表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

008 絶対に許せないヤツ

「はぁ……!! はぁ……!! ふぅ~……ふえぇ~……」


 レベル51以上じゃないと入場出来ないって制限されてた理由が、嫌でも理解出来たわ!! ヴェノムゴーレムどころか、その周囲にうようよ居るアンデッド系のモンスターがあまりにも強すぎる!! まあ攻撃は受けてないからどれぐらいのダメージを受けるかまではわからないけど、それでも『当たったら死ぬわこれ』って攻撃がバンバン飛んでくる!!


『【汚染されたアンデッドプリースト】の情報がモンスター図鑑に登録されました』

『【実験体H&W001型・ライカンスロープ】の情報がモンスター図鑑に登録されました』

「はぁああ~……」


 どうにか逃げ切ったけど、いやぁ~相手にしたくない。実験体H&W001型・ライカンスロープってモンスターはその名の通りの狼男。速い、ムキムキ、正気じゃない。ただ、意外と近くまで寄らないと反応しないから、距離を取って移動すればスルー可能な感じ。インパクト空中移動には追いつけなかったから、こいつはまだ逃げ切れる。

 問題なのはアンプリよ、アンプリ! こっちを発見するとポイズンキャノンっていう魔法をガンガン使ってきて、紫色の砲弾みたいなのをバンバン飛ばしてくる。もうね、当たったら死ぬなとしか思えなかった。とにかく射程距離がおかしいから、絶対に見つかっちゃダメ。幸いにもライカンスロープよりも感知距離が狭くて、動きもそんなに速くない。注意すればスルー可能……。


「でも、どうしよ~……」


 だけど問題なのはね、一心不乱にルナリエット近郊を逃げ回っていたら、ここがどこなのかさっぱりわからなくなったってことかな!! それとヴェノムゴーレム、なんか紫色の液体がべちょべちょって漏れてる気持ち悪い紫色の石巨人!! メチャクチャ近寄りたくない……。あれを25体も倒せって? 無理無理無理、絶対やりたくない。叩いたらなんか液体が飛び出て、べちゃっと体に付きそうだもん。しかもなんかここらへん全体的に、臭い!! 腐臭!! 嫌な臭いがするー!!


「…………ん~」


 臭いのはどうしようもないから冷静になろう。まずヴェノムゴーレム、死都ルナリエットの崩れた外壁沿いにいっぱい居る。私が今隠れている場所も外壁の残骸の中で、外はヴェノムゴーレムがうようよしてる。そのゴーレムよりも外周に居るのがアンプリで、その更に外側がライカンゾーンって感じ。何をするわけでもなくぼーっと立ってて、侵入者を発見すると全力で攻撃してくる。

 そしてルナリエットの内部は……街は瓦礫の山って感じだけど、中央付近には大きな城みたいなのがしっかりと残ってる。その周囲には鎧を着た騎士みたいなのがいっぱい居るんだけど、こんなところでぼーっと立ってるってことは、まず間違いなくあれらも屍の騎士だと思うんだよね。あれはまだ接近してないから確定情報じゃないけど。

 ざっと見た感じ、この4種類がここのモンスターかな? あの騎士は勝てそうにないし、ヴェノムゴーレムも勝てそうにない、ライカンは戦闘となれば身体能力の差で負けそう、アンプリは接近さえ出来ればどうかな~ってところ……。うーん、どれも相手にしたくない!! とりあえずこの瓦礫の隙間で休憩してから考えよう。


「ふぅ~……」


 それにしても、瓦礫に大きな隙間があって助かったわ。ここに居ればゴーレムも反応しないみたいだし、外よりも相当臭いがマシ。死都ルナリエットの名に偽りなしだわ、都市どころかほぼ全てが死に絶えてるんだもん。困ったなぁ~…………。

 ん、それにしてもこの瓦礫の隙間、随分と中が広くない? 奥は暗くてよく見えないんだけど、音の反響からして相当に広いような……。照らすものなんてないし、暗いところに目が慣れるのを待つしか……あ!! そうだ、装備出来なくても取り出して持つぐらいは出来るよね!? よし、やってみよう。


『【★煉獄の大斧】を取り出しました。装備条件を満たしていないため、武器として使用することは出来ません』

「おお~……」


 斧に炎を纏ってるエフェクトついてたから、もしかしたら松明代わりになるかもって思ってたけど……本当に松明として使えるとは。まあ、松明にしては重すぎだけど。それに武器としては使えないから、攻撃モーションを取ろうとしただけで手から弾かれちゃうんだけど……松明としての利用ならオッケーってことね。


「やっぱり、凄く広い……奥に行ってみよう……」

『【死都ルナリエット】に入場しました』

「わっ! あ、一応入場した扱いになるのね……」


 ん~びっくりした……。こんなんでも一応ルナリエットへ入った扱いになるのね。中にモンスターは居ないみたいだけど、気を付けて進まないと……。ここじゃ天井が低すぎるからインパクト空中移動は使えないし、こんなところでライカンとかに出会ったら詰みだもんね。


「うわ~……」


 瓦礫の奥、めちゃくちゃ埃っぽい石造りの廊下をトコトコ歩いて奥まで進んできたんだけど、大広間に下り階段があるんですけど~……。他に出口はどこにもなかったし、なんなら窓すらなかったわ。これ下に行っても大丈夫かなぁ~……。まあ外にはほぼ希望がないし、進むしかないんですけど。この先に何があるのかも気になるし、ここで引き下がるわけにはいかないでしょ!


『【死都・禁足地】に入場しました』

「は……!?」


 き、禁足地!? 足を踏み入れるなってこと!? 確かにメチャクチャ埃っぽい場所で誰も足を踏み入れてなさそうな雰囲気だったけど、まさかまさかの禁足地とは……。そんな場所に外から侵入出来るってどうなのよ。むしろここ、ルナリエット内部から入場する方法がないんじゃない? どうしよう、もう一度ここへ訪れようと思っても、正確な場所がわからないわ。あ、そうだそうだ! マップにピン留めとか出来ないかな!?


『【タウンマップ】を開き――――開くことが出来ませんでした』

「…………」


 凄い量のノイズが走って、マップが真っ黒になっちゃった……。こ、怖いんですけど……。禁足地を出たら開けないかな~……。


『【死都ルナリエット】に入場しました』

『【タウンマップ】を開き――――強力な妨害効果により、この地域ではマップを開くことが出来ません』

「はぁ~……」


 そもそも、死都ルナリエットでマップを開くという行為が不可能みたいですわね!! 全く、何が冒険者支援システムよ~!! 役に立って欲しい時に全然役に立たないじゃないの!! もう良い、ここで死んで戻ってこられなかったら諦める!! そもそも死んで復活した場合はターラッシュに戻されると思うから、ここに戻ってくる方法がないんだけどね。またディッツさんに『踏み台になって~』とは言えないし。


『【死都・禁足地】に入場しました』

「…………よしっ」


 ええい、どうにでもなれー!! とりあえず下の階に何があるのか、それだけでも知りたい!!

 とりあえず慎重に、誰もここへ入ったことがないからなのか、とにかく埃が凄いから……。一歩階段を下りる度に、埃がぽふっ……ぽふっ……って舞うのよね。激しく動いたら埃まみれになって息が出来なくなりそう。


「……この松明、斧の火を移せるかな。あ、燃えた……凄く古そうだったのに……」


 暗いと怖いし、火を移せそうなものは全部燃やしちゃお。下りる度に明るさが増して、ほんのり安心感が湧いてくるわ。まあ、相変わらず階段の先はよく見えないんだけど。

 それにしても、禁足地か~……。死都と化しているこんな場所自体がそもそも禁足地って感じなのに、そこから更に禁足地と名前が付いてるのは……絶対、ヤバい場所だよね~。魔王が封印されいる場所とかだったらどうしようね? まあそんなはずないか。それだったらあの騎士さん達が全力で止めにくるだろうし、そもそも何人たりともここへ近づけないだろうしね。


「ん……? ここで、終わり……?」


 あら、下の階に到着しちゃった。それとも踊り場かな? えっと、燭台とか松明とか、なんでも良いから燃やせるものは~……あったあった、明るくなぁれ~。


「ん~……? んんんん~……??」


 あれれ? まさかまさかの空っぽ!? ただただ何も無い広い空間になってるだけ……いやいや、そんなはずないよ~。禁足地だよ? 踏み入れちゃいけない場所だよ? 長年誰も見つけてないような、盗賊に荒らされてる形跡すらないそんな場所に何も無いだなんて、そんなはずがないでしょうが~。


「あれだ、壁に隠し通路とか!」


 とりあえず壁を叩いて回ろう。もう松明は……あ、松明じゃなくて斧だったね、ごめんごめん。これは収納しておこうか。壁を叩くなら、やっぱりハンマーだよね! 両手槌で壁を手当たり次第ポコポコ叩きまくってみよう!


「何かないかな~。ん~……」

『――――汝、煉獄を望む者なりや?』

「わああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ば、びょぉ、びゅ!? で、出たぁ!! お化け!? 誰!? 今の声は何ーーッ!?


『汝、煉獄を望む者なりや?』

「れ、れれ、煉獄……!?」

『汝、煉獄を望む者なりや?』


 なんなのよ、この煉獄botは!! 煉獄なんて望んで……あ、似たようなものなら望んだかも……。インフェルノモードで開始を選んでたんだったわ!! 正直、煉獄のミノタウロス以降はどこらへんがインフェルノモードなのかよくわからないまま進行してたけどね! だって、他の人と比べて特に何かが変わっているようには感じなかったもん。同じスペースで遊べて、同じモンスターを狩れて、街だって同じ場所で過ごせたし……。


『アラート:【インフェルノモード】で開始したプレイヤーの為、【試練の迷宮】【困難の迷宮】【苦痛の迷宮】【破滅の迷宮】は選択出来ません』

「ええ!?」

『汝、煉獄を望む者なりや?』


 あ、冒険者支援システムがちょっと役に立った!! もしかして、ここでこの声に返事をすると、難易度に対応した迷宮にチャレンジ出来るってこと? インフェルノモードだと、このモードより簡単な難易度の迷宮には入場出来ないんだ!! じゃあ、どんな迷宮なら挑戦出来るんだろう……? ああ、ずっと言われてるじゃんね。煉獄(・・)の迷宮か。


「れ、煉獄の迷宮……? やってみたいんです、けど……?」

『覚悟なき者よ、去れ』


 あ゛? 去れ? 人がせっかくやってやろうって気になったのに、去れだぁ!?


「はああ~!? それだけ聞きまくってきたくせに、こっちが下手に出れば去れだぁ~!? 人がせっかくこんな埃っぽい場所に足を運んであげたっていうのに、帰れってことぉ!? いいよもう、一生ここで埃まみれのまま、来るか来ないかもわからないインフェルノプレイヤーを待ち続けて朽ち果ててろ~!! 二度とこないわ、ば~か!! 入口も破壊して塞いでおいてやるわ!!」

『待て』

「待ちませ~ん。帰りまーす」

『待ってくれ、待ってくださいお願いします……』


 やだ、帰る。私、お前のこと嫌い。


『どうかお待ち下さい。それほどまでにお怒りになるとは思いもしませんでした。お願いします、待ってください……』

「やだ。嫌い」

『せめて、せめてお話だけでも……!』

「じゃあ、謝って」

『も、も……』

「も?」

『申し訳、御座いませんでした……!!』

「何が? どう? 何に対して? どういう理由の謝罪か理解出来てる?」

『…………え、偉ぶった態度で、冒険者様に、大変無礼な発言を致しましたことを、心より謝罪申し上げます!!』

「ふぅ~ん……」


 ちょっとは弁えたようね。よろしい、謝罪を受け入れてあげるわ。


「謝罪を受け入れてあげるわ。その代わり、同じようなことをしたら本当に帰るから。あと入り口も埋めるわ、念入りに」

『はい! このようなことが二度と起こらないよう、再発防止に努めさせて頂きます!!』

「で、煉獄を望むかってどういうこと?」

『煉獄の迷宮ですね! 誠心誠意、説明させて頂きます! 少々お時間を頂いてしまいますが、この後のご予定については~……』

「大丈夫よ、説明して」


 すっかり立場を弁えたわね。最初からフレンドリーに声をかけてくればこんなことにはならなかったのに、声の主は本当に愚か者ね!

 まあまあ、謝罪を受け入れた以上、これ以上文句を言うのはやめてあげるわ。それより、やっぱりここで挑戦出来るのは煉獄の迷宮なのね!! それ、詳しく説明してちょうだ~い!!


『煉獄の迷宮は、挑戦する度にダンジョンの内部構造も変化し、モンスターやお宝の配置もランダムに割り当てられます! 最深部を目指して進み続け、最奥にて待っているボスの――』

「ストップ!!」

『はい、なんでしょうか!!』

「ボスの名前、伏せて。ネタバレまでしろって言ってない」

『こちらの配慮不足でした!! 申し訳御座いません!!』

「よろしい、続けて」


 もう、油断するとすぐにこれよ。ボスの名前がわかったら面白くなくなるなんてもんじゃないわ! あの流れだと絶対に口走っただろうし、割り込んで止めて正解だったわね。


『ルナリエットの煉獄の迷宮は、マグマが流れている巨大洞窟や、宝石や鉱石で埋め尽くされた巨大洞窟空間となっています! 地形特有のダメージを受けがちになりますので、戦闘する場合は周囲の地形にご注意ください!! また、ルナリエットの煉獄の迷宮』

「ねえ、名前長い。ルナリエットの煉獄、ルナフェルノで良くない?」

『…………ルナフェルノ内部で死亡した場合、リトライかリタイアを選択可能です! リタイアの場合は踏破階層に応じたレアリティのアイテムをいくつか持ち出すことが可能で、倒したモンスターの数と種類に応じて、経験値も付与されます、はいっ!! リトライの場合、死亡前にダンジョン内部で入手したアイテムは全て廃棄され、レベルも入場時の状態に戻ってしまいますが、それ以外のペナルティはなしで再挑戦することが可能です。あ、リトライすると内部構造もモンスターもお宝も全て変更されてしまいますので、ご注意ください! それと、リトライに回数制限は御座いません!』


 リトライが可能! なるほど、それは良いシステムだわ。リタイアした場合はアイテムと経験値の一部が貰えるのね……。一応、頭に入れておくわ。


『い、如何でしょうか~……? あ、推奨レベルは70以上の見込みですが……』

「1つだけ教えて」

『は、はい!! なんでしょうか!!』

「煉獄のミノタウロス、出る?」

『もちろんです!! 彼らは煉獄の番人、最序盤から彼らと遭遇することもあるでしょう!! もし彼らに出会ってしまったら最後、あの巨大な大斧で肉体を真っ二つに切り裂かれ――』


 ふぅ~ん……。出るんだ、獄ミノ……うっふっふ……!! 出るのね……。


「――やるわ」

『そうですよね、今の話を聞いてしまったら怖気付いて挑戦するはずありませ……』

「やるって言ってるの。早くやらせて」

『え、やるんですか……? 失礼ですが、貴方はまだその、ふふっ……。弱っちいように見えるのですが……』

「入り口を埋められたいの?」

『はい! 転送させて頂きます! どうかご武運をー!!』


 狩れる(・・・)とわかっているものが出るのに、挑戦しないはずがないじゃなぁ~い!! リトライし放題なら、やることは当然決まってる……。

 ああ、楽しいし楽しみ!! 勇気を出して堂々とし始めてから、全てが良い方向に転がり続けているわ!! ペルシアちゃんの教えを守った賜物ね!! ペルシアちゃん、これからも全力で推します!!


『アラート:【ルナリエット・煉獄の迷宮】――訂正中――【ルナフェルノ】に入場します……』

『お、お友達にもここのことを広めてくださいね!? 絶対、絶対ですよ!? どうかお願いします、もう何百年も誰もここに』

『――――転送』


 え? なんか言った? 友達がどうこう聞こえたけど、私には友達がいないから関係ない話題だと思うわ。さあ、ルナフェルノ……やらせて貰うわよ……!! まずは獄――。


『ヴェエエエエ』

「ご、ぉ……!?」

『煉獄のクラッシャーシープ(Lv.65)が【破壊の突進】を発動、クリティカル! 77,450ダメージを受け、貴方は死亡しました』

『到達記録1階。プレイ時間0分05秒。煉獄のクラッシャーシープ(Lv.65)に破壊された……』

『リトライしますか? リタイアし――リトライが選択されました』


 あいつ殺す。クラッシャーシープ、絶対に。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ただのシステム音声かと思ったらぼっち拗らせた案内人(?)だったのか〜。さすがウェーブちゃんキレると怖い。遺伝ですね…
母のようにいかれてて偉いねぇ
適正区域の大事さが改めて分かりますわね…… まあそもそもチュートリアルにイカれたモンスター置いている時点で今更な気もしますし、それに勝ったプレイヤーが来てるからもう何も言うまい状態ですけども! 臭いし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ