第30回桜庭メルの心霊スポット探訪:伺見山 三
「さて……それじゃ配信始めますか」
「配信始めるのですか!?」
刀から小動物の姿に変化した待雪が、メルの行動に驚きを露にする。
「だってメル、道に迷っただけなのに襲われて拉致されて服まで脱がされたんですよ?せめて嵯峨登家を配信のネタにしないと割に合わないじゃないですか」
「割に合う合わないの話ではないと思うのですが……」
「ああもう配信開始時間過ぎちゃってる……視聴者さん達怒ってるかな~……はい、サクラさんカメラお願いします!」
(任せて)
メルは撮影用のスマホをサクラに渡し、前髪を整える。
(始めるわよ~、3、2、1……)
「皆さんこんにちは、心霊系ストリーマーの桜庭メルで~す」
配信が始まり、メルはカメラに向かって小さく両手を振る。
『待ってた』『メルちゃ~ん!!』『今日はもうやらないのかと思った』『珍しいねメルが遅刻なんて』
配信の予定時間を過ぎても待っていてくれた視聴者がいるようで、早速いくつかのコメントが書き込まれる。
「ごめんなさい、配信始まるの遅くなっちゃって……」
『何かあったの?』『機材トラブル?』
「機材トラブルではないんですけど、ちょっとしたトラブルがあって……」
『何?』『大丈夫だったの?』
「実はちょっと……誘拐されちゃいまして」
『は?』『草』『想像の斜め上のトラブル来た』『どういうことなの』『今誘拐されてるってこと?』『いや配信してるってことは流石に誘拐され終わってるでしょ』『誘拐され終わってるって何だよ』
「ちょっと今日は色々あったので、説明が長くなっちゃうんですけど……」
メルは今日起こった出来事を、可能な限り掻い摘んで視聴者に話した。
「……で、今嵯峨登家の人を尋問し終わったところです」
『マジかよサガノボリ家最低だな』『何が最低ってメルの服脱がせたところだよな』『違いないな』『下着とニーソだけ残すとかサガノボリ家分かってんな』『変態がよぉ』
やはりというべきか何なのか、視聴者達が最も食いついたのは、メルが服を脱がされて拘束された場面の話だった。
「……メルの視聴者さん達って、実は結構変態さんばっかりですよね」
『ソンナコトナイヨ』『今更過ぎるだろ』『メルが魔法少女に変身する度に投げ銭ラッシュ始めるような視聴者が変態じゃないとでも?』
「メル一応拉致されて縛られてたんですから、もっと心配してくれたりとかしないんですか?」
『だってメルなんて心配するだけ無駄じゃん』『自力で脱出したんでしょ?』『俺達はメルのことよく知ってるからこそメルの心配なんて無駄なことはしないの』
「うう……割と身に覚えがあるだけに文句も言いにくい……」
これまでの配信で散々滅茶苦茶をやってきたメルが、今更誘拐された程度で心配される道理はなかった。
「それにしたって皆さんはこう……メルのこと好きな訳ですから?『メルちゃんを誘拐するなんて許せない』みたいなコメントしてくれたって……」
『マジで許せない嵯峨登家!!全員○ねばいいのに!!』『嵯峨登家族滅すべし』
「あっなんか怒りすぎてる視聴者さんもいますね……」
『ちょっと引いてんじゃん』
その時メルの耳に、扉の向こうから何者かが走ってくる音が聞こえてきた。
「あっちょっと、誰か来ますね……」
メルは部屋の入口に注意を向ける。
数秒後、扉がバンと勢いよく開いた。
「おい!幾世守の女の尋問はどうなってる……」
「てやっ!」
「ぐああっ!?」
扉の向こうから現れた大柄な忍者に、メルは問答無用でハイキックを叩き込む。
顔面を蹴り飛ばされた忍者は仰向けに倒れ、そのまま動かなくなった。
『なんか今「出会い頭」って言葉の意味を本当に理解した気がする』『登場して1秒で蹴り倒された忍者可哀想すぎる』『これもう事故映像だろ』
「この人多分、メルの様子を見に来た人ですよね……ってことは、この人が戻らないと、嵯峨登家の人達は不思議に思いますよね……」
『まあ多分そうだね』『人集まってくるんじゃない?』『メルちゃんどうするの?』
「ん~、そうですね~……それじゃあ人が集まってくる前に、メルの方から会いに行ってあげましょうか」
メルが右手を伸ばすと、そこに待雪が飛び込んでくる。
待雪の体が刀の姿に変化し、その柄がメルの右手の中に収まった。
「行きますよ皆さん。今からメルちゃん大暴れの脱出劇です!」
『まず何その刀!?』『唐突に知らない武器を出すな』『どっから出てきたその刀!?』『どう足掻いても銃刀法違反』
「あっ、そうだ。もし煌羅さんとかこの配信見てくれてたら、助けに来てくれてもいいですよ☆」
『要らないだろ助けなんか』『1人で大暴れする気でいる奴が何を』『でも実際本当にキララさん配信見てそう』『そんでもってほんとに助けに行きそう』『すぐ行くね』『あれキララさんいるくね?』
メルは待雪片手に部屋を飛び出し、広めの廊下を駆け抜ける。
程なくして遭遇した最初の忍者は、メルを見るなり驚いた様子で目を見開いた。
「なっ、貴様!?どうやって脱出した!?」
忍者は狼狽えつつ、取り出した手裏剣をメルに向かって投擲しようとする。
それに対してメルは地面をトンと蹴り、助走の勢いを十全に生かして忍者へと飛び掛かる。
「てやっ!」
「ぐああっ!?」
メルの見事な飛び蹴りが、忍者の頭部に炸裂する。
『いや刀使わないんかい』
吹き飛ばされた忍者は背中から壁に激突し、そのまま滑り落ちるようにその場にへたり込む。
そしてそれ以降ピクリとも動かなくなった。
「何事だ!?」
「敵襲か!?」
忍者が壁にぶつかった音が屋敷中に響き、それを聞きつけた忍者達がわらわらと集まってくる。
「あっ!貴様は例の!」
「やはり幾世守家の間者だったか!」
「何がやはりなんですか……」
問答無用でメルを幾世守家の祓道師と断ずる忍者達に呆れつつ、メルは忍者の集団に向かって走り出す。
「撃て!」
「遠距離攻撃で攻めろ!」
「敵は刀を所持している、近寄らせるな!」
忍者達が一斉にメルに向かって手裏剣や火の玉を投擲する。
「下手な鉄砲はぁ……」
メルは床を蹴って跳び上がり、壁面を走りながら忍者達の攻撃を全て回避する。
「数撃っても当たらないんですよ!」
更にメルは壁面を斜めに駆け上がると、体の上下を反転させて天井すらも数歩走って見せた。
「何だと!?」
「天井を走っているぞ!?」
「あいつ本当に人間か!?」
『なんだろう忍者の人達にすごく共感しちゃう』『やっぱり忍者から見てもメルって人間には見えないんだな』『ねぇなんでメルは当たり前みたいに天井走ってんの?』『重力ないなった???』
天井を走って忍者達の直上までやってきたメルは、そのまま忍者の集団のど真ん中へと着地する。
「てやぁぁっ!!」
メルはその場で逆立ちすると、カポエイラめいた足技によって10人近い忍者達を一瞬で全員打ち倒して見せた。
『いやだから刀は?』
忍者の集団を一蹴したメルは、再び廊下を全速力で走り出す。
「あっ、あそこに窓ありますね」
角を曲がると、廊下の突き当りに温かい光が差し込む大きな窓があった。
「よ~し!」
『何が???』『窓見て「よ~し!」ってどういうこと?』『窓に何する気だよ』『なんか嫌な予感してきた……』
メルは窓に向かって一直線に廊下を走り抜け、速度を一切落とさないまま窓の数m手前でタイミングよく踏み切る。
「お邪魔しました~!!」
そして窓に向かって飛び蹴りを放ったメルは、そのまま窓を突き破って屋敷の外へと脱出した。
『草』『マジでやりやがったコイツ!?』『お暇がダイナミックすぎる……』『いくら誘拐されたからってやっていいことと悪いことがあるだろ』
メルがいた屋敷はどうやら集落の中の高台にあるようで、外に出ると集落を一望することができた。
集落内には20軒ほどの家屋が軒を連ねており、その光景は待雪から事前に聞いていた情報と一致している。
「皆さん、どっちがいいと思います?」
『何が?』『何の話?』
「このままダッシュでここから逃げるのと、この集落にいる祓道師全員叩きのめしてから帰るの」
『何だよその二択』『後者の選択肢怖すぎるだろ』『どうしてそんなことするの……』
「私は全員叩きのめした方がいいと思うな!」
その時頭上から、メルにとっては馴染み深い声が聞こえてきた。
メルが声の聞こえる方向を見上げたのと同時に、屋敷の屋根の上から何者かが飛び出してくる。
敵かと思い一瞬身構えたメルだったが、その正体に気が付くとすぐに表情を綻ばせた。
「助けに来たよ、メルちゃん!」
右手に白い手斧を携え、メルの目の前に華麗に着地したのは、先程メルがカメラ越しに呼びかけた幾世守煌羅その人だった。
「煌羅さん……ホントに来てくれたんですね!」
「もちろん!メルちゃんに呼ばれたら、太陽系の外にだって駆けつけるよ!」
『キララさんマジで来てて草』『ちょっと待って来るの早くない???』『え、メルが呼んでから30分も経ってないでしょ……?』『たまたま近くにいたとかだよな……?』『むしろそうじゃないと怖いって』
煌羅の登場によってコメント欄も俄かに盛り上がり始める。
「ちょっと煌羅さん、先行かないでくださいって……」
「あれっ、燎火さん!?」
更に屋敷の陰から、両手に『白魚』を装着した燎火までもが姿を現した。
「燎火さんも来てくれたんですか?」
「ああ、こんにちは桜庭さん。そうですね、来たというか連れて来られたというか……」
「メルちゃんに呼ばれた時に燎火ちゃんも一緒にいたから、ついでに引っ張ってきたの!」
「引っ張って来られました……」
苦笑していた燎火が、ここでふと真剣な表情を見せた。
「それにしても……まさか嵯峨登家が現代まで存続しているとは思いませんでした」
「えっ、燎火さん嵯峨登家のこと知ってたんですか?」
「話に聞いたことがあるという程度です。身体能力強化の祓道と暗器での戦闘を得意とする、嵯峨登家という祓道師の家系があると。ですが私は幾世守家以外の祓道師が現代でも活動しているという話は聞いたことが無かったので、てっきり嵯峨登家も断絶しているものかと……」
「ね~、まさかこんなおっきい拠点を持ってるなんて思わなかったよね~」
「えっ、嵯峨登家って怪異と戦ってないんですか?」
この集落は嵯峨登家の祓道師のための修練場だと、メルが尋問した杳子は話していた。
修練をしているのだから当然修練の成果を生かすべく怪異の討伐も行っているとメルは思っていたが、燎火と煌羅が言うには嵯峨登家は祓道師としての活動はしていないらしい。
まあ嵯峨登家が祓道師として活動していようがいまいが、メルにはあまり関係のない話だ。
「ところで煌羅さん、燎火さん。メル今悩んでることあるんですよ」
「悩み、ですか?」
「なになに?」
「このまま何事もなくこの集落から逃げるか、1回ここの祓道師全員叩きのめしてから帰るかなんですけど」
『まだそれ言ってんのかよ』『怖いって2個目の選択肢が』
「え、ええと……」
『ほらリョウカさん困ってんじゃん』『あんまリョウカさん困らせんな』
メルが提示した二択に困惑する燎火の横で、煌羅がバッと勢い良く手を上げた。
「私は全員叩きのめすのがいいと思う!」
「煌羅さん!?」
「だって考えてみてよ燎火ちゃん!嵯峨登家の人達、メルちゃん縛って服脱がせたんだよ!?そんなの許せなくない!?」
「た、確かにそれ自体は許しがたい行いではありますが……だからと言ってわざわざ集落の全員に報復して回る必要は……」
『よく言ったキララさん』『やっぱりキララさんは信頼できる』『キララさんは俺達の代弁者みたいなとこあるからな』
煌羅のぎらついた両目からは、煌羅が嵯峨登家に対して抱いている怒りの強さが窺えた。
「燎火さんはこのまま逃げた方がいいと思いますか?」
「そうですね……余計な波風を立てる必要はないかと」
「ん~……意見が割れちゃいましたね~」
燎火が直帰派、煌羅が叩きのめす派。どちらの意見を参考にすべきかと、メルは顎に手を当てる。
「私は報復すべきだと思います」
その時、またしてもメルの頭上から声が聞こえてきた。
「えっ、誰ですか?」
メルが顔を上げるのと同時に、空から人影が降りてくる。
先程の煌羅のように屋根の上から飛び降りてくるのではなく、本当に何の足場もない上空から、その人影は現れた。
「お久し振りです、メル様」
それは赤と黒のゴスロリ服に身を包み、長い黒髪をツインテールに束ねた少女だった。
「えっ……虚魄さん!?」
「はい、常夜見家大蔵衆、常夜見虚魄です。またお会いできて光栄です」
魅影の妹である虚魄は、スカートの裾を摘んで優雅なカーテシーを披露した。
「常夜見虚魄……!」
「何しに来たの!?」
怪異使いの出現に、燎火と煌羅が警戒心を顕わにする。
しかし2人からの敵対的な視線を受けても、虚魄はメルから視線を逸らさなかった。
「メル様。私はこの度、僭越ながらメル様をお助けするために馳せ参じました」
「えっ、虚魄さんもメルを助けに来てくれたんですか?」
「はい。メル様のメッセージは私に対してのものではありませんでしたが、それでも微力ながら私の力がお役に立てればと思い……」
「わぁ、ありがとうございます!嬉しいです!」
メルは虚魄の手を取り、感謝の気持ちを表現する。
「はぁぁぁぁぁメル様の手柔らかいしメル様めっちゃいい匂いするメル様の手と同じ感触のクッションが欲しいしメル様の匂いがする香水も欲しいああでもそんな香水あったら私1日中キマっちゃって危ないかも……」
「こ、虚魄さん?なんて言ってます?」
メルに手を握られた途端に早口で呟き始める虚魄。圧縮言語かと錯覚するほどの早口は、メルの聴覚を以てしても何と言っているのか聞き取れなかった。
「メルちゃんから離れて、常夜見虚魄」
不満げな表情を浮かべた煌羅が、メルと虚魄との間に無理矢理割って入る。
「煌羅さん?どうかしました?」
「邪魔をしないでください、幾世守煌羅。折角メル様が私の手を握ってくださっていたというのに」
「いい?常夜見虚魄。メルちゃんは私に、わ・た・し・に!助けに来てって言ってくれたの。だからあなたはお呼びじゃないの。分かる?」
煌羅は右腕を伸ばしてメルを庇いながら、虚魄に対して敵愾心を剥き出しにする。
それに対して虚魄の方も、威嚇する猫のような顔つきになった。
「ですがメル様は『嬉しい』と言ってくださいました。私が駆けつけたことに対して、メル様は『嬉しい』と言ってくださったのです。幾世守煌羅、あなたは他ならぬメル様のお言葉を無視するつもりですか?」
「くっ……大体何なのその髪型!?あなた前は普通のロングヘア―だったでしょ!?」
「なっ……か、髪型のことは関係無いでしょう」
「どうせメルちゃんの真似でもしてるんでしょ!?」
「なっ、な、な、何をこんっ、根拠に」
「それだけ慌ててたらもう認めてるようなものだよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください2人とも!」
メルは2人の言い争いを制止するため、とりあえず近くにいる煌羅を後ろから抱き締める。
「ひゃっ!?め、メルちゃんっ!?」
「幾世守家の人達と常夜見家の人達が仲良くないのはメルも知ってます」
「め、メルちゃん、私、そんな風にメルちゃんにぎゅってされたら、あっ、あっ……」
「でも煌羅さんも虚魄さんもメルを助けるためにここに来てくれたんです」
「あっあっあっあっあっ……」
「今日だけはメルのお願いと思って仲良くしてくれませんか?」
「桜庭さんとりあえず1回煌羅さんを離してください!煌羅さんが何だか危険な痙攣の仕方をしています!」
「えっ?あっ!」
燎火に言われて初めて、メルは腕の中で煌羅が激しく痙攣していることに気が付いた。
「ご、ごめんなさい!メルそんな力入れたつもりはなかったんです……!」
『いや強く抱き締めたからそうなったとかじゃないと思うよ?』『キララさん……キャパオーバーだったんだな』『好きな人にいきなりバックハグされたら痙攣するのも無理なし』『言うほど無理ないか?』
メルの腕から解放された煌羅を、燎火が慎重に地面に寝かせる。
「大丈夫ですか煌羅さん!聞こえていますか!?」
「あっあっあっ……」
「しっかりしてください!煌羅さん!煌羅さん!?」
燎火が必死で煌羅に呼びかけるが、煌羅は相変わらずビクンビクンと陸に打ち上げられた海老のように痙攣している。
「そんな……メルはそんなつもりじゃ……」
メルは自分がしてしまったことの重大さを受け止めきれず、ただただ立ち尽くすことしかできないでいる。
その時虚魄が煌羅の傍らに膝をつき、煌羅の右手を握った。
「私にはあなたの気持ちが分かります、幾世守煌羅」
「常夜見虚魄?あなた一体何を……」
訝しむ燎火を、虚魄は右手で制止する。
「幾世守燎火、背中に感じたメル様の体の感触は柔らかかったですよね?密着したメル様からはいい匂いがしましたよね?」
「あっ……あ……?」
虚魄の呼び掛けによって、煌羅が僅かに意識を取り戻す。
「メル様にいきなり抱き締められれば、意識が飛んでしまうのも無理はありません。私も同じ立場であったなら、今のあなたのようになっていたことでしょう」
「常夜見……虚魄……?」
「ですが幾世守煌羅、このままあなたが死ねば、心優しいメル様は大層悲しまれることでしょう。メル様を敬愛する者が、メル様を悲しませることなど、あってよいのでしょうか?」
「いい……わけ……ない……!」
「その通り、あなた如きがメル様を悲しませることなどあってはなりません。メル様を敬愛する者としての誇りを失いたくないのであれば、戻ってきなさい」
虚魄のその言葉と同時に、煌羅の体の痙攣が止まった。
「煌羅さん……?」
燎火が煌羅の容態を、固唾を飲んで見守る。
「……まさか、怪異使いに助けられるなんてね……」
煌羅は自嘲気味に笑いながら、ゆっくりと体を起こした。
「煌羅さん……!よかった……!」
燎火の表情が明るさを取り戻す。
「……一応、お礼は言っとく。ありがと、助けてくれて」
「いえ。私はメル様を悲しませたくなかっただけですから」
煌羅と虚魄のやり取りからは、先程までの険悪さは無くなっていた。
「煌羅さ~ん!!」
「わっ!?」
メルが唐突に煌羅の胸元に飛び込み、煌羅の体をギュッと抱き締める。
「ごめんなさい、メルまさかこんなことになるなんて思わなくて……」
「あっ、メルちゃん、今私ちょっとクセついちゃってるから、あっ、あっ」
「でも煌羅さんが無事でよかった……」
「あっあっあっ」
「桜庭さん離れてください!煌羅さんがまた危ないです!」
「幾世守燎火の言う通りですメル様。2度目はいよいよ幾世守煌羅の命に係わります……!」
燎火と虚魄が慌ててメルを煌羅から引き剥がした。
『なあこれずっと何見せられてんの?』『さあ……』『分からん……』『多分だけど何らかのコントの類』『忘れかけてたけど今メル達がいるのって一応敵地じゃなかった?』『敵地で何コントやってんだコイツら』
視聴者達はとっくの昔に置いてけぼりになっていた。
4人も集まったらもう収拾がつかない
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