004 旅立ち
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【★煉獄の大斧】(レジェンダリー・両手斧・エンチャントスロット【◯◯◯】)
・【要求】純粋なSTR50以上
・【要求】純粋なVIT30以上
・【固有スキル】セルフバーニング・Lv3
・物理攻撃力+500
・魔法攻撃力+220
・【エンチャント】
┣なし
┣なし
┗なし
――煉獄の門番たる者が携えし大斧。非常に重く、熱を帯びている
強化可能・所有者登録【ウェーブ】・重量5.5kg
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わあ、つよーい。あのね? 普通の両手斧の物理攻撃力、60しかないんだけど。これ、500だって。どう考えても初心者が持っていい武器なはずがないよね。
それで、ドロップ入手した時限定で装備図鑑に情報が登録されるんだけど、ドロップするモンスターは煉獄のミノタウロス限定。生息地域は主に煉獄ダンジョンらしい……まあそうでしょうね。そしてその後にドロップ率って書いてあったんだけど、1.5%。
は? 1.5%……?
私はてっきりご褒美アイテムとばかり思ってたんだけど、たまたま……!! たまたま、1.5%を引き当てて入手しちゃったみたい……。でもなぁ、装備可能になるレベルが相当先な気がするんだよね……。
現在の私のステータスがね、HPが100! これは数値が0になると死ぬってやつね。そして魔法を使うために必要なマナポイントのMP、これはたったの10。初心者ヘルプに載ってた魔法の例でいうと、ファイアーボールが5も使うから2回しか使えないね。そして筋力、体力、敏捷性、技量、魔力、精神の6種の基本ステータスは全部5しかない!! レベルアップする度に3ポイント振り分け出来るみたいだから、最短でもレベル25まで上がらないと装備出来ない計算かなぁ?
それより経験値はどうしたのかなぁ!? ねえ、冒険者支援システムちゃん。私が貰うはずの経験値どこにいっちゃったのかなぁ~!?
『チュートリアルモンスターから2分間逃げ切ることに成功したため、経験値 10 獲得!』
『おめでとうございます! レベル2に上昇しました!』
「どこ、私の貰うはずだった経験値。出して。役目でしょ」
『経験値 10 獲得! おめでとうございます! レベル2に上昇しました!』
「おのれぇ……!!」
チュートリアルの最中は決まった経験値しか貰えないようになってるわ。どれだけモンスターを倒そうが関係なく、貰える経験値が完全に決められてるのですわね。頭にきましてよ。
まあでも? よーく考えたらこれは、運営からすれば想定されていなかったということ。つまり、普通の事態ではない……。私は運営の想定を一部超えた存在ということになるわね! 普通を超えた攻略ですって認められたようなものだし、それに免じて今回は見逃してあげるわ。ぐぬぬ……。
「はぁ~……。まあいいわ、次。まだチュートリアルあるんでしょ」
『では次に、効果的な回避方法を学びましょう。強制モーションから【ローリング回避】を実行してみましょう』
『【ローリング回避】は、僅かな時間ですが無敵時間が存在し――【ローリング回避をしよう】を達成しました! 経験値 20 獲得!』
『おめでとうございます! レベル3に上昇しました!』
まだ説明の途中でしょうがぁあああ!! しかもそんなの最初の方にやってるし、というかこっちを先に説明すべきでしょうが。はあ? このローリング回避って無敵付いてたの? あ、本当だ……発生してから0.05秒だけ無敵時間があるって書いてあるわ。ほんの一瞬過ぎてどうせ使わなくなるんだろうなぁ……。
『【ローリング回避】には上位スキルが存在し、戦闘傾向に応じて【幻影戦舞】【ミラージュステップ】【プリズムテレポート】などが習得出来ます』
「あっそ……」
なるほどね、こうやって基本的な強制モーションは使われなくなっていくんだ。上位スキルが存在するなら、わざわざ下位スキルを使うわけないよね~。
ローリング回避に上位スキルが存在するってことは、他の強制モーションにも上位スキルが存在しているってことだよね? いずれ使わなくなる運命って感じだなぁ~。
『強力な相手から逃げる方法を学んだ次は、自分に見合った敵と戦う方法を学びま――【中段攻撃を出そう】【上段攻撃を出そう】【下段攻撃を出そう】【50ダメージ以上を出そう】【クリティカルを出そう】を達成しました! 経験値 250 獲得!』
『おめでとうございます! レベル7に上昇しました!』
「雑ゥ!!」
やった、もうやった!! 50ダメージどころか1万ダメージさっき超えてた気がするわ!! んぁ~何もかもが雑だよぉ~このチュートリアル、こんなの絶対おかしいよ~!!
『では、武器について学びましょう。武器は最大6個まで装備が可能で、メイン武器やサブ武器に片手武器をセットした場合、それぞれ異なる武器種を装備することが可能です』
「あ、これは参考になるやつだ」
おお、チュートリアルが初めて役に立ってる……。片手武器ならそれぞれをバラバラにセットすることが可能なんだ。右手に短剣を持ったら左手も短剣じゃなきゃダメってわけじゃなくて、右手に短剣、左手に爪武器みたいなのも可能なのね。
『例として、右手に片手剣。左手に盾と、別々の武器種を装備出来ます』
「あ、そっか。剣と盾ならバラバラに装備するのが当たり前か……」
『両手武器は武器欄をどちらも埋めてしまうので、すべてを両手武器にした場合は最大で3個までしかセット出来ません。すべてを両手武器で埋めるのは得策とは言えません』
「得策ですぅ~!! 全部両手武器でも獄ミノ勝てますぅ~!! べぇ~だ!!」
『慣れない内は片手槌と中盾の装備をおすすめします』
「あんなのガードしたって意味ないでしょうが!!」
『では、装備を変更して――【装備を変更しよう】を達成しました! 経験値 300 獲得!』
『おめでとうございます! レベル9に上昇しました!』
あっはい。それももう、やりましたね……。これ、ハード以下の難易度だと別のモンスターが出て、それも2分避けるのとか割と余裕なんだろうなぁ。獄ミノだったから色々とおかしくなってるだけで……。
『防具やアクセサリーについては追々学ぶことになるでしょう。では最後に、消費アイテムの使用方法についてです』
「消費アイテム? ああ、ゲームだし……ポーションとかかな?」
『HP回復のポーションは赤色の液体が入った瓶、MP回復のポーションは青色の液体が入った瓶です。ユーザーインターフェースのアイテムタブから開き、確認して使用してみましょう。また、ポーションはショートカットに登録することも可能です。スキル等のセットとショートカットが共通のため、2種共にセットする場合はショートカットが8枠になります』
このゲームの悪いところね、ショートカット欄がカッツカツってところだと思うわ。まあなんでもかんでもワンタッチで使える、もしくは脳波コントロールでノータッチ操作が出来たらショートカットぽちぽちゲームになっちゃうし、仕方ないのかなぁ~? 10枠かぁ……増やせないのかな?
「ショートカットを増やす方法ってないの?」
『【消費アイテムを確認してみよう】が発生しました!』
「おーい、ショートカットを増やす方法ー」
『ユーザーインターフェースからポーションを確認してみましょう!』
「ショートカット!! 増やしたいんだけど!!」
『ショートカットはオープン状態です』
こんのぉぉポンコツ……!! なんでこの程度のやり取りが上手く噛み合わないのよ!! AIって人間より頭良いんじゃなかったの? このゲームの冒険者支援システムとやら、とんでもなくポンコツなんですけどぉ!!
『――ショートカットを増やす方法はねぇ、ごめんなさぁい無いのよぉ~♡ 課金しても増えないから、気をつけてねぇ~? 課金要素なんて、どこでも倉庫ぐらいしかおすすめしないわよ~♡』
「お゛♡ ペルシアちゃんの声……♡」
『――――ショートカットを編集しますか?』
「しない!!」
ポンコツシステムの代わりに、ペルシアちゃんが答えてくれた~♡ やっちゃ、やっちゃ、ぺっるしっあちゃ~ん!! そんな楽しい気分も、ポンコツシステムのせいで台無しよ。どうしてこんなに頭が悪いのかしら。嫌になっちゃう。なんならオフにしても…………ああ~、絶対このポンコツシステム不人気だわ。普通の人はイラッとしてオフにしてるな?
「まあまあ、戦闘関連は優秀だったし……。全部が全部ダメってわけじゃないから、オンにしておいてやるかしら……」
『ポーションを確認してみましょう!』
「あーはいはいはいはい!!」
わかったわかった、ポーションを確認すればいいんでしょ!! 全く、融通が利かなくてせっかちなんだからもう~……。ああ、これか。初心者用HP回復ポーション、初心者用MP回復ポーションね。レベル制限があるの!? レベル1から30までの間しか使用出来ません……最大HP・MPの33%を回復します……? 再使用待機時間、30秒!? はああ~……。なんという心許ない数値。しかも10個しかないし……。
『【消費アイテムを確認してみよう】を達成しました。経験値 300 獲得!』
『おめでとうございます! レベル10に上昇しました!』
『以上でチュートリアル・基本編は終了となります。初心者支給用の武器を両手武器は1個2点、片手武器は1個1点、合計6点になるまで自由に持ち出すことが可能です!』
『現在【普通の両手槍】【普通の両手斧】【普通の両手槌】を選択中、合計6点です』
ああ~……? ここにある武器、両手武器なら3個まで、片手武器なら6個まで持ち出せるってこと? ん~……正直使い慣れちゃったし、このままでいいかなぁー。
「このままでいいや、チュートリアル終わりにして」
『アラート:非常に難易度の高い武器を選択しています! 初心者向けの武器棚から最低1点持ち出すことを推奨します!!』
「こ の ま ま ! !」
『アラート:非常に危険な操作です!!』
「こー!! のー!! まー!! まー!!」
心配するのが3時間以上遅いんだよ!! この装備で獄ミノ倒したの、わかる!? わからんか、倒した判定になってるかギリギリ怪しいもんねぇ!! 経験値貰えてないし? このシステム、ポンコツだし。
『アラート:本当に武器選択を終了し』
「あ゛!?」
『武器選択を終了します。お疲れ様でした! 改めてようこそ! 冒険者様!!』
ああ~……やっと始まる~……。チュートリアル終わったばっかりなのに疲れた~……。ああでも、ここから何をすればいいんだろう? というかここはどこ?
『ターラッシュ南の平原に転送されました。ペルシアオンラインへようこそ!!』
『期間限定イベント【鋼鉄城、浮上】が発生しました』
『期間限定イベント【ブレードマスター・コジロー見参!】が発生しました』
『期間限定イベント【黄金の輝きに魅せられて】が発生しました』
『期間限定イベント【ファーストアニバーサリー】が発生しました』
『期間限定イベント【欲望の都市バビロニクスの異変】が発生しました』
うわ~、そんなに色々と発生されても初心者には何がなんだかわからないって……。ええっと、まずは鋼鉄城浮上の情報から確認し――――。
『ぴぎっ!!』
「おごっ……!?」
『スライム(Lv.1)から1ダメージを受けました』
おのれ……。今、私が情報を確認しようとしていたところでしょうがぁ……!! どうやら死にたいらしいわね、スライムとかいう青い粘液状のモンスター……!!
「ふぅんぬ!!」
『【下段振り下ろし】を発動、スライムに177ダメージを与え、撃破しました。経験値 3 獲得』
「雑魚め……」
ふん、一撃粉砕よ!! こんな雑魚に負けそうになるやつなんて、世界中探したって絶対居ないわ。子供ですら勝てるわね! 武器を使うのも馬鹿臭い、今度から蹴っ飛ばしてやろうっと。
それより、ここがどこなのかとか、まずは情報が欲しいわよね! 向こうに街みたいなのが見えるから、まずはあそこでゆっくり情報を確認してみようっと。さっ、移動移動~!