第40回桜庭メルの心霊スポット探訪:玉蛙展望台 後編
「ひゃあっ!?」
燎火から放たれた炎の波が目の前まで迫り、メルは思わず悲鳴を上げながら飛び退いた。
「桜庭さん。私の新たな力、見守っていてください」
人型に収束した超高密度の塊から、エコーが掛かったような燎火の声が聞こえてくる。
「……参ります!」
力強い声と共に、炎そのものと化した燎火がバニーガールへと突撃した。
「えっ、速っ!?」
肉体が物質的な制約から解放されたことで、燎火の速度は人知を超越したものとなっていた。
燎火はただ一直線にバニーガールの下へと突撃しただけなのだが、その動きはメルから見ると瞬間移動にしか思えなかった。
メルの動体視力を以てしても追いきれないほどのスピードを、炎と化した燎火は実現しているのだ。
「カロロロロッ!」
しかし対するバニーガールも流石は祟り神、燎火の瞬間移動じみた速度にも対応してきた。
バニーガールは左手に持つ炎の剣を振るい、燎火の突撃を迎撃する。
「はあああっ!!」
燎火の炎の拳と、バニーガールの炎の剣がぶつかり合う。
瞬間、月面に新たなクレーターを穿つほどの大爆発が生じた。
「ひゃああああっ!?」
凄まじい爆風を受け、完全に観戦の体勢だったメルは危うく吹き飛ばされかける。
「燎火さん!?」
爆心地に視線を向けると、燎火の右腕は消し飛ばされていた。
バニーガールも体の数か所に火傷のような傷を負っているが、それでも損傷は明らかに燎火の方が大きい。
「大丈夫ですか燎火さん!?」
「ご心配なく」
観戦者であるメルが動揺しているのに対し、腕を消し飛ばされた本人である燎火は落ち着きを失っていなかった。
すると燎火の右肩に炎が渦を巻きながら収束し、新たな右腕を形成した。
「今の私は炎そのもの。炎は決まった形を持ちませんから、炎となった私は欠損の概念を持ちません」
「あっ、そ、そうなんですね……」
詳しいことはよく分からなかったメルだが、ひとまず燎火が右腕を失っていなかったことに安堵する。
一方バニーガールの方は、いつの間にやら体が白い綿のようなものに包まれていた。
程なくして綿が消失すると、燎火がバニーガールに負わせた傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
「うわぁ……再生能力持ってるんですね……」
つい最近強力な再生能力を持つ怪異に手を焼かされたばかりのメルは、あっさりと傷を治したバニーガールに顔を顰めた。
「カロロロッ!」
バニーガールが燎火に向かって、炎の剣による突きを繰り出す。
「その攻撃は無意味です」
しかし剣の先端が燎火の喉元に触れた瞬間、炎の剣はまるで糸が解けるようにボロボロに崩れ去ってしまった。
「先程の接触の瞬間、あなたの剣に私の炎を混ぜさせていただきました。あなたの剣の支配権は既に私の下にあります」
「わぁなんか凄いことしてる……」
燎火の言葉を証明するように、崩壊した炎の剣が燎火の右腕へと取り込まれていく。
「あなたが私に振るった剣の力、そっくりそのままあなたにお返しいたします!」
炎の剣を吸収した燎火の右腕が、元の2倍以上の大きさにまで膨れ上がる。
「はああああっ!!」
燎火は巨大化した右の拳を、渾身の力でバニーガールの可愛らしい顔面に叩き込んだ。
「カロロロッ!?」
拳が命中した瞬間、局地的な地震が発生するほどの激しい爆発が生じた。
衝撃によってバニーガールの体が木の葉のように宙を舞う。
「わぁ……すごい威力……!」
両目から涙を流しながら感想を口にするメル。
ちなみに涙を流しているのは別に燎火のパンチの威力に感動している訳ではなく、爆発に伴う閃光で目が痛みを訴えているのだ。
とはいえ祟り神の力をも逆に利用した燎火の一撃が、感動に値する威力を誇っていたのも事実だ。
「カロ……ロロッ……」
彼方に吹き飛ばされたバニーガールがふらふらと立ち上がる。
バニーガールの体には何ヶ所も熱傷が見られたが、どこからともなく現れた綿がそれらの傷を包み込んで治してしまった。
「カロロッ!」
バニーガールが左腕を伸ばすと、その手の中に再び炎の剣が出現した。
どうやら炎の剣は、バニーガールの能力でいくらでも作り出せるらしい。
「となると武器を奪うのはあまり得策ではありませんね……」
燎火は落胆するでもなく冷静にそう呟く。
バニーガールが剣を構え、ウサギらしい俊敏な動きで燎火目掛けて駆け出した。
「そう易々とは近付けさせません!」
それに対し燎火は、バニーガールへと炎の波を放った。
炎の波はバニーガールに迫りながら徐々にその形を変え、8つの巨大なワニの首を形作った。
炎のワニが次々とバニーガールに噛み付き、バニーガールの姿が炎に巻かれて見えなくなる。
「古来よりウサギはワニに狩られるものと相場が決まっています」
「そうなんですか……?」
メルが首を傾げたところで、炎のワニ達が次々と大爆発を起こした。
「おお~……!」
離れていてもビリビリと肌で振動を感じる程の爆発の威力に、メルは小さく拍手をする。
だが爆炎が晴れると、そこには依然として2本の足で月面を踏みしめるバニーガールの姿があった。
「これでもまだ倒れませんか……」
燎火が悔しそうに口元を歪める。
今のところ戦闘を有利に進めている燎火だが、それでも祟り神を戦闘不能に追い込むための決定力に欠けていた。
「カロロロ……!」
バニーガールは綿で傷を治しつつ、赤い瞳で燎火を見据える。
ここで初めて、バニーガールが左手の炎の剣ではなく、右手の雷の槍を振り被った。
「っ!?」
その瞬間、メルは背筋が凍り付くような強い悪寒を感じた。
「燎火さん避けて!」
「は、はい!」
メルが感じたのと同じ悪寒を燎火も感じたらしく、急いでその場を離脱しようと試みる。
しかし燎火が動き出すよりも、バニーガールが雷の槍を投擲する方が先だった。
バニーガールの手を離れた雷の槍は、空間そのものを打ち砕くような破滅的な音と共に月面を飛翔する。
「燎火、さ、っ……」
雷の槍が放つ威圧感によって喉が詰まり、メルの燎火を呼ぶ声は掠れて掻き消された。
「くっ……」
燎火は防御を試みるも間に合わず。
雷の槍は眩い光の軌道を空間に刻みながら、燎火を穿ち貫いた。
「燎火さん!?」
槍の軌道から爆発的に雷が拡散し、黄金色の光が異空間中を埋め尽くす。
そしてその眩い光が収まった時、燎火の姿はどこにもなかった。
「燎火さん……」
メルは肩を落としながら燎火の名を呼ぶ。
「残念です……でも燎火さんの頑張りはちゃんと見届けましたよ」
燎火への労いの言葉を済ませると、メルはおもむろにツインテールを解く。
「後はメルに任せてください」
そしてバニーガールを真っ直ぐに見つめながら、祈るように両手を組み合わせた。
「――エルドリッチ・エマージェンス」
メルの眼球が黒く染まり、瞳が赤い輝きを放つ。頭部には大小7つの角が生え、全身から赤色の暴風が吹き荒れた。
「カロロ……」
バニーガールの赤い瞳が真っ直ぐにメルを捉える。
エルドリッチ・エマージェンスによって祟り神に近付いたメルを、バニーガールは明確な脅威として認識したようだ。
「メルの炎は、燎火さんとはまた一味違いますよ……!」
メルの足元から祟火が螺旋を描きながら立ち昇る。
それを見たバニーガールは、右手の中に再出現した雷の槍をメルに向かって掲げた。
「メルティ……!」
祟火がメルの右足へと収束し、その密度によって周囲の空間が歪んでいく。
「クレセント!!」
「カロロッ!」
メルが右足を振り抜くと同時に、バニーガールも雷の槍を投擲する。
回し蹴りの軌道から放たれた祟火が龍を模り、雷の槍と正面から激突した。
「ひゃっ!?」
瞬間、凄まじい爆発が異空間そのものを揺らす。
超新星爆発のような眩い閃光が異空間内を満たしたが、エルドリッチ・エマージェンスによって祟り神へと近付いたメルの目は眩むことが無い。
「『鬨』!」
メルは身体強化祓道を発動し、閃光と爆炎の中バニーガール目掛けて飛び掛かる。
人知を超越した速度でバニーガールへと突撃しながら、メルは右腕に螺旋状の祟火を纏わせた。
「カロロロッ!」
バニーガールはメルを迎撃すべく炎の剣を振るう。
「メルティ・スパイラル!」
メルが貫手を放ちながら、新たな技の名前を叫ぶ。
するとメルの右腕の祟火が大きく膨れ上がり、メルはさながら右腕に巨大なドリルを備えているかのような姿となった。
「てやぁっ!」
「カロロロロロッ!」
メルの貫手とバニーガールの炎の剣が正面衝突する。
拮抗したのはほんの一瞬。祟火のドリルは炎の剣を跡形もなく破壊し、その勢いそのままにバニーガールの左肩を貫いた。
「カロッ!?」
バニーガールが悲鳴を上げながら後方へと飛び退く。ウサギだけあってその跳躍力は隔絶しており、一飛びでメルから数百mもの距離を取った。
「逃がしませんっ!」
メルはすかさず追撃を加えようと、両手を組み合わせて前に突き出す。
「『神解雷螺』!」
メルの両手から反霊力のビームが放たれる。
しかしバニーガールは壊れた左肩を綿で治すと、『神解雷螺』をあっさりと躱してしまった。
「ああもう!せっかく壊したんだから治さないでください!」
苛立って理不尽極まりないことを叫ぶメル。だがメルがそう叫ぶのも無理はなかった。
前回の配信で戦ったタコも相当な再生能力を有していた。だがただ再生能力が高いだけの怪異と、祟り神が高い再生能力を有しているのとでは、天と地ほどの差がある。
「傷を治す暇がないくらい一気に倒さなきゃですね……」
再生能力が高いのであれば、傷を再生する暇を与えなければいい。それを実現すべくメルは頭を巡らせる。
「カロロ……」
悩んでいるメルに向けて、バニーガールが雷の槍を振り被る。
「メルティ、雷螺……ライラ……ライラック……?うん、ライラックでいいかな」
方策を立てたメルは、再び組み合わせた両手をバニーガールに向けて突き出す。
するとメルの右腕では祟火が螺旋を描き、左腕からは反霊力がバチバチと迸った。
紫色の祟火と赤色の反霊力がメルの両手で混ざり合う。祟火は霊力ではないために、反霊力と接触しても消滅しないのだ。
「カロロロロッ!!」
バニーガールが雷の槍を投擲し、槍は黄金色の軌道を描きながらメルへと迫る。
槍が放つ威圧感にビリビリと肌が粟立つのを感じながらも、メルは冷静さを失わない。
「――メルティ・ライラック」
そしてメルの両手から、破滅的な色合いのビームが放たれた。
赤紫色のビームは直線上に存在するあらゆるものを破壊しつくしながら突き進み、その軌道では破壊された空間が著しく歪曲している。
ビームは正面から衝突した雷の槍を驚くほど呆気なく消し去ると、その勢いそのままどころか更に勢いを増しながら、バニーガールの体をも呑み込んだ。
「カロッ……」
バニーガールの悲鳴すらも掻き消し、赤紫色のビームは地平線の彼方まで地面を抉り取る。
「ふぅ……」
メルが組んでいた両手を解く頃には、バニーガールの姿は塵一つ残っていなかった。
「ぶっつけ本番でも案外上手くいくものですね……」
メルは自分が即興で作り出した新たな技の威力に、自分で驚いていた。
正直なところ1回目では上手くいかず、何度か試行錯誤することになると思っていたのだ。
「でもまあ、とりあえず……燎火さ~ん!」
メルが虚空に向かって、バニーガールとの戦いに敗れたはずの燎火の名を呼ぶ。
「……気付いていたのですか?」
すると何も無かったはずのメルの背後から、驚いた表情の燎火が姿を現した。
「あっ、そこにいたんですね」
「桜庭さん……どうして私が生きていると?」
「ん~、ちゃんとした理由は無いんですけど、何となくそうじゃないかなって」
メルが悪戯を成功させた子供のように笑う。
「やっぱりあのウサギさんにやられた燎火さんは偽物だったんですね?」
「……敵いませんね、桜庭さんには」
燎火もまた観念したような笑顔を浮かべた。
「私は新たな『礫火天狗』の派生形である『天火浄瑠璃』を、自らの肉体を炎へと変じる祓道であるかのように偽りました。ですが実際には『天火浄瑠璃』は、『礫火天狗』の炎による分身を生み出し遠隔操作する祓道なのです」
「それってラジコンみたいなことですか?」
「はい。その認識で間違いないかと」
つまり燎火は自分自身が炎と化して戦っているように見せかけ、実際は炎の分身を操って戦闘を行っていたという訳だ。
「『天火浄瑠璃』の炎の威力は通常の『礫火天狗』を大きく上回りますから、祟り神とも戦えると思っていたのですが……見通しが甘かったですね」
「でも結構いい線行ってましたよ?押せてる時もありましたし。もっと練習すれば祟り神も殺せるようになるんじゃないですか?」
「そうですね。練度不足は否めませんが、それでも光明は見えました」
「ところでなんですけど……」
一通りの振り返りを終えたところで、メルは気になっていたことを尋ねる。
「分身が戦ってる間、燎火さんはどこにいたんですか?」
「私は隠れていました。私が倒れてしまえば分身も戦闘不能になりますから」
「隠れてたって……どこにですか?」
メルは周囲を見渡し首を傾げる。
月面を模したこの異空間は、地平線まで遮蔽物がほとんど存在しない。身を隠せるような場所は無いようにメルには思えた。
「どこに、というより、私は祓道で身を隠していたのです。『天火浄瑠璃』とは別にもう1つ新たに会得した祓道、『伏魔鬼没』によって」
パチン、と燎火が指を鳴らすと、一瞬にしてその場から燎火の姿が消えた。
「あれっ、燎火さん!?えっ、どこ行ったんですか!?」
「と、このように」
狼狽えるメルの目の前に、再び燎火が出現する。
「『伏魔鬼没』は自らを他者の認識から除外する祓道、『不可識』の上位祓道です。『伏魔鬼没』を発動している間、私と他者は完全な相互不干渉となります」
「えっ、それって攻撃できないけど攻撃されないってことですよね?すっごく強くないですか!?」
「はい。正直『天火浄瑠璃』よりもこの『伏魔鬼没』の方が、修行の成果としては大きいのではないかと感じています」
そう言って燎火は苦笑した。
「あのあのっ!」
その時、メルの足元から小さな女の子のような声が聞こえてきた。
視線を下ろすと、そこには小さな白ウサギがメルの足に擦り寄るようにして座っている。
「あのっ!ホノを祟り神から戻してくれて、ありがとうございましたっ!」
「あなたもしかして……さっきの祟り神ですか?」
「はいっ!穂乃雷と申しますっ!」
命を落とした祟り神は、長い時間をかけて元の神格として生まれ変わる。
そして転生する前に、少しだけ言葉を交わせることが稀にある。この穂乃雷を名乗るウサギもその状態なのだろう。
「私はこの異空間に閉じ込められてしまって、だから祟り神から戻れなくて困ってたんです!あなたのおかげで、私はまた元の神様に戻れますっ!ありがとうございますっ!」
「いえいえ、どういたしまして」
この穂乃雷、これまでメルが対話した神格や祟り神の中で、最も振る舞いが幼かった。ウサギの外見と相まって非常に可愛らしい。
「あっ、そうだ穂乃雷さん」
「ホノちゃんって呼んでくださいっ!」
「ホノちゃん、良かったら転生術式使いましょうか?」
「えっ!?いいんですか!?」
転生術式とは、祟り神が元の神格に生まれ変わるまでの時間を早めるための祓道である。
通常では数百年かかる祟り神の転生が、転生術式を使うことでおよそ数日にまで短縮されるのだ。
メルはこの転生術式を、修行パートの時に物のついでで魅影から伝授されていた。
「折角覚えたものは使いたいですから、ホノちゃんさえよければ……」
「お願いしたいですっ!ありがとうございます、お姉さん!」
「桜庭メルです。メルって呼んでください」
「メルお姉さん、ありがとうございますっ!」
穂乃雷はメルに向かって頭を下げると、今度は燎火の方に向き直った。
「それから白い髪のお姉さん!」
「は、はい?あっ、幾世守燎火と申します」
「燎火お姉さん!燎火お姉さんの炎、とっても素敵でした!」
「あ、ありがとうございます……?」
唐突に穂乃雷から『天火浄瑠璃』を称賛され、燎火は困惑しながら笑顔を作った。
「とっても素敵だったので……燎火お姉さん、手を出してくださいっ!」
「ええと……こうですか?」
燎火はその場に屈み込み、穂乃雷に向かって左手を差し出す。
すると穂乃雷は燎火の左手を優しく甘噛みした。
「燎火お姉さんにホノの炎もあげます!」
「えっ……?ええと、いいのですか……?」
「はいっ!ホノには雷があるのでっ!」
元気に頷いた穂乃雷の小さな体が、空気に溶け込むように薄れ始めた。
いよいよ転生が始まろうとしているのだ。
「じゃあ転生術式使いますね、ホノちゃん」
「ありがとうございますっ、メルお姉さん!」
「生まれ変わったらまた会いましょうね、ホノちゃん」
「はいっ!」
最後に簡単な挨拶を交わし、転生術式を施された穂乃雷は消えていった。
「桜庭さん……」
燎火が自分の左手を眺めながら眉尻を下げる。
「どうしましょう……私は祓道師だというのに、祟り神から力をいただいてしまいました……」
燎火の左手の穂乃雷に甘噛みされた部分には、ウサギの顔を模ったような小さな印が刻まれていた。
穂乃雷が「自分の炎を燎火にあげる」と言っていたように、燎火が穂乃雷から何かしらの力を授かったことは間違いない。
「いいんじゃないですか?祓道師だから~とか祟り神だから~とか、そういうのって結局メル達人間が勝手に区切ってるだけなんですよ。祓道師の力も祟り神の力も、力であることに変わりはないんです。大事なのはどんな力なのかじゃなくて、どんなふうに力を使うかじゃないですか?」
「……そうですね。桜庭さんを見ていると特にそう思います」
祓道師、怪異使い、神格、祟り神。4つの異なる力を用いるメルの言葉は説得力が違った。
「それに燎火さんがホノちゃんから力を貰ったことよりも、メルの今日の配信の方がよっぽど問題ですよ。展望台紹介して燎火さん呼んでメルがダンスして、もうそこで途切れてますからね、今日の配信」
「それは確かに由々しいですね……」
本日の配信は開始早々異空間に侵入し配信が途切れてしまったため、ほとんど何もしていないに等しかった。
「心霊スポット探訪40回目っていうキリのいい回でこんなことになってますからね……視聴者さんになんて言って謝ったらいいか……あ~現実世界に戻りたくな~い……」
頭を抱えて蹲るメル。
「げ、元気を出してください桜庭さん。私に何か手伝えることがあればお手伝いしますから……」
「ホントですか……?一緒に謝罪動画撮ってくれますか……?」
メルが上目遣いで燎火を窺うと、燎火は躊躇う素振りを見せながらも頷いた。
「私でよければお手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます燎火さん!めっちゃ好き!」
こうして燎火から言質を取ったメルは、重い足取りで現実世界へと帰還を果たした。
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