうしてコイツ頑張ってたんでこっちも根負け。」
壁画から主と4人の従者が再び現れ、
「お目覚めの時間だよ」
白い光がライトを包んだ後、その光はあらゆる色に変わってゆく。強く、優しく、雄々しく。
その光はライトが抑え込むかのように全てライトの身体の中に吸収された。
「神話の伝承にあった大いなる覚醒」
ツキナが涙を流して見つめる。
ライトは目覚めの直前自分とよく似た男に会った。
初めて会った筈なのにずっと前からこの男の人生を知っている気がする。
彼は真っ直ぐこちらを見て近寄る。
彼は自信に満ちた力強い瞳でてを差し出してきた。
思わずてを取った瞬間2人の意識が重なり合う。
目が覚めたときにはピエロが目の前でギンギンに睨めっこされていた。そして、「ふたりの人生でひとつ」と言って消えた。
確かに今の自分はライトなのか頼士なのかは分からない。言えることは勇者として新たな次元にいること。
立ち上がり、壁画の方を見る。
使いの1人が現れ、剣が渡された。
剣を持つには似つかわしくない優しそうなメイドさんの姿だったが、何処かで会ったかな?
「大いなる覚醒が成された時、新たな力とともに仲間との絆も深まると言われていました。私達は乗り越えたんですね。」
ツキナがかすれがすれ話す。
「お目覚めのところ悪いけど、忙しいわよ。全部終わったら、ご馳走してあげる。」
「お帰りライト。また一緒に冒険するんだから、
さっさとあいつらぶっ倒してこ。」
4人は迷宮を後にして、戦場に舞い降りる。
その後の活躍はまだ何処かで。
ピエロさんの声のイメージは俳優の草刈正男さんでした。
そのイメージで
「おしまい」
悩んでたら大分時間だ経ってしまいました。
タイトルにそれともとか付けて、色々想像した結果
おちがこうなったと言うべきかな
とにかくお読みいただき誠に誠に、誠にありがとうございました。




