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七瀬真波は乗り越えたい  作者: エリーゼ
第二章

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026 壊滅的で抜群のセンス

◆ ◆ ◆


 どうしよう……。


「うんしょ……!! あわ~!!」

『にゃぁ~……』


 カリンちゃん……。


「あいたた~……」

『ピィ~……(痛そうだわ~……)』


 得意な近接武器が、何も無い!!

 まず盾、全部駄目。ガードしようとしたら全然違うところに構える。この時点で絶望的なセンスなのではと、嫌な予感がしたわ。

 そして片手武器、これも全部駄目。強制モーションで扱わせたほうがまだ隙が少ない。そんなレベルで大振り、無駄、外しまくる。

 最後に両手武器、これはもうね、絶望オブ絶望。斧を振り上げて、結構後ろの方に立ってた私のほうに攻撃を当ててくるとは思わなかった。後ろに目をつけてらっしゃいますか?

 強制モーションの扱い方もちょっとイマイチで、ダブルインパクトどころか普通のインパクトすらも上手く出来なかった。なんの才能もないのかと思いきや、カリンちゃんは近接武器が駄目なだけなのよ。


「大丈夫? ほら、やっぱり弓のほうが良いよ」

「カリンもウェーブちゃんみたいに格好良くぴょんぴょんしたいです~……」

『ピィ、ピィ~(無理よ、無理よ)』

「カンちゃんまで~!!」

『うみゃうみゃう……』

「そうね、うみゃうみゃうね……」


 カリンちゃんはね、出来ないことに憧れを抱くタイプの子なのよ……!! 憧れを憧れのままに出来ない、近接攻撃のセンスが皆無な努力家なのよ!! ただ、戦闘のセンスが壊滅してるわけではないの。


「だってほら、私はその、弓とかは全然駄目だけど、カリンちゃんは百発百中だったじゃない」

『チッチッ!(適材適所って言葉があるのよ、カリン)』

「うう~……」

「行動中の武器チェンジとか、ローリング回避とかはちゃんと出来るんだけどね~……」

「避けて撃ってばっかり上手くても格好良くないです~!!」


 避けて撃ってが格好悪いって? そんなことないと思うけど……。私はそういうのまわりくどいから苦手だけど、武器を変えながら避けつつ、動いている的に射撃を当て続けるって相当なセンスだと思うのよね。しかも射撃武器って普通、目線に合わせて? なんていうか、標的に狙いを定めて撃つもんじゃないの? クロスボウとかを腰で構えて撃って当てるっておかしいと思うんだけど。


「カリンもぴょんぴょんしたいです!! うさちゃん!!」

「ダブルインパクトね」

「カリンもぴょーんってしたいです~!!」

「う~ん……」


 ダブルインパクトで大地の古傷を飛び越したのを見せたら、どうしても自分もそれがやりたいって駄々っ子モードに入っちゃったのよ。素直な子だけど、やりたいことは絶対やりたいって譲らないのよね~ふふっ……。特殊な育ちみたいだし、普段から色々と抑圧され続けてて、解放されている時は自由を満喫したいって感じなのかな。駄々を捏ねてはいるんだけど、笑顔で楽しそうなのよね。可愛らしい駄々っ子ちゃんめ。


「他の方法がないか、開発してみようか?」

「え? 他の方法ですか?」

「そう、射撃武器版のダブルインパクトがあるかもしれないし、試してみる価値はあると思うのよね」

「なるほどです~!!」


 しょうがない、カリンちゃんのために新技を開発してみよう。ギルドハウスの地下訓練場の拡張機能を解放して貰ってて、訓練用武器が全種類使い放題になってるから、これでガッツリ練習と開発をさせて貰おう。チュートリアル待機マップにはなかった武器も全部揃ってるから、文字通り全武器種が使い放題よ。射撃武器は弾切れの心配もなし! まあ、訓練用武器の外への持ち出しは出来ないみたいだけど。


『【1R:訓練用クロスボウ】【1L:訓練用クロスボウ】【2R:訓練用クロスボウ】【2L:訓練用クロスボウ】をセットしました』

「カリンちゃん、さっきやってた武器チェンジ連射ってどうやるの?」

「はい! えっと、同じ武器を右手と左手に持って、撃った瞬間に同じ武器と急いで交換です!!」

「なるほどね?」


 さて、武器チェン連射から練習ね。これは装填数が1発だけの射撃武器で使えるテクニックで、手に持っている射撃武器を発射した瞬間、既に装填クールタイムが終了していて弾が装填されている武器に切り替えることで、元の武器の弾数を消費せずに弾丸が撃ててしまう謎の現象ね。

 残念ながら再装填クールタイムはしっかりと機能するから、大砲を連射するってことは出来なかったんだけど……。弾数1で再装填0秒とかのクロスボウなら、タイミングを間違えなければ連射出来るらしいのよね。ちなみに発見者はカリンちゃん。皆もやってると思ってたから、誰にも言ってなかったテクニックらしいわよ。


「お手本が必要ですか?」

「う~ん、そうね。もう一度見せて欲しいわ」

「はい! では、いきますよ~!」

『カリンが【ショット】【ショット】を【2R:訓練用クロスボウ】【2L:訓練用クロスボウ】に変更、【ショット】【ショット】を発動』

「こうです!!」


 何回見てもログがおかしい。ショットショットをクロスボウに変更って何? 1に登録してるクロスボウの弾数が減らず、変更後の2のクロスボウの弾数も減らずに発射出来てる。本当に意味がわからない。ただし1の武器のクールタイムは発生するから、クールタイムが重い武器だと連射出来ない。マスケット銃とか、ピストル系は連射不可能みたいね。


「こういうのも出来るんですよ!」

『カリンが【ショット】【ショット】を【1R:訓練用クロスボウ】【1L:訓練用クロスボウ】に変更、【スタイリッシュロールショット】【スタイリッシュロールショット】を発動』

「お~バク宙しながらでも武器チェン連射出来るんだ」

「繰り返せば何回でも撃てますよ!」

「へえ~凄いなあ~…………」


 なるほどね、そうやってくるんくるん回りながらでも撃てますよと。射撃には強制モーションがないから、自力で出せるまでタイミングやコツを覚えるしかなさそうね。


「よし、やってみるわ」

「カリンでも出来るので、ウェーブちゃんならきっとあっという間です~!」


 あのねえ、気軽に言ってくれるけど、こういうのってコツを掴むの大変なのよ? 最低でも1時間以上かかるって、私に期待し過ぎよ~? どれ、まずはやってみようかしら。


『【ショット】【ショット】を【2R:訓練用クロスボウ】【2L:訓練用クロスボウ】に変更、【ショット】【ショット】を発動』

「…………?」

『にゃんにゃうにゃにゃうにゃんにゃ~……?(ウェーブ嬢、それは……出来たのではないのかね……?)』

「あれ? 今のは良かった感じがします~!」

『チッチッ!! ピッ!!(良かったわ!! 凄く良い!!)』


 え? 嘘、今ので成功してる? うわ、何故か弾数が減ってない……。うわあ、出来ちゃった。これを繰り返して発動することで、無限に連射することが可能ってこと? いやぁ凄い……。これをマスター出来たら、煉獄の連中を蜂の巣に出来るんじゃないの? よ~し、もう1回やってみよう!!


「ちょっと、もう1回……」

『【ショット】【ショット】を発動、【1R:訓練用クロスボウ】【1L:訓練用クロスボウ】に変更しました』

「あ、今のは遅いです!」

「ええ……」


 え? 嘘、今のは失敗なの!? さっきと何も変わってない気がするんだけど……。うわあ、弾数がしっかり減ってる……。


「あ、あのさ、弾切れの武器に変更するとどうなるの?」

「発射出来ます~! 今手に持ってる武器に弾があるかどうかが大事なんです~!!」

「なるほど……」


 へえ~。弾は元々持ってたほうの武器を使って、発射は交換した後の武器で行われるのね。名前が異なる武器だと、どういう挙動になるのかしら。


「名前が異なる武器だと、どうなるの?」

「えっと、元の武器の弾が減って、交換した後の武器の威力で発射されます!」

「え、じゃあさ……」

「はい?」


 なるほど? あくまで弾は元の武器、威力は交換後の武器なのね? クールタイムが発生するのも元の武器……。つまり、え~っと……?


「両手でクロスボウを撃った後、大砲に交換したらどうなるの?」

「え!? え~っと……? た、試したことがないです!」

「ほほ~ん……?」


 元の武器がクロスボウを2挺、交換後の武器が大砲だったら……2発分の弾を大砲で発射する挙動になるんじゃない? つまり、大砲版ダブルインパクトってことよ!


「わああ~!! ウェーブちゃんが、悪い顔をしてます!! 格好良いです~!!」

「うっふっふ……!! ほら、カリンちゃんも大砲装備して。クロスボウダブルショットから、大砲に切り替えて発射よ!!」

「は~い!!」

『にゃんにゃぁぁぁ~……!!』

『ピィ?』


 ほれほれ、カナリアのカンちゃんと察しの良い黒猫男爵よ、危ないから避けてなさ~い!! 


『【訓練用大砲】【1R:訓練用クロスボウ】【1L:訓練用クロスボウ】【2R:訓練用クロスボウ】【2L:訓練用クロスボウ】をセットしました』

「カリンも準備出来ました~!!」

「さぁて、どうなるのかしら~!!」


 いくわよいくわよ~!! それ、発射~!!


『【ショット】【ショット】を【訓練用大砲】に変更――』


 ん、手応えあった! この変なログは成功のやつ!! 未だによくわかんないけど、ここで大砲を発射!!


『【訓練用大砲】を発射、反動で大きくノックバックしました』

「わああ~!? 訓練用の大砲の威力じゃないです~!!」

「どれ、普通に撃ったらどうなるわけ!?」

『【訓練用大砲】を発射、反動でノックバックしました』


 おお~!! 成功したら大きくノックバック、通常だとノックバックだけ。つまり……2発分撃ってるわ、これ!! クロスボウから持ち替えをして、大砲の威力で2発撃てるってことは、撃った後すぐに別のクロスボウに切り替えてまた同じことをすれば、一気に4発分撃てるってことじゃない!! しかも最後は1発大砲に残ってるから、合計5発も一気に撃てるわ!!


「お~、おっほほほほ~……!!」

「ウェーブさん!!」

「はい!!」

「通常の発射じゃなくて、スタイリッシュロールショットで撃ったら、どうなっちゃうでしょうか?」

「よし、おやりなさいカリンちゃん!!」

「はい、やってみます~!!」


 おお、すぐに応用編にいくじゃん。そうよ、バク宙しながら撃つのを大砲ダブルインパクトでやったら、もしかして2倍の距離をくるっと移動しちゃうんじゃないの!?


「いきますっ!!」

『カリンが【スタイリッシュロールショット】【スタイリッシュロールショット】を【訓練用大砲】に変更、【スタイリッシュロールショット】を発動――――』

「ひゃ――――」


 あっ……。


『カリンが2770の落下ダメージを受け、死亡しました。訓練中により、デスペナルティはありません』

『カリンが復活しました』


 撃った角度が悪くて、凄まじい勢いで上に発射されたわ……カリンちゃんが……。さながら、ロケット花火みたいな勢いで発射されていったわね。

 いや、というかね? これは間違いなく、撃つ角度を調整すれば20メートルなんて余裕で飛び越えられるわ!! クルッと回ってダブル大砲ショット……。ダブルクルットね!!


「凄いです~!! いっぱい飛びました~!!」

「ダブルクル――」

「ダブルキャノンロケットです!!」

「ダブルク……ダブルキャノンロケットね!!」

「はい! ダブルキャノンロケットです~!!」


 そうね、ダブルキャノンロケットね。良いネーミングだわ!! これでカリンちゃんも問題なく大地の古傷を飛び越えられるわね!! 泣いてないわ、泣いてなんかないんだってば……くっ……!! 良いネーミングね……!!


「でも、問題があります~……」

「え? これで飛び越えられそうだし、何も問題ないんじゃない?」

「あ~の~……」


 これで何も問題はなくなったと思うんだけど、何か問題が残っているのかしら?


「レベル10で装備出来る大砲は、凄く高いです~……」

「…………い、いくらぐらい?」

「えっと、オークションで見たら、最低額が……10億~……」

「ジュッ」

『ピィッ』

『ニャッ』


 そうね、衝撃的な金額よね……。あの、お母様? アバターを売ったお金で10億の大砲を買っても良いですか……? え、平日に学校をサボって課金して、それで金策して装備調達を……? うお、心が、私の精神にダメージがぁああ!! 絶対無理。

 よし、別の方法を考えようかしら。そうしたほうが良さそうね。課金してまで金策とか、絶対やりたくないもの。


「でも! ウェーブちゃんと一緒に冒険へ行きたいので!!」

『カリンが【★★リトルドラゴンキャノン】――名称変更【★★小籠包】――を装備しました』

「買っちゃいました~!!」

「はひゃああああああ~!?」

「えっへへ~!!」


 じゅ、10億シルバーするのよねぇ!? 買っちゃったのぉ!? な、なななな、なんというお金持ちなの~!? リトルドラゴンキャノンで小籠包……なかなかのネーミングセンスだけど……。


「あ、あのね、カリンちゃん……?」

「はい!」

「リトルドラゴンキャノンなら、小籠包じゃなくて……こう、小籠()って字にならないかしら……?」

「あっ」


 困ったわね、カリンちゃんの武器チェンジを見る度に、美味しい食べ物が頭の中でちらつくようになりそうだわ……。



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― 新着の感想 ―
うーん、この特化型ドジッ娘……。 でも手が届かないものほど欲しくなりません?手に入ったらその満足感たるやいなや、ですわ。 『出来ないから諦める』ではなく『何か別の方法を模索する』のはとても良い考えだと…
カリンちゃん(;´∀`)!? 人には得意不得意があるからしょうがないネー(*´・ω・)(・ω・`*)ネー 出来ないことに憧れを抱くタイプ。ウェーブちゃんが考察しているが育ってきた環境が抑圧されていた…
「大砲でスタイリッシュロールショット」が、宇宙空間でバズーカを振り回す機動戦士の姿で再生されてしまう…… カリンちゃん、そのうちキュピーンて効果音鳴らしながら「そこっ!」とか言い出さないだろうか
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