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平均的僕らの推理  作者: 乱 乱太郎
3/10

2話 行方不明

「それで」と朝凪の言葉をまるで聞いていなかったかのように、烏は話を続けた。


木戎(きかい)たちは混入物のチェックが終わると、一輝(かずき)に報告をしようと――」


「ん?ちょっと待て。パイロットの木戒がチェックしに行ったら、誰が飛行機を操縦するんだ?」


 あぁ。確かに。でも副のパイロットがいるんじゃないのか?いや、それはありえない。何故なら、副パイロットの存在が、容疑者リストに上がっていなかった。


「あ。言うのを忘れてたが、そのプライベートジェットは、最新のAIを積んでいて、操縦ぐらいなら出来るらしくて。」


「「なんじゃそりゃ!!」」


 そうして今に至る。


「わけが分からんぞ」

頭を掻きむしりながら言ったのは俺。


「ホントになんだよ、それ」

天井を見ながら言ったのは朝凪。


「アリバイは?誰にあって、誰にない?」

気持ちを切り替えて、俺はそう聞いた。

「まず、荷物チェックをしに行った――木戎、真理子(まりこ)瀬和洲(せわす)にはアリバイがある」


「ふむ」


「残った――雪子(ゆきこ)幸子(さちこ)平和(ひらかず)一三(かずみ)(あきら)には、幸子を除いて、お互いを保証できるアリバイがある」


「お互いに席が近かったから、離席なんてしたら分かったらしいし、離席した奴は一人もいなかった、と証言を全員からもらっている」


 なるほど。そしたら必然的に、幸子さんが怪しくなってくるわけだ。


「幸子さんは、一輝が殺されてしまうまでの間、何をしていたんだ?」

俺が聞く。


「本人は、屋敷へ報告の電話をしていた、と言っている」


「あれ、それっておかしくないか?」


「なにがだ」


「いやだって、飛行機の中では、携帯を機内モードにするはずだろ?なら通信とか、そういうことは出来ないはずだろ」


「あー、これも、びっくりポイントだな。電話は、独自の回線の機器らしい。だから、海の上でも通信できる。そう言っていた」


「なるほど」

驚いた様子もなく朝凪が言った。


「んで、荷物検査は、大体9:00頃から行われて、9:30頃に終了した。これが前提。それで、幸子さんの電話は、9:00頃から開始して、9:25頃に終了したらしい。」


 5分ぐらいしか確立出来るアリバイがないじゃないか。

もう幸子さん犯人でいいんじゃないかな。

 アリバイがなくて、殺す時間は十分とは言えなくても、あるにはある。条件揃っちゃったよ。どうすんだよ。


「もう、幸子さんが犯人でいいんじゃないかな」


「ぃや、それがダメかもしれないから、事件を解決するの」


「……分かったよ。それで、他の人の情報は?犯人かもしれない、と思えるような内面的な要素っていうか、怪しいところ」


「これだけで犯人扱いはまだ出来ないけど、ボディーガードの誉 叡(ほまれ あきら)は、元死刑囚の殺人鬼なんだよ」


「「!?」」


「俺もわけが分からないんだけどな、強ければ強いほどいいじゃないって雪子さんは言ってたよ」


「いや、強けりゃいいってもんじゃないでしょ…」

朝凪は本気で困惑した顔で言っていた。



「やっぱり、誉 叡(ほまれ あきら)が犯人でいいんじゃないの?」


 朝凪(あさなぎ)(からす)にそう言う。

 やはり、元といえども死刑囚になるほどの殺人を犯した、という事実は誰にも変えられない。それに、忠誠心があるとも言えない。怪しくなるのは必然…。


 だが、証拠がない。殺す時間も――あるにはあるが、人の目があり動いていないとないとなると――ない。


「無理だな。誉には殺す時間がない。そして、なにより人の目があった。庇っているとなると…あぁ、また別になるが、それもないと仮定していいんだな?烏」


俺が言うと、烏はすぐさま答えた。


「ないな。…そんなことが出来るほど、器用な人じゃない」


「じゃあ、今度はアリバイがない幸子(さちこ)さんに疑惑がいくな」


 朝凪が言ったことは、恐らく俺たち全員が思っている。なにせ犯人となりうる条件は揃っているのだ。

 でも―――


「証拠がないんだよ。凶器も、死体もないんだから」


「待て待て、それは俺たち聞いてなかったぞ」

 死体がないってどういうことだよ。隠したってことか?いやでも飛行機の広さ、ましてやプライベートジェットの広さなんて、知れてる。


「ホントにだよ。前提ってものは共有しとかないと。僕たちそんなの、話してもらわないと知らないんだから」


 朝凪の言う通りだ。全く、勘弁してくれ。


「あー、そうだな、そりゃ悪かった。でも、やっぱり会話だけじゃ、限界があるな」


「…電話!電話とかで、本人たちの話も交えての推理って出来ないのか?」


 俺が思いついた中で、最も良さそうなものを選んだ。推理って本来、本人たちの話を聞いて、矛盾点とかを探しながらするものだろうし。うん。


「…その発想はなかった。……多分、出来るんじゃないかな、電話」


 これで、やっと色々整った感じがするな。



―――2分後

 俺が電話で話を聞こう、と提案すると、烏は、今回使う電話は特殊な回線を使っているから、こっちも同じ回線の特殊な電話を使う必要がある。

 そう言い残し、部屋を出ていった。それから2分後。


「ぉうぇいしょ!」 ガタンッ!


と小走り気味に烏が部屋に入ってきた。

 大きな音を立てながら、机の上に置かれたのは押しボタン式の黒電話。


「ちょっと古くさいな」


 朝凪の率直な感想を、烏は受け流す。


「こういうのは、ロマンよロマン!って言ってた」


黒電話の作業をしながら答える。


「ロマン…」


「…えーっと?(あすたりすく)を押したら繋がると聞いてある」


「*って今日日(きょうび)聞かないな」


 そんな話をしつつ、同時に烏は作業を進める。


「… … … っあ、繋がった」


その作業が実を結んだらしい。


「もしもし、えぇ、はい、烏です。どうも、ご無沙汰してます。雪子(ゆきこ)さん」


(木戎(きかい)に変わらせてくれ)

俺は小声で烏に頼んだ。


「雪子さん。早速ですが、俺はこの事件を解決するつもりです。それも、明日には。ですが、明後日までに解決するには、あまりにも情報がない。だから今、電話をかけさせてもらってます」


(お前の探偵っぽいところ初めて見たかもしんない)


言うと、烏はキッと俺を睨みつけた。

読んでいただきありがとうございます。

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